聖天使セイント・ジュエル

 

第1話 堕天

 

ギイィェッ

月明かりさえない漆黒の闇の中、獣じみた咆哮が木々の間に響く。

ここは町外れにある自然公園。日付が変わろうとするこの時間では当然、訪れる人など無い。

だが木々が切れた小さな広場に、三つの影が蠢いていた。

 

三つの影一つは、

グルルゥッ

この闇夜を溶かした様な毛に深く覆われた巨犬低い唸り声を上げ、口から涎を垂らしながら、残り『二つ』の喉笛を食い千切ろうと機を窺っている。

『彼』には十匹以上の『仲間』が居たが今は討ち減らされ、『彼』一頭のみ、となっていた。

 

 その『彼』が狙う残りの影各々『剣』を持ち、獰猛な獣を屠ろうと、溢れ出んばかりの『殺気』を放っていた。

 しかし闇に浮かぶ『彼女達』の影はその『殺気』に相反して、いずれも小さい。その『影』から見れば、『少女』と言っても差し支えない年頃なのだろう。

 

スウッ

やがて、月を覆っていた雲が風に流され、広場に月明かりが差す。

 

それを待っていたかの様に、純白に紅がシンボリックに配されたコスチューム深紅のレオタードを纏い、フレア・スカートと胸元のリボンでそれを艶やかに飾った少女が、

「行くよ、サファイア!」

 傍らに控える蒼の少女セイント・サファイアにそう呼び掛けると、

「・・・了解、ルビー!」

 蒼の少女セイント・サファイアは、セイント・ルビーとともに、あろうことか、

 ダッ

 化け物へ向かって一直線に駆け出してゆく。

 

獲物が自ら、自身へ突進してきたのを認めた巨犬は、

グオォォォッ

 歓喜とも怒りともつかぬ咆哮を上げ、

 ダンッ

 少女達の柔肉を喰らうべく、猛進を始めた。一つと二つの距離は見る間に縮まり、

 グワオォォッ

 巨犬の口が少女達を噛み砕かんと開いた瞬間、

 バンッ

 少女達は中空へと跳躍する。

 

 バグンッ、ガクンッ

 『空気』という獲物を飲み込んだ間抜けな巨犬は、余りの手応えのなさに、バランスを崩した。そこへ、

「・・・行っけぇぇっ!!」

 重力以上の突進力で降下してきたルビーは、剣を上段に振り上げる。

 その傍らに居るサファイアも、

「・・・っ」

 言葉は発しないながらも剣先に気を込め、相棒と同じく振り上げた。

 その瞬間、

シュウゥゥッ

少女達の剣から紅と蒼の光が迸り、剣の軌道を鮮やかに彩ってゆく。

 

そして、まるで鏡映しのように左右からの剣跡が交差した瞬間、

「「ツイン・スラッシュ!!」」

 ルビーとサファイアは同時に、巨犬へと斬りかかるのであった

 

ズガアァァンッ

「ギアアァァッ!!」

 胴体を真っ二つにされた巨犬は断末魔を上げると、

 シュワァァァッ

 光の粒となって消えてゆく。少女達の力『聖力』によって『浄化』されたのである。

 

「・・・はー、やれやれ・・・終わったねぇ、燈(あかり)ちゃん」

 ルビーは、風に流される様に消えてゆく光の粒を眺めながら、傍らに居るサファイア海津燈(かいづあかり)にそう声を掛けた。

 

「・・・ちょっと、不用心よ、朝陽(あさひ)・・・まだ、周りのチェックが終わってない」

 燈は、ルビー深山朝陽(みやまあさひ)に口を尖らせながらも、彼女が持つ『聖具』聖なる力を持つ片眼鏡で周囲を窺う。

 一瞬、視界の一隅を悪魔が過ぎった気がしたが、朝陽の言うとおり今は、特に問題はなさそうだ。

 

 彼女達が倒したものそれは、この世界に害を為す、『悪魔』と呼ばれる存在である。

『悪魔』はこの世界と異なる世界から、人間が持つ『力』や人間そのものの肉を求めて襲来する悪しき存在

 一方、彼女達は胸元にある『聖玉』で『セイント・ジュエル』に変身し、その『悪魔』と戦う存在戦士なのであった。

 

「・・・もー、燈ちゃんは怒りっぽいんだから・・・機嫌直してよぉ」

 朝陽はぶー、と頬を膨らませ、後ろから燈に腕を絡ませた。

 その姿は、化け物と戦う『戦士』というよりも、年相応の少女である。

 

「・・・怒ってないわよ・・・ただ、注意しただけ・・・ちょっと、余りくっつかないで」

 じゃれつく朝陽に燈はそう応じるが、言葉にそれ程の険はない。

 寧ろ、少し気恥ずかしさがあるのか、頬をほんのりと紅に染めている。だが、鈍感な朝陽がそれに気づく様子は無い。

 

「・・・もうっ・・・問題は無いみたいだから、早くシスターのところに返りましょ」

 朝陽の過剰なスキンシップに堪えきれなくなったのか、燈はそう言うと朝陽の腕を振り解き、腕を組んで朝陽に背を向ける。

 

「・・・うん、そうだね・・・じゃあ、行こっか、燈ちゃん」

 燈の機嫌が悪いわけではないことが解った朝陽は、向日葵の様な笑顔を浮かべて燈に手を差し出した。

 燈は朝陽のその言葉に振り向き、組んだ腕を解くと、

「・・・そうね、帰りましょう」

 ギュッ

 朝陽の手を強く握る。

 二人は笑顔で頷き合うと手を繋いだまま、

 タンッ

 軽やかに飛び立ち、優しい月光に照らされながら帰途についた

 

 

「・・・申し訳ありません、ネメシス様・・・」

 邪悪な邪神像『悪魔』が信奉する神、『ネメシス神』の像に、偉丈夫の悪魔スラジールが平伏していた。

 コオォォッ

 邪神像の周りには、禍々しい霊気が揺らめき、怒気を顕しているようにも見える。

 邪神ネメシスは、優れた依代があれば顕界に姿を現すことも可能ではあるものの今は、霊体として存在していた。

 

 朝陽と燈が討ち倒した悪魔巨犬は、スラジールが放った刺客である。

 深い森の中に彼女達を誘い込んで分断し、数で圧倒する今回の作戦の主眼はそこにあった。

 しかし彼女達の連携は容易に分断できるものではなく逆に、こちら側が各個撃破されてしまったのである

 

 スラジールは人間界に侵掠する指揮官将軍である。

 しかし、今のセイント・ジュエルに代替わりをしてから、連戦連敗の辛酸を舐めさせられていた。

「・・・次こそは必ずやセイント・ジュエルどもをっ・・・!!」

 スラジールはネメシスに迫らんばかりにそう訴えかけるが、

「・・・お待ちくだされ・・・」

 嗄れた声に遮られる。

 

「・・・ビルジか・・・下がれっ!・・・私がネメシス様に言上しておるのだっ!!」

 ビルジ先代のセイント・ジュエル戦で功を上げ、軍師の地位を得た老人の悪魔に、不機嫌さを隠さないスラジールは、怒気を含んだ声音でビルジを退けようとした。

 しかし、

「・・・ネメシス様・・・私めに、策が御座います」

 平然と歩み出ると、邪神像の前で膝を折る。

 

「・・・黙れ、ビルジッ!!」

 尚もスラジールはビルジを退けようとしたが、

 ビリリィッ

「・・・ぐあぁぁっ!!」

 邪神像から放たれた雷撃によって、自身が退けられてしまった。

 

「・・・キヒヒッ・・・ネメシス様、有り難う御座います・・・必ずや素晴らしき成果を御前に・・・」

 ビルジは、雷撃の苦痛にのたうつスラジールを愉快げに横目で眺めながら、『策』を頭中で巡らせている

 

 

「・・・戻りました、シスター」

「・・・二人とも、お疲れ様・・・」

 そう微笑みで二人を迎えたのは、シスターの白洲晶(しらすあきら)である。

 彼女も嘗ては、聖天使セイント・クリスタルとして戦いに参じていたが引退し今は、ツイン・ジュエルの二人を導くシスターを務めている。

 

 朝陽と燈が帰還した先それは、学園の中にある、古びた礼拝堂であった。

 この礼拝堂は学園の中でも『旧礼拝堂』と呼ばれ、普段から、人が訪れることは余りない。

 それは、悪魔と人を除ける結界が張られているからでもある。

 

 この学園『聖メシアン学園』は、この地域では名の知れたお嬢様学校だがその実は、この国で『悪魔』と戦う機関の一つ『教会』が管理する、『支部』の役割も有していた。

 

 『シスター』の晶は、学園内でも『シスター』として働く傍ら、セイント・ジュエルの二人をサポートしている。

「・・・二人とも、怪我はしていない?・・・特に問題はないかしら?」

 晶はまず、朝陽と燈の身を案じてそう尋ねた。

 これはいつものこと優しい晶は、自分達の身を一番に考えてくれるその信頼感が、朝陽達と晶の間にはあった。

 

「大丈夫、大丈夫!・・・この通りピンピンしてるよっ!・・・晶さんも心配性なんだから~」

 朝陽は力こぶを作りながら、笑顔でそうおどけて見せる。そんな朝陽に燈は苦笑いしながらも、

「・・・もう、朝陽は脳天気なんだから・・・でも晶さん、何も問題はありません」

 冷静に晶の問いへ答えた。

 

「・・・ふふっ・・・その様子じゃ、本当に大丈夫そうね・・・じゃあ、今回の報告を聞きましょうか」

 妹の様な彼女達の明るい遣り取りに晶は微笑みながら、漸く報告を促す。

 それに燈は、「・・・はい・・・今回の悪魔ですが・・・」

 詳らかに、そして要点を得た報告を晶にするのだった

 

「・・・そう・・・有り難う、燈さん・・・よく解ったわ・・・朝陽さんも良く頑張ったわね」

 燈の要諦がある報告に満足しながら晶は、そう燈達を労う。

「・・・良かった・・・です・・・」

「・・・えへへっ・・・」

 二者二様に喜ぶ様に、ほっこりとした気持ちになりながら晶は、

「・・・じゃあ、二人とも・・・『聖玉』を」

 と、両の手を差し出した。

 

 朝陽と燈は頷くと、胸元のブローチ聖玉を手にする。

 シュウウゥンッ

 すると淡い光が二人を包み、元の制服姿聖メシアン学園の制服姿に戻った。

 

「・・・本当にお疲れ様・・・じゃあ、これを・・・」

 晶は祭壇に預かった聖玉を置くと、その傍らにあったもう一組の聖玉を二人に手渡す。

セイント・ジュエルの力の源である聖玉は、魔物と戦う度にどうしても、一定度は穢れてしまうのだ。

故に戦闘後は毎度、聖玉を回収し、『浄化』が済んだ聖宝と交換し常に、『聖力』を最大限に発揮できるようにしている。

ちなみに聖玉の『浄化』も、『聖天使』としての資質を持つ晶の役目とされていた。

 

「・・・ふぁっ・・・眠い・・・」

 緊張からの解放感からか、朝陽はだらしなく欠伸する。

「・・・もうっ、朝陽は・・・それでは晶さん、私達は失礼します・・・お休みなさい・・・ほらっ、朝陽」

「・・・ふぁい・・・お休みなさい、晶さん・・・」

 燈に促され、挨拶をした朝陽は、手を引かれながら礼拝堂を後にしてゆく。

 

「・・・ふふっ・・・お休みなさい、燈さん、朝陽さん・・・ゆっくり休んでね」

 どこまでも仲が良い二人に、微笑みながら手を振る晶。

 だがその心はほのかに暖めながらも、染み入る様な痛みを感じていた

 

 

 コポポポ・・・

 薄暗い空間の中にあるガラス張りの水槽そこでは、美しい少女の頭部が、燐光を放つ液体の中を漂っている。

 ゆらゆらと美しい黒髪を流す『少女』には、細いチューブが所々取り付けられ、瞳が閉じられた顔に、生気は無い。

 

 その水槽の前に、一つの『人影』がある。その人影ローブを纏った老人の悪魔ビルジは、水槽の『少女』を嫌らしい笑みで見つめていた。

「・・・キヒヒッ・・・これを使う日が来るとはのう・・・それにしても、拾いものじゃったわい・・・ヒヒッ・・・」

 そう呟くビルジ。この『少女』はセイント・ジュエルとの戦闘中、悪魔の一頭に喰われかけていたものを研究素材として、ビルジが回収したのだ。

 セイント・ジュエルの力の解析に大きな貢献をしたが、今回はそれ以上の使い道がある。

 

 ビルジは水槽に一歩近づき、その表面を撫でながら、

「・・・キヒヒッ・・・お前も嬉しいじゃろう?・・・『友』に会えるのじゃからな」

 口の端を歪める。その瞬間、

「・・・」

 物言わぬ『少女』の目が見開かれる。

「・・・キヒヒッ・・・ヒヒッ!」

 ビルジは、醜い笑いを漏らしながら、哀れな『少女』の『姿』を眺め続けていた

 

「・・・」

 聖母像に跪き、両手を組んで祈りを捧げる晶彼女の前には、ルビーとサファイアから預かった『聖玉』がある。

「・・・」

 自身に十分な『聖力』が満ちたことを感じた晶は、『聖玉』の上に手を翳した。

 その瞬間、

 キィイィンッ

 中指に填めた指輪『清めの指輪』が燐光を放ち、増幅された『聖力』が『聖玉』へと降り注ぐ。

 すると、

シュウゥッ

僅かに靄の如く黒ずんだ『穢れ』が、『聖玉』から消え去り、本来の輝きを取り戻してゆく。

 

シュウンッ

「・・・」

宝玉から『穢れ』が完全に除かれたことを確かめた晶は、腕を解き、立ち上がろうとする。

しかしその刹那、

「・・・痛っ・・・」

 左の肩口に鋭い痛みが走り、彼女はそこを右手で触れながら表情を歪めた。

 シスター服の下彼女が触れた場所には、魔物の鉤爪で抉られた深い傷がある。

 彼女も嘗て、朝陽や燈と同じく、セイント・ジュエルの戦士として魔物と戦っていたのだ。

 その戦いの中で負傷した彼女はセイント・ジュエルを退いたのだが、肩口の『傷』以上に心の『傷』が、彼女を苛み続けている

 

 

「・・・はぁっ・・・こりゃ、マズイかも・・・」

 セイント・アメジスト藤代紫(ふじしろゆかり)は、息交じりにそう独りごちた。

「・・・そうね、これは・・・凄くマズイかも・・・」

 それに彼女の相棒、セイント・クリスタル白洲晶(しらすあきら)が軽く応じる。

 しかし、どんな苦境でも冗談を言ってのけるアメジストが、そんな台詞を吐くことこそ、今の状況が極めて深刻であることを如実に示していた。

 

 彼女達はこの地区を管轄する『教区』の司教から直々に、襲撃された『支部』の救援と、『聖具』の回収を命じられた。

 しかし、教会のシスター達を逃すことには成功したが、自分達が脱出するには余りに遅すぎたのである。

 奮戦してどうにかここまでは来たが、クリスタルもアメジストもボロボロの状態で、周囲は幾重にも悪魔達が取り囲んでいた。

 彼女達の疲弊の度合いからしても、あと数分保てば上々、といったところか

 

「・・・ねえ、晶・・・」

 戦闘中に紫から、『クリスタル』以外の名で呼ばれるなんてとても嫌な予感がする。

 果たして、

「・・・晶・・・聖具を持って離脱して・・・」

 とんでもないことを言ってくる紫。

 

「・・・そんなこと・・・できるわけないでしょ・・・」

 私は敵に剣を向けたままそう返して、背中越しに彼女を責めた。

 そんな私に紫は、

「・・・いや、正直、、もうしんどいんだ・・・足がこんなじゃ、逃げ切れる自信もないよ」

 そう言って、右足を私に向けてくる。

「・・・っ!!」

 私の視界に入ったのは、深く傷を負い、血塗れになった足こんな状態で立っていられるのは、彼女の強靱な精神力故、だろう。

 だけど、

「・・・諦めるなんて、貴女らしくないわね・・・いつもみたいに、無茶をするなら付き合うわよ」

 私はそう『無茶』で返す。いつも『無茶』で私を振り回す紫ではあるけれど、今回だけは彼女に従うわけにはいかない。

 そう、いつもの紫であれば―

 

でも紫は、

「・・・ははは・・・厳しいな・・・でも、晶は解っているよね?・・・このままじゃ、共倒れになるだけだよ」

 『いつもの』彼女らしくなく、『現実的』な答えしか返してくれない。

 そんなことは解っている。解っているけど・・・

 

 そんな私の気持ちを察したのか紫は、

「・・・私が先に動くから・・・晶は、反対側に『全力』で駆けて・・・何があっても振り返っちゃ駄目だよ」

 『全力』にアクセントを置いてそう言うと、

「・・・じゃあ行くよ・・・有り難う、晶」

 トンッ、ダンッ

 私に反論の間も与えず、私の背を彼女の背中で押す様に、蹈鞴を踏んで飛び出した。

 

「・・・っ!!」

 紫に言ってやりたいことは山ほどあるけれど、今はそれ以上に、彼女の気持ちを大事にしなくちゃいけない。

 ダダッ

 私も前面の敵に向かって駆けだしてゆく。

 

「・・・どけぇぇっ!!」

 ガキィンッ

 ゴブリン型の悪魔を一体薙ぎ払い、僅かに『隙間』を作ると私は、強引に体をねじ込み、

 キィンッ、キィンッ

 剣で『進路』を斬り開いていった。そして、敵陣に突入してから数秒後、

ドゴォンッ

 地響きみたいな斬撃が、背後から聞こえてくる。

 

「・・・っ!!」

 私は思わず蹈鞴を踏みそうになるが、

「・・・振り返るなぁっ!!、行けぇっ、晶ぁっ!!」

 その怒声に、

 キィンッ

なんとか堪えて前進を続ける。紫と私の間には、数多の悪魔が居る筈―当然、互いの姿が見えることは無い。

しかし彼女は、気配だけでそれを悟ったのかまたも、私の背中を押してくれた―その猶予は、僅か、コンマ数秒の差―

 

ガキィィンッ

「・・・!!」

止まることなく前進を続けた私は奇跡的にも、敵の群を通り抜ける。

ギィィッ

でも奴らの追撃が終わったわけじゃない。

ダッ

そしてスピードを緩めることなく、教区の応援隊まで駆け続けた私は、聖具を守ることができた。

だけど、一番大切なものを私は失ってしまっだのだ

 

 ゴロゴロゴロッ

いつの間にか轟き始めた雷鳴に、

「・・・」

ズキズキと痛む傷を押さえながらも私は、ゆっくりと目を開く。

あの時、本当に彼女を守ることができなかったのか紫を失ってから、傷の痛みとともに、その問いが私を苛んでいる。

の傷が決して、癒えることがないように

 

「・・・」

 『浄化』を終えた私は、二人の聖玉を掴もうと立ち上がる。

 しかしその刹那、

 スゥッ

「・・・っ!!」

 先程までの静謐な空気に、隙間風の様な悪寒が走った。

「・・・これは・・・!!」

 その『悪寒』それはここで感じる筈の無いものだが確かにそれは、己の背後に感じ取れるのだ。

「・・・っ!」

 意を決して晶は、『悪寒』の源へと振り返る。

 その視線の先には

 

「・・・キヒヒッ・・・難なく結界を突破できるとは・・・矢張りコレは拾い物じゃったのぅ」

 枯れた悪魔の老人そして、

「・・・紫っ!!」

『失った』筈の、セイント・アメジスト―戦友の姿があった。

だがその『姿』は、嘗ての聖戦士のものとはとても似つかぬ、おぞましいもの―まるで、紫の肩から上が触手の群に、飲み込まれたかの様な化け物それが晶の眼前に居る今の『紫』であった。

 

ブジュルッ

『紫』の触手からは、腐臭漂う粘液が吐かれ、顔色を失った青白い額には、黒ずみ、僅かに紫色を帯びる『宝玉』が埋め込まれている。

だがそんな『紫』の口からは、

「・・・晶・・・」

 嘗ての彼女と変わらぬ声音が漏れ出るのであった。

「・・・くっ・・・」

 ジャキッ

 最悪の形で再会した『戦友』に晶は、傍らにあった聖槍を構える。

 彼女のかけがえのない『戦友』を、こんな醜悪なものに変えた『敵』を、その向こうに見据えて

 

 果たして、

「・・・ヒヒヒ・・・どうじゃ、友との再会は・・・嬉しいじゃろう?」

 その『敵』は嫌らしい笑みとともに、晶の心情を逆撫でする。

 普段であればこんな挑発になど乗らぬ彼女であるが、

「・・・貴様ぁっ!!」

 最愛の友を冒涜され冷静で居られる程、冷淡な人間では無い。

 

 怒気に任せるまま晶は、

ダンッ

 床を蹴り、『紫』の先に居る『敵』へ飛びかかる。

 だが、

 ズルッ

 『敵』を守るように、前へ這い出た『紫』に行く手を遮られ、

 ズシュゥウッ

 『紫』に聖槍を突き刺してしまう

 

「ぎゃあぁぁっ!!・・・痛い、痛いよ、晶ぁぁっ!!」

「・・・っ!!」

『紫』の絶叫に晶は思わず、

 ガクッ

 掴んでいた聖槍から手を離してしまう。

「・・・しまった!・・・」

 勢いのついた彼女は空身のまま、

 タンッ

 礼拝堂の通路へと着地した。

 

 『紫』は、

 ジュオオォォッ

「・・・痛い、痛いよ・・・晶・・・」

 聖槍に身を灼かれ悶絶しつつ、

 ジュリッ、ジュミッ

 汚らしい粘液を床に擦りつけながら、晶へとにじり寄る。

 そして、

「・・・晶ぁ・・・また・・・私を見殺しにするの?」

 と、怨嗟に満ちた声音で彼女に迫るのであった。

 

「・・・ち、違うっ・・・紫、違うの!!・・・」

 晶は、恐怖とも怯えとも言えぬ表情で、『紫』から後ずさる。

 しかし、『紫』は、

「・・・何が違うの?・・・ほら、こんな槍で、私を殺そうとしたじゃない・・・」

 ジュオオォッ

 『自身』を灼き続ける槍を見せつけるように触手で捧げ持ち、尚も晶を責め立てた。

 

「・・・許して紫っ!・・・私は貴女をっ!・・・」

 その友の責めに、そう言って許しを乞う晶はやがて、

 ガッ

 壁際に追い詰められてしまう。

 

 それに晶は、戦士としての本能すら失い、

「・・・お願い、許して・・・許して紫っ!!」

 ガタガタと震え、壁に手を突きながら謝罪を続けるだけであった。

 そんな晶を蔑むような視線を浴びせながら『紫』は、

「・・・ダメよ・・・許して・・・あげない・・・」

 ブジュッ・・・グジュルルルウゥゥッ

 晶を壁に押しつけ、押し潰す様に、嘗ての『戦友』を自身へと飲み込んでゆく

 

『・・・苦しいっ・・・臭いっ!!・・・けほっ、げほっ!!』

 ブジュッ、ブジュゥッ

 触手肉の森に閉じ込められた晶は、猛烈な悪臭に激しく咳き込みながらも、懸命に抜け出そうと藻掻くが、

 ヌルッ、ヌルッ

 粘液に塗れた肉の枝は掴むことすらできない。

 それどころか、

 ドプッ、ドプッ

 吐き出され続ける粘液によって、

『・・・うぷっ・・・おぶぅっ!?』

 僅かな隙間さえも満たされ、汚液の海に沈んでゆく。

 更に、

 ズルッ・・・グブブブゥッ

『・・・おっ!?・・・おぐえぇぇっ!!』

 呼吸をしようと開いた口から極太の触手がねじ込まれ、

 シュルッ・・・ズルルゥッ

 耳からは、繊毛の様な極細の触手が幾重にも、耳道の中へと潜りこんでいった。

 そして、

『・・・おあっ・・・えっ・・・』

 晶は汚液の海に溺れながら、意識を失ってしまう

 

 

「・・・晶・・・晶・・・」

 遠くから、私を呼ぶ声がする。

 聞き慣れた、それでいて心地よい声だけどそれは、遠い記憶の様な

 

「・・・晶・・・」

 一段と優しい声に私は、ゆっくりと瞼を開く。すると、

「・・・ふふっ、起きた?」

 ちょっと悪戯めいた台詞とともに、セイント・アメジストのコスチュームに身を包んだ、紫の笑顔が視界一杯に広がった。

 そして後頭部には弾力のある柔らかな感覚があり、鼻腔には、彼女の良い香りが流れ込んでくる。

 どうやら私は、紫に膝枕をされて眠ってしまっていたようだ。

 でもなんて、夢の様に心地良い空間だろう

 

 ジワァッ

 だけどそんな私の視界が、急に霞む。どうしてか解らないけど、暖かいものが、目の端から溢れて止まらない。

「・・・ふふっ・・・なぁに、泣いたりして・・・どうしたの、晶?」

 そんな私に紫はそう言って一段と優しい顔を向けてくれる。

 

「・・・私・・・怖い・・・夢を見ていたの・・・」

 そう、これまでのことは全て夢悪い夢だったのだ。今ここに紫が居てくれる。これが本当の『現実』なんだ

 

「・・・どんな・・・夢を見ていたの?・・・」

「・・・怖い夢・・・とっても怖い夢を見ていたの・・・」

 私は肩に手を置いて慰めてくれる紫に、涙ながら訴える。その刹那

「・・・そう・・・こんな・・・夢かしら?」

「・・・え?」

 紫の言葉から温度が消え、

 フッ

 まるで冬が訪れたが如く、空気の色が冷たく暗いものへと変わる。

 そして

 

ボキッ、ボキィッ

固い物をかみ砕く音それと一緒に、生臭い血の香りが辺りに充満する。

そんな私の眼前には

「・・・紫ぃっ!・・・嫌あぁぁっっ!!」

黒犬の化け物の口が動く度に、

ボキッ、ボキィッ

その音は、口の中のもの―血塗れの紫から響いてくる。その音だけではなく、

グチャッ、グチャッ

彼女の大事な命そのものが咀嚼される音も響いてくるあの時、振り返らなかった先で広がっていたであろう光景が、『現実』となって私の前に突きつけられていた。

 

「・・・あっ・・・ああっ!!」

 恐怖や後悔とも違う、ぐちゃぐちゃの感情に支配された私は、今まさに『殺されつつある』紫の前で尻餅をつき、顔を掻きむしるようにして、言葉にもならぬ嗚咽しか漏らすことができない。

 

そんな私に紫は尚も、

「・・・晶・・・あの時・・・私を・・・見捨てたよね?」

 氷の刃の如き言葉で私を切りつける。

 

「・・・違うっ・・・違う、私はっ!!」

 私はそう抗弁するけど、『あの時』の記憶は容赦なく自身を苛む。

 痛い、痛いよ頭を抱えて泣きじゃくる私に紫は、

「・・・違わないよ・・・貴女は見捨てたの・・・だけど大丈夫・・・私は救われたの」

 化け物の口から手を伸ばして、優しい微笑を浮かべながら私の頬に触れる。

 

「・・・救われた?」

「・・・そう、私は救われたの・・・あるお方にね」

 涙を流しながら顔を上げた私に紫がそう言うと、

「・・・このお方よ・・・」

 彼女の隣に一つ、『人影』が現れた。

 

「・・・悪魔っ!」

 その『人影』皺を重ねた小柄な老人の悪魔に私は、思わず気色ばむ。だけど紫が私を宥めるように、

「・・・慌てないで、晶・・・このお方はビルジ様・・・私を救ってくださった恩人よ」

 そう言うと、

 『クチャッ』

 耳の奥で小さな音何かを掻き混ぜるような音がして、頭が急にぼうっとする。

 紫の隣に居るあくまびるじさま?に何をしようとしていたのか、わからなくなる。

 

「・・・ビルジ様は確かに悪魔族ではあるけれど、正しいお方・・・『聖者様』なの」

 その言葉の後に、

 『クチャッ』

 また何か音がする。

「・・・せいじゃ・・・さま?・・・」

 あくまが『せいじゃさま』?・・・どこか変な気もするけれど、紫がそう言うのであれば、そう・・・なのかもしれない。

 

「・・・ふふっ、そうよ、『聖者様』・・・だから・・・ビルジ様の仰ることに間違いはない・・・いいわね?」

 『クチャッ』

 そう・・・なんだ・・・びるじさまは・・・せいじゃだから・・・まちがいない・・・それに・・・紫の声がなんだか気持ち良い。

 だから私は、

「・・・うん・・・わかった・・・びるじさまは・・・まちがいない・・・よ・・・」

 と答える。するとこんどは、

ズルッ

ゆかりのすがたが、大きくかわった。

あれ、どこかでみたことが・・・

 

「・・・そう・・・それが正しいわ・・・これからは私とビルジ様の言うことだけ信じればいい・・・」

 しょくしゅにうかんだ紫は、とびっきりの笑顔でわたしにそう言ってくれる。

 『グチャッ』

「・・・ふあっ・・・んんっ・・・きもち・・・いい・・・わかったよ・・・ゆかり・・・」

 わたしは、とってもしあわせ。だってこんなに気持ち良くて、ゆかりもいてくれる。

 もう、くるしいことなんてないんだから

 

 

「・・・ヒヒヒ・・・塩梅はどうかのぅ・・・」

 ビルジがそう呟くと、

 ズニュリッ

『紫』の中から、粘液に塗れた晶が姿を現した。しかし、

 ギチッ

 四肢は触手で縛り上げられ、

 ミジッ

 額から鼻の上まで触手が目隠しの様に塞いでおり、

 クチュッ、クチュッ

 耳の中には繊毛状の触手が潜り込んでいる。

 更には、

 グプッ

 口に極太の触手を咥えさせられていた。

 

 時折、

 ビクンッ、ビクンッ

 体を痙攣させるが、

 キインッ

 耳の触手が妖しく燐光を放ち、

 ドクンッ、ドクンッ

 口に咥えた触手が彼女の口内へ何か液体を吐き出すと、

 ビクッ、クッ

 その痙攣は緩やかに治まってゆく。

 痙攣と平穏を繰り返す度、その頻度は少なく、痙攣自体も弱々しいもの変じていった。

 やがて、

「・・・」

 痙攣は治まり、晶は死んだ様に動かなくなる

 

 耳に穿たれた触手は彼女の脳を弄り、偽りの『認識』を彼女に植え付けるためのもの。

目隠しの触手は偽りの『視覚』を強制的に送り込み、口の触手は、ビルジに都合の良い『常識』を晶が得た時に快楽物質を給餌する『戦友』である筈の『紫』は今や、ビルジの奴隷を作り出す『洗脳装置』と堕していた

 

「・・・ヒヒヒ・・・頃合いかのう・・・」

 ビルジは喜色を浮かべそう呟くと、

「・・・口と目を開けさせよ・・・」

 と、『紫』に命じる。すると『紫』は、

「・・・はい・・・」

 ズルッ・・・ジュポッ

 晶の目を隠していた触手と、口の触手を退かせた。

「・・・」

 意思の光を失った晶は、焦点の定まらぬ瞳で、虚空をぼんやりと眺めているだけだ。

 

「・・・これ・・・儂が見えるか?」

 ビルジが晶にそう呼び掛けると、

 キィンッ・・・クチュッ、クチュッ

 耳の触手が光り、返答を促すかの如く、蠢きだす。

 

 強制的に返答を求められた晶は、涎を垂らしながら、

「・・・う・・・あ・・・見え・・・ます」

 同意の言葉を漏らした。

 だがその瞳は未だ、光を失ったままだ。

 

「・・・キヒヒっ・・・良い、良い・・・儂の名は・・・言えるな?」

 晶が深い催眠の中に居ることに満足したビルジは、新たな『人形』の出来を確かめる

 

『・・・うん・・・あ・・・』

 仄かに、私の目へ光が差してくる。それと一緒に、ぼんやりとした人影と、

「・・・これ・・・儂が見えるか?」

 嗄れた声がする。これは―

『クチュッ』

 そうだ、びるじさまだ。

 

「・・・はい・・・びるじ・・・さま・・・です・・・」

 なんだか、そうこたえると、とってもきもちいい。

 びるじさまわたしたちのせいじゃさまだからなのかな?もっと、おこえをききたい

 

 恍惚とした表情を浮かべ、己の問いに答える虜囚ビルジが笑いをどうにか堪えながら、

「・・・そうじゃ、儂は・・・『聖者』ビルジじゃ・・・」

『名乗り』をあげ、

「・・・ヒヒっ・・・聖者として、お前に『正しい教え』を呉れてやろう・・・」

 そう宣告すると、

キィンッ・・・クチュッ、クチュッ

再び耳の触手が瞬き、晶の心を書き換えてゆく

 

せいじゃ・・・ビルジさま・・・正しい・・・おしえ・・・

「・・・はい・・・ありがとう・・・ございます・・・」

 正しいことを・・・おしえていただける・・・とってもうれしい。

 

「・・・お前が信じるべき神・・・それは・・・ネメシス神じゃ」

「・・・ネメシス・・・しん?」

 ビルジさまがおっしゃるなまえ・・・どこかできいたことがある。

 『クチュッ』

「・・・ふあっ

 とってもきもちいい・・・きもちいい、お名前・・・

 

 だからわたしは、

「・・・ヒヒッ、そうじゃ・・・お前が信じ、仕える神はネメシス様じゃ・・・良いな?」

「・・・はい・・・私がしんじ・・・つかえる神は・・・ネメシスさま・・・です」

 ビルジ様のおことばに、すなおにそう・・・こたえられる。

 そう、私が信じる神・・・それはネメシス様・・・

 

『・・・クヒヒッ・・・刷り込みは順調のようじゃのぉ・・・』

 うっとりと邪神の名を口にし、従属の言葉を吐く愚かな『神の僕』その存在を我が物にするべくビルジは、堕落の呪詛を晶に刷り込んでゆく

 

「・・・キヒヒッ・・・ネメシス神の使徒、白洲晶よ・・・お前は使徒にして、『聖者』ビルジの僕じゃ・・・いいな?」

 『クチュッ』

「・・・あはっ・・・はい、ビルジ様・・・ネメシス神の使徒・・・白洲晶は・・・ビルジ様の・・・しもべです

 ビルジ様のしもべ・・・私は、ネメシス神の使徒なんだから・・・聖者である、ビルジ様の・・・しもべなのは・・・あたりまえのことだ。

 だから、

「・・・ヒヒッ、そうじゃ・・・ならば、お前の身分をもう一度言ってみよ」

 ビルジ様のご命令に、

「・・・はい・・・私、白洲晶は・・・ネメシス神の使徒にして・・・ビルジ様の僕に御座います」

 そう答えられる

 

『キヒヒッ!、愚か者め・・・自ら服従の言葉を吐きおったわ!・・・これでこの牝は儂の思い通りじゃっ!!』

 心中でそうほくそ笑むビルジは今や、喜色を隠そうともせず、下卑てイヤラシイ笑みを浮かべながら、

「・・・クヒヒッ・・・使徒、白洲晶よ・・・ネメシス神の使徒であるお前は、何故そんな『邪神』の神服を着ておるのじゃ?」

 そう『問い』を投げかける。その瞬間、耳の触手はそのままに、

 ズルッ

 晶の四肢を拘束していた触手が解かれた。

 

「・・・っ!」

 私は、ビルジ様のお言葉に慌てて、自分の姿を見返してみる。

 確かに、ネメシス神の使徒である私が、どうしてこんな服を着ているのだろう?

 『クチュッ』

 簡単な答えすら考えつかない、愚かな私にビルジ様は、

「・・・キヒヒッ・・・そんな穢らわしい襤褸切れは脱いで・・・ネメシス神の使徒に相応しい、この『神服』を着るのじゃ」

 正しい『答え』をお示しくださった。

 

「・・・申し訳ありません、ビルジ様・・・直ぐに、着替えさせて頂きます・・・」

 私はビルジ様にお詫び申し上げると、忌々しい布切れを急いで脱ぐ。

 ビリッ

 脱ぐ途中で袖が千切れてしまったが、それすらも私を苛立たせた。

 

 トサッ・・・スッ

 千切り捨てるように穢らわしい布切れを脱ぎ捨て、下着姿になった私は、ビルジ様から賜った神服に手を伸ばそうとする。

 だけど、

「・・・何をしておる・・・それも脱ぐのじゃ」

 ビルジ様からお叱りの言葉を頂いてしまう。

 

「・・・え?・・・」

 『クチュッ』

「・・・ネメシス神の使徒であり、儂の僕であるお前が、全てを晒さぬで良い訳がなかろう?・・・全てを晒し、捧げる・・・それがお前の責務じゃろう?」

 そうだ、私は何をしているんだろう?こんな単純なことで、一瞬でも躊躇ってしまった自分が恥ずかしい。

 

 ガバッ

「・・・度々申し訳ありません、ビルジ様っ!!」

 私はビルジ様に土下座をしてお詫びをすると、急いで立ち上がり、

 ビリィッ

 『羞恥』の源である薄布を引き裂き、かなぐり捨てた。

 

「・・・グヒヒッ、それで良い・・・どれ、儂に良く見せてみい」

 『クチュッ』

「・・・はい・・・存分にご覧くださいませ・・・」

 私は直立不動の姿勢で、寛大なビルジ様に検分をお願いする。

 度重なる失態に加えて、自分の体がビルジ様のご不興を買わないか、不安に苛まれながら

 

『・・・キヒヒッ・・・完全に、儂のいいなりじゃのう・・・』

 ビルジは、晶の肢体を舐め回す様に眺めながら、『検分』の悦に浸っていた。

 肩口から背にかけて大きな傷はあるが、嘗ての戦士らしく引き締まった肉体は、その美しさを失ってはいない。

 ツンと上を向いた形の良い胸に、程よい曲線を描くボディ・ライン。

 そして、男を誘う花の様に咲く、淡い花弁『牝』として彼が欲情するに十二分なほど、晶の体は色香を放っている。

 

「・・・ヒヒッ・・・使徒に相応しいか・・・儂が確かめてやろう」

 ビルジは、勿体ぶりながらそう言うと、

 フニッ、フニッ

 晶の胸を揉みしだいた。

 

 『クチュッ』

「・・・ああんっ、ビルジ様ぁ

 ビルジ様に胸をご検分頂いた私はその気持ち良さに、はしたなくも声を上げてしまう。

「・・・キヒヒッ、なんじゃ、感じておるのか?・・・ならば、こちらはどうじゃ?」

 ビルジ様はそんな私に呆れながら、

 クチュッ

「・・・はぁんっ

 もっと敏感な場所をご検分された。

 

「・・・クヒヒッ・・・儂に『検分』されて悦ぶとは・・・随分と淫乱な使徒じゃのう」

「・・・あんっ・・・ビルジ様ぁ・・・申し訳・・・ありま・・・んんっ・・・せんっ

 ビルジ様に胸とアソコを検分して頂きながら私は、感じてしまい、ガクガクと膝を震わせてしまう。

 ビルジ様の仰る通り、私は淫乱、なのかもしれない

 

「・・・ヒヒッ・・・良い、良い・・・ネメシス様に仕え、儂の僕でもあるお前は、全てを晒し、捧げなくてはならぬ身・・・淫乱であることは『美徳』、じゃろうて・・・クヒヒッ」

 『クチュッ』

「・・・ああっ、淫乱な私めを許してくださるなんて・・・有り難う御座います、ビルジ様・・・」

 淫乱な私を受け容れ、評価してくださるビルジ様には感謝しても仕切れない。

 このお方の僕であることがただ、嬉しい。

 

「・・・ヒヒッ・・・体は使徒として合格のようじゃの・・・これならば、『神服』を着ても問題ないじゃろうて」

 ビルジ様に晴れて許可を頂いた私は、

「・・・有り難う御座います、ビルジ様・・・」

 深々と頭を下げ、感謝の念を噛み締めながら私は改めて、『神服』を手にし、広げてみる。

「・・・っ!」

 確かにそれは『服』と呼ぶものなのかもしれないが、肝心な『布』の部分を一切有さない『紐』、に近いものであった。

『クチュッ』

・・・確かに、ネメシス様とビルジ様に全てを捧げ、晒すべき私に相応しい『服』と言えるだろう。

私はまず、『神服』の下に脚を通し、

クッ

引き上げた。

 

「・・・んっ」

 股の付け根を引っ張り上げる『神服』は、股の形を一際露わにし、アコソの形すらくっきりと浮き上がる。

『クチュッ』

「・・・」

それでこの『神服』が意味するところ『使徒』そして『僕』として、自らを晒し、全てを捧げる意思を示すものを理解した私は、『袖』の部分に手を通し、肩口に『神服』をのせると、

「・・・んんっ」

 『胸』の部分に乳房を通し、『神服』をフィットさせる。そして最後に、

 キュッ

 首元でチョーカーの様に『神服』を結ぶと、

 ギュムッ

 『神服』は体を全体的に締め付け、体のラインは一層露わとなった。

 

 『神服』の輪郭は競泳水着の様に、ボディ・ラインにフィットするものではあるが当然 、覆い隠すものは一切存在しない。

 それどころか、胸と股『女』として秘すべきところは全裸であるよりも際立ち、その存在感を誇示していた。

 そして黒革の『神服』が肌に貼り付く様はまるで、全身を漆黒の蛇が這うようである

 

「・・・グヒヒッ、良く似合ておるぞ」

『クチュッ』

 『神服』を身に纏い御前に立った私は、ビルジ様からお褒めの言葉を頂いた。体の『ご検分』もお許しを頂いたからこれで、『使徒』と『僕』になる資格は得られたのだろうか?

 

「・・・ヒヒッ・・・それにしても・・・淫乱なお前に相応しい『神服』じゃろう?・・・儂だけではなく、ネメシス様もお喜びになるじゃろうて」

『クチュッ』

 私の不安など、軽く吹き飛ばす程の過分なお言葉を、ビルジ様は与えてくださった。

 そう、この『神服』は、淫乱な私に相応しい。

 ビルジ様だけではなく、ネメシス様にもお喜び頂けるなんて、どんなに誇らしいかこの余り有る誉に私は、感謝の意を込めて『使徒』らしく膝を突き、『聖者様』の前で手を組んだ。だけど

 

「・・・キヒヒッ・・・じゃが、見てくれは良いが・・・お前の『中』は、まだ穢れたままじゃのう・・・」

 ビルジ様のそのお言葉が、私を凍り付かせる。

 

「・・・どうして、どうしてですかっ!?」

 私はビルジ様に縋り付くように、そう訴えた。するとビルジ様は、

「・・・穢れた神なぞ信じておったせいじゃ・・・じゃが『聖者』である儂なら、清めてやる手段がないわけではない・・・」

 お髭を撫で、深慮されながら、光明を示してくださる。 

「・・・お願い致します・・・何でも致しますから、どうか・・・どうか私をお清めくださいっ!!」

 私はひれ伏してビルジ様にそう懇願する。

 どこまでも忌々しい『穢れた神』こんなものの残滓がある限り、私はどこまでも救いを得ることができないのだ。

 

「・・・ヒヒッ、そうか・・・ならばコレでお前を清めてやろうかのぉ」

 ビルジ様はそう仰ると、

 ファサッ

 装束の前をはだけさせ、お体の『一部』を露わにされる。その瞬間、

 ムワァ

 もの凄い臭い

 『クチュッ』

 いや、素晴らしい香りが、辺りに満ちた。

 

 ビルジ様が露わにされたもの陰茎は、小さなお体とはアンバランスなほどに大きく、表面には小さな瘤が無数に浮いている。

 巨大な芋虫の様なそれは、

 ピュクッ、ピュクッ

先端から汁を滲ませ、独立した生き物の様に蠢動していた。これで私の『中』をお清めになる

『クチュッ』

それを想像しただけで私は、

「・・・ああっ・・・嬉しいっ・・・」

 歓喜で心を弾ませる。

 

「・・・ヒヒッ・・・ならばお前のために『祭壇』を作ってやろうかの・・・ホレ・・・」

 ビルジ様がそう仰って紫に顎で指示なさると、

 グニィッ

 紫は体を一部を変化させて、窪みいや、私がビルジ様に『お清め』頂くための『祭壇』を作ってくれた。

 

「・・・キヒヒッ・・・これで・・・お前がすべきことは解っておるな?」

 全てを整えてくださったビルジ様は、微笑を浮かべながら私にそう促される。

「・・・はい、心得ております・・・」

 そうだ、私がすべきことはただ一つ『祭壇』に上った私は、『祭壇』の曲線に沿って仰向けになった。

 すると、

「・・・っ!!」

 憎き『邪神像』があろうことか、私を見下ろす位置に鎮座しているではないか私は思わず、ビルジ様のほうを伺い見る。

 

「・・・キヒヒッ・・・」

 ビルジ様は相変わらず微笑を浮かべておられるけど、

『・・・私の信仰が・・・試されている?・・・』

 その微笑の奥に隠された意図を、私は感じ取らざるを得ない。ネメシス神の使徒にして、ビルジ様の僕あるべき姿を勝ち取るため私は、この『邪神』と対峙しなければいけないんだ私は、

『・・・見ていなさい、邪神め・・・私は・・・私は・・・あるべき姿を勝ち取るんだからっ!!』

 そう心を燃え上がらせて、

 グイッ・・・クパッ

 腰を上げると股を開き、邪神へ見せつけるように不浄なる入り口を、ビルジ様へと突き出す。そして、

「・・・ビルジ様・・・どうか私を・・・『お清め』くださいませ・・・」

 『邪神』と決別するための言葉を紡いだ

 

『・・・キヒヒィッ!・・・本当に愚かな『牝』じゃのう・・・己が何をしようとしているのか解っておらぬとは・・・じゃがこれで、この『牝』は・・・儂のモノじゃ!!』

 自分に躊躇いもなく股を開く愚かな少女の姿にビルジは、狂喜する。

 もうこれで、この『牝』が自身の『立場』に疑問を抱くことは無い筈だ。そしてあと一押しで、肉体ばかりか魂さえも己のモノとなる

 

 ビルジは慎重に、だが喜色は隠さずに、

「・・・グヒヒッ!・・・良い心がけじゃ・・・では、清めの儀式を始めようぞ」

 そう、晶に宣告するのであった

 

 ピトッ・・・グニィッ

 ビルジ様の聖なる陰茎が、不浄の際まで至るのを、肉感的に感じ取ることができる。

『・・・ああ、やっと・・・私は浄化される!!・・・』

 そうして、私の心が歓喜に満たされた時

「・・・行くぞ・・・グヒヒッ!!」

 ズブブブゥウゥッ

 ビルジ様が一気に、私の中へ入ってくる

 

『グチュッ、グチュッ』

「・・・い、あ・・・はあぁぁぁんんっ!!」

 一瞬痛みのようなものを感じたけれど、そんなものがどうでも良くなるくらいの圧倒的な快楽目にバチバチと火花が散って、目の前のビルジ様のお姿さえ、良く見えなくなる。

 だけど、

 ズヌッ、ズヌッ

「・・・あっ、はっ・・・ひゃぁぁんっ

 ビルジ様が一突きされる度に私の中が、瘤で穢れが掻き出されるかの如く、『浄化』されてゆくのがはっきりと解った。

 ズクッ、ズクッ

 ビルジ様に数度『お清め』いただたところで、漸く視界が落ち着いてくる。

 

「・・・グヒヒッ!・・・処女であったか・・・お前の中っ・・・穢れてはおるが・・・中々に良いぞっ!!」

 お喜びになるビルジ様の愛しいお顔を正面に捉えながら私は、その背後から恨めしそうに覗く、『邪神』の顔を睨め付ける。

『どうだ、勝ったぞ邪神め!・・・私は・・・私はっ!・・・『正しい』自分を手に入れたぞっ!!』

 『邪神』との戦いに勝利した私は、これ以上ない達成感に満たされながら、穢らわしいものから聖なるものへ視線を移した。

 

「・・・グヒヒッ!・・・」

ズクッ、ズクッ

ビルジ様は大きく腰を振り、私の『浄化』を懸命に続けてくださっている。

その姿は余りに神々しく、愛おしい

「・・・ビルジ様・・・」

 私は自然と、

 クッ・・・ギュゥッ

 脚と腕でビルジ様の小さなお体でも圧倒的な存在を包みこんでいた。

 これでビルジ様の体温、臭いをもっと身近に感じられるそして私は

「・・・ビルジ様ぁっ!・・・私を・・・私を・・・貴方様の、真の僕としてくださいましっ!!」

 図々しくも、本心からの懇願をしていた。これまでの穢れた自分を一片も残さず『浄化』し、このお方の真の僕となりたいそれが今の私にとって、たった一つの願いだ。

 

 それにビルジ様は、

「・・・ギヒヒィッ!・・・良く言うた!・・・白洲晶・・・お前を・・・お前の体も魂も・・・儂のモノにしてやるぞっ!!」

 これ以上なく有り難いお言葉と、

 ガッ、ガッ、ガッ

 荒々しい腰使いで応えてくださった。

 

「・・・ビルジ様ぁっ・・・嬉しいっ!・・・私・・・白洲あきらはぁっ・・・この身もたましひぃっ・・・も・・・貴方様に捧げましゅふぅっ!!」

 ゴッ、ゴッ、ゴツッ 

私は子宮口が壊れてしまう位、ビルジ様に突き上げながら永遠の服従いや、『愛』の言葉をする。

その刹那、

『ジュプンッ』

耳から何かが抜ける様な音がした。

だけどまた、バチバチと火花を散らし始めた視界では、それを捉えることはできない。

でもそんなこと、もうどうでもいい。

だってこれから私は、『正しい存在』へと生まれ変わるんだからそして

 

「・・・グヒヒィッ・・・白洲晶ぁ・・・これで・・・儂のモノになれぇぇっっ」

ビルジ様の絶叫と同時に、

ガッ、ゴッ・・・グブンッ

私の子宮の中へ筒先が潜り込み、

ドビュッ、ドビュルルルルルゥウゥッ

もの凄い勢いで、精が放たれた。

 

「・・・ひぎぁぁぁあぁぁっ!!」

 私はその凄まじさに悲鳴を上げる。

 ボコッ、ボコッ

 精の奔流に子宮壁が叩かれ、膨大な熱が体を巡る感覚それは『灼かれる』という表現が一番相応しいかもしれない。

 悪しき旧弊を廃し、正しき新生を得る再生の業火に灼かれながら私は、清々しくも幸福に満ちた至福の中に居たのだしかし何故か、

 ツゥ

 双眸から涙が溢れる。それは感涙なのか、それとも

 

 ドピュッ、ピュッ

 ビルジ様の『浄化』が止んだ瞬間、

 ボォォッ

 私のお腹子宮の下あたりに、神々しい光が生まれる。

 それはまるで、私の『新生』を祝福するようにそれはやがて、

 シュオォォッ

 一つの紋様となって、私に刻まれた。

 

「・・・キヒヒッ・・・成功したようじゃな・・・」

 まだ私の腕の中に居るビルジ様はいかにも嬉しそうに、私の『紋様』を撫でる。

 

「・・・あんっ・・・ビルジ様ぁ・・・これは?・・・

 ビルジ様が触れただけで、軽く絶頂してしまった私は、霰も無い声を漏らしつつも、自身に浮かんだ吉兆に期待を込めて、問いを投げかける。

 

 果たしてビルジ様は、

「・・・キヒヒッ・・・これか?・・・これは・・・『聖刻』じゃ・・・ネメシス様の正しき使徒となれた証・・・お前は晴れて、『使徒』となれたのじゃ・・・これを誇って良いぞ」

 嬉しいお言葉をくださった。

「・・・嬉しい・・・漸く私は・・・『使徒』になれたのですね・・・」

 私は満ち足りた微笑を浮かべ、紫色の『聖刻』をそっと撫でる。

 その向こうには薄皮越しに、ビルジ様の剛直がまだ私の中にあることを感じさせてくれた

 

『・・・グヒヒッ・・・完全に堕ちたか・・・これでこの『牝』は儂のモノじゃわい』

 うっとりと『聖刻』を撫でる晶を眺めながらビルジはそう、満悦の表情を浮かべる。

 晶に刻まれたものそれは当然に、『聖刻』などではない。

 悪魔に身も心も屈服し、その肉奴隷に堕した者に刻まれるもの淫猥にも卵巣を象り、邪悪な光を放つそれは『淫紋』ビルジの肉奴隷に成り果てた『刻印』なのだ。

 ここまで堕落すれば、例えビルジが『死ね』と命じても、この『牝』は悦んで命を差し出すだろう。

 

『・・・さて・・・次の段階に行くかのぉ・・・ヒヒヒッ!・・・』

 ビルジは、手駒となった晶を更に堕としめるべく、策を進めるのだった

 

「・・・んふ・・・」

 使徒になれた余韻に浸っていると、

「・・・使徒、白洲晶よ・・・そろそろ儂を離せ」

 ビルジ様がそう苦言を漏らされる。

 

 ビルジ様を全身で抱えたままの姿を改めて見た私は、

「・・・申し訳ありませんっ・・・」

 慌てて、その拘束を解く。こんな高貴な方を私などがいつまでも独占して良いはずが無い。

 でも、

「・・・んっ・・・ふんっ・・・」

 ズッ・・・ズルルゥッ

「・・・ひあぁぁんっ

 ビルジ様が私の中から退くビルジ様の『瘤』と膣肉が擦れるだけで、ビリビリと背中に電流が走ってしまう。

 

そんな私にビルジ様は、

「・・・ヒヒッ・・・抜くだけでイクとは・・・どこまでも淫乱な奴じゃのう」

 剛直を抜きながら呆れた様に、お叱りの言葉を下されるのだった。

 そして、

 ジュポッ

「・・・あ・・・」

 私の中から完全にビルジ様が退かれてしまう。

『喪失感』そんな言葉だけでは表現できない感情が私を襲う。私を満たすものその先を目で追ってしまうのも仕方がないだろう。

そして

 

「・・・あむっ・・・じゅっ・・・んくっ・・・」

 私はビルジ様の剛直にむしゃぶりついていた。

 微かに鉄の味―私の破瓜の味が混ざったそれは、まるでビルジ様と繋がっていた時の様に、私の頭をクラクラさせる。

 

「・・・まあ良い・・・儂とお前が初めて繋がった記念じゃ・・・この味をしっかり覚えておくのじゃぞ」

 浅ましい私をビルジ様は、頭を撫でながら受け容れてくださる。

 どこまでも優しくて寛大なお方この思い出と『繋がりの味』は、死んでも忘れない。

 

「・・・んぷっ・・・んくっ・・・」

 剛直を根元まで飲み込み、『繋がり』の残滓を粗方舐め取ったところでビルジ様は、

「・・・さて・・・この辺でいいじゃろう?・・・『使徒』、白洲晶よ・・・」

 『使徒』を殊更強調し、低い声でそう仰った。淫乱な私でも流石に、それの意味するところは解る。

 

「・・・んくっ・・・んっ・・・」

 唇を窄め『残滓』を刮ぎ取りながら私は、

 ヌポッ

 ビルジ様の陰茎から口を離す。そしてすっと姿勢を起こし、ビルジ様の御前に立った。

 『使徒』としての役目を果たすために

 

「・・・キヒヒ・・・」

 自分の前に立った晶の姿をビルジは、舐め回す様に『検分』する。

 『淫紋』が刻まれた下腹を、誇らしげに示す僕その下の『口』からは、

 ドロォ

 ビルジとの『繋がり』の跡が、太股を伝って流れ落ちていた。

 

「・・・」

 直立不動でビルジの言葉を待つ様は、『使徒』としての『使命感』に満ちあふれている。

 ここまで完全に洗脳が成功するとはビルジは晶の背後に居る『紫』の存在を、彼女に透かして見ていた。

『・・・ヒヒッ・・・『戦友』を失った傷を、儂で埋めたのかのぉ・・・ならば・・・クヒヒッ・・・』

 ビルジは更に悪辣な罠で晶を貶めようとしている

第1話 堕天 おわり

 

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