四神戦隊メイデン・フォース

第8話 逆臣

 チュパッジュルッ
 「はぁっ、むっ」
 「ちゅっ、じゅるっ・・・邪淫皇様の、とっても逞しくて美味しい・・・」
 淫亀と淫虎が左右から、邪淫皇の肉棒に奉仕する。
 その邪淫皇の手許からは鎖が延び、二人の首に填め込まれた首輪へと続いている。
 屈辱的な姿勢で彼に奉仕する二人の表情はその姿に反して、喜悦に満ちたもの。
 かつての仇敵に対する敵愾心は微塵も感じることができず、ただ牝として、性の悦びを貪ることに没頭している。
 邪淫皇は己をいきり立たせながら、それを満足そうに眺めていた。

 「ククク、ブラックに続きホワイトまで堕とすとは・・・邪水晶よ、貴様に任せたのは間違いではなかったようだな」
 「はっ、ご期待に添え、嬉しゅう御座います」
 邪淫皇の御前で、邪水晶は恭しく臣下の礼を取る。
 「ククク、これならば貴様により多くの戦力を割いたほうが良いであろう・・・邪漢麾下の武将5名を貴様につける・・・依存はないな、邪漢」
 「・・・は、仰せのままに」
 邪漢はその一言に、一瞬体を浮かせたが身を引き、邪淫皇に頭を垂れた。
 彼の脇に控える幹部達は、それを苦虫を噛み潰すような表情で見つめている。

 邪淫皇が絶対的な権力を握っているとは言え、邪界も一枚岩ではない。
 邪界の中には邪水晶のような姦計を良しとせず、人間は力でねじ伏せるべしとする、所謂『武断派』も少なからず存在するのだ。
 その代表格が邪漢であり、大派閥を形成しているのだが、それを邪淫皇は黙認している。
 邪水晶に対する対抗心を煽ることでより多くの成果を得よう、その様な意図に加えて、邪淫皇に直接不満が及ぶことを防いでいるのだった。
 
 それに、邪漢はこの世界の支配に欠かせない人材だ。
 邪界も人間界と同様、優秀な人材は限られており、作戦指揮まで任せることのできる人材までとなると、極めて稀少な存在となる。
 邪漢はその稀少な人材であり、その力を発揮させるためにも、一定の求心力を持た続けることが必要なのだ。
 
 だが、彼等武断派とは別に、彼女達の姿を忌々しげに見つめる影があることを、邪水晶は知る由もなかった。
 


「邪漢様、お待ちくだされ」
 軍議が終わり、居室に戻ろうとしていた邪漢はそう、背後から声をかけられた。
「邪謀か・・・何用だ?」
 彼が振り返るとそこには、嗄れた老人、邪謀が佇んでいた。
 邪水晶が今の地位を得るまでは、邪淫皇の軍師を務めていた老人だ。
 だが今では邪水晶の後塵を拝し、序列もいつ覆されるかわからない、という状況下にある。

『忌々しい男め』
 邪漢はこの老人が嫌いであった。
 −自身の利益のためなら、裏切りですら行う卑怯者。
 それが邪漢の邪謀に対する人物評だ。
 武人肌の邪漢にとって、もっとも嫌悪感の強いタイプの一人であることは疑いない。

「先の軍議、まことに腹立たしいものでしたな。邪漢様を差し置いた邪水晶の振る舞い、目に余りまする」
「・・・何が言いたい」
 邪謀の婉曲な言い回しに邪漢は不快感を隠さず、怒気を孕んだ視線で邪謀を睨め付ける。
 だがそれを、邪謀は涼しい顔で受け流すと、
「はっ、このままでは邪漢様の地位すらも、邪水晶めに簒奪されるのではないかと」
 そう邪漢を挑発した。
「・・・何?」
 その言葉に邪漢は、額の血管を浮き上がらせつつ、邪謀に迫り、襟首を掴んだ。

『ひひひ、単純な奴じゃ。まあ、その方が儂には都合が良いがな』
 邪謀は内心そう思いながらも、
「い、いや、他意は御座いませぬ!・・・ただ、邪水晶の件、この儂にお任せくだされ。邪漢様の悪いようには致しませぬ」
 敢えて慌てた様子で、そう邪漢に訴えかける。
「お前の助けなどいらぬわ!」
 ドカッ
 だが、邪謀を床に叩き付けながら、邪漢はその訴えかけを忌々しそうに拒絶したのだった。 

「イタタ・・・いや、失礼致した・・・邪漢様をお助けするなど、分をわきまえぬ話でござった・・・ただ、これから儂のすることを見逃して頂きたいのです」
「・・・貴様、何をする積もりだ?」
『ひひひ、食い付いてきおった』
 邪謀は腰をさすりながら、再び内心でそうほくそ笑む。
 ここまでは、全て筋書き通りだ。

「それは言えませぬが、それは邪水晶と儂との諍い・・・邪漢様とは、全く関わり合いのないことで御座います」
「・・・ふむ」
 邪漢の反応を見ながら、邪謀は更に畳み掛ける。
「故に、これから起こることは邪淫皇様にとっても塵が如きこと。左様に捉えて頂きたいのです」
 そう言い切ると邪謀は、邪漢の表情を窺った。
「・・・相解った・・・ただし、邪淫皇様に累が及ぶ時は、貴様等を斬る・・・そう心得ておけ」
 それだけ言い捨てると邪漢は、邪謀に一瞥も呉れずマントを翻し、通路の先へ消えていったのだった。

 邪謀はその後姿を満足気に見送りながら、
「ひひひ、これで良い。これで邪漢も儂に手出しはせぬじゃろうて・・・」
 そう一人ごちた。

 邪漢の影響力と情報網を考えれば、どこかの筋から邪漢にこの策の情報が流れる可能性は否めない。
 その場合、あらぬ場面で横槍が入る危険性もある。
 策の遂行を意のままに行うためには、邪漢の介入の可能性を潰す必要があったのだが、これでその可能性はなくなった筈だ。
「ひひひ、これで策のお膳立ては揃ったの。では始めようとするか・・・」
 邪謀は邪な笑みを浮かべてそう言うと、邪漢とは反対の方向へと歩き始めた。



 カツカツカツ
 ヒールの音を響かせ、淫亀は皇宮の通路を歩いていた。
 邪淫皇に引き続き、幹部妖魔に『お披露目』−自分もそうであったように、恐らく夜半まで続くであろう−をしている淫虎を残し、奴隷部屋に下がる道の途 中、柱の陰から彼女を呼び止める姿があった。
「・・・淫亀、待つのじゃ」
「これは邪謀様、如何なされましたか?」
 そう邪謀に呼び止められた淫亀は、直ぐに片膝をついて臣下の礼をとる。
 邪界において、序列と階級は絶対的なものだ。
 奴隷階級に過ぎない淫亀にとって、上級妖魔であり邪界のNO.3でもある邪謀は、天上人にも等しき存在。
 故に淫亀は邪謀に対し形式上とは雖も、最大限の敬意を払う必要がある。

「お前の主に渡したいものがあるのじゃ」
「渡したいもの、で御座いますか?」
 だが形式上の敬意と、心中の敬意は必ずしも合致するわけではない。 
 淫亀は、この老人を信用していなかった。
 それどころか、汚い手段を好んで取り、目的よりもそのことを愉しむ邪謀には、嫌悪感すら抱いている。
 だが主と邪淫皇の命に反するものでない限り、奴隷風情が妖魔の命令を拒絶する権利などない。
 下級妖魔であれば主の威光と命令で、逆に指揮下へ置くこともできるのだが、上級妖魔、それも主より序列上位の邪謀に対して逆らうことなどあり得ないこと だった。

「まずは、儂の部屋に参れ」
「・・・はっ、畏まりました」
 そう答えを返しながらも警戒を緩めず、淫亀は邪謀の後に従った。



 コポコポコポ・・・

 『悪趣味な・・・』
 淫亀は心の中でそう悪態をつく。
 淫亀が通された邪謀の研究室には、女の肉片やグロテスクな下級妖魔のサンプル、それに、明らかに女を責めるためのものと思われる器具が所狭しと並べら れている。
 『邪水晶様もここで・・・』
 悪趣味の見本市、とも呼ぶべき部屋を眺めながら淫亀は、主がここで改造されたことを思い返し、警戒の度を更に強めた。
 だが邪謀はそんな淫亀を嘲笑うような口調で、
「そう警戒するでない・・・お前さんに害を加える積もりはないでの・・・ひひひ、それにしても流石は邪水晶の奴隷、良い体をしておるのぅ」
 そう言い、ねっとりと絡み付くような視線を、淫亀に浴びせるのだった。
 それは一層、淫亀の嫌悪感を高める。
「・・・我が主に渡したいものとは、何で御座いましょう」
 不愉快なこの部屋を一刻も早く出るため、淫亀は邪謀の言葉を敢えて無視し、先を促した。
「ひひひ、そう慌てるでない・・・しかしまあよかろう・・・それはお前さん自身じゃ」
 邪謀がそう言い終えるなり、
 シュルシュルシュルッ
「何!?」
 部屋の至る所から触手が飛び出し、淫亀へと向かってくる。
「・・・くそっ!」
 淫亀はそれを右へ左へと必死になって躱し続けた。

「・・・太刀さえあればっ!」
 邪淫皇の皇宮において奴隷は帯剣を許されておらず、皇宮に参内するためには皇宮の入り口で、衛士に剣を託す必要がある。
 邪淫皇に奉仕しその帰途、邪謀に呼び止められた淫亀は、剣を得る暇がなかった。
 故に今の淫亀は奴隷戦士の装束を纏いながらも、丸腰の状態にあり、この窮地を脱するには、体術か呪術で対処するしかない。
 しかし、僅かな詠唱の時間を取ることすらできないこの状況下では、体術のみで乗り切るしかないのだ。

「ほほぉ、流石じゃのぅ。じゃが、これでどうかの・・・淫梢、参れ」
「・・・はい、ご主人様」
 そう邪謀が声を掛けると、部屋の奥から淫梢が現れた。
 淫梢は鎖帷子のみを身に着け、正眼に刀を構えている。
 表情は死んでいるが全身から放つ殺気が、淫亀の肌にピリピリと伝わってきた。

「心配せずとも良いぞ。その刀で斬られても、儂のやり方でお前を『癒やして』やるからの、ひひひっ!・・・やれっ、淫梢!」
 ダッ
 その命とともに、淫梢が走り出す。
 退魔師としては格下『だった』が、邪謀の改造を受けているはずであろうその能力は未知数だ。
 それに、触手に動きを制限される淫亀は明らかに不利な状況にある。
 ヒュンッ!
「・・・くぅっ!」
 案の定、生前からは考えられない鋭い踏み込みと剣さばきに、淫亀は防戦するだけで精一杯となってしまった。
 
 ヒュンッ、ヒュンッ
 雨霰の如く襲い来る剣戟と触手に、淫亀は徐々に気力と体力を削がれてゆく。
 その僅かな疲労の蓄積が、技のキレに微妙な誤差を与えてしまう。
「くっ!?」
 数巡の攻撃を躱した時、淫亀のステップが、僅かに滑った。

 その瞬間を、淫梢は逃さない。
「・・・破ぁっ!」 
 一気に間合いを詰めた淫梢は剣を構えながら、猛烈な勢いで突っ込んでくる。
 それを避けようと淫亀は無理な体勢のまま辛うじて、右足でステップを踏んだ。
 だが、淫梢はそれを見計らっていたかのような俊敏な動きで、
 ドガッ
 その足を払いにゆく。
「・・・ぐっ!?」
 それでバランスを崩した淫亀の動きが、一瞬止まってしまう。
 シュルシュルシュルッ!
 それを待っていたかのように、大量の触手が淫亀にまとわりつき、忽ちの内に拘束してしまったのだった。

「ひひひ、ここまでのようじゃのぉ」
 拘束された淫亀の前に、邪謀がそう言いながら悠然と歩み寄る。
「貴様、私をどうする積もりだ!」
 ギシッギシッ
 淫亀は必死に抵抗しようとするが、触手が彼女を放すことはない。
「ひひひ、しかし良い体をしておるのぉ・・・本来であれば脳ごと弄り回したいところじゃが、それではあ奴にバレてしまうだろうて・・・」
 邪謀は淫亀の問いを無視して、淫亀の肢体を品定めするように撫で回す。
 節くれ立った指の感触に、淫亀の背筋に寒気が走る。
 だがそれは、この醜悪な老人への嫌悪感だけではなく、生物的な恐怖感を伴うものであった。

「お前さんにはこれを呉れてやるでの」
 邪謀はそう言うと、白い液が満たされた瓶を、淫亀の眼前に突きつけた。
 その中には、ミミズのような醜悪な生物が数多、蠢いている。
「うっ・・・」
 その醜悪さに思わず淫亀は、眉を顰めた。
 だが邪謀は、淫亀のその反応を楽し気な表情で受け止めると、
「ひひひ、そう嫌がるでない。ホレ、近くで見ると、存外に可愛いもんじゃぞ」
 その瓶の蓋を開け、ピンセットのような器具で一匹を、その瓶の中からつまみ出した。
 ビチッビチッ
 その生物はつまみ上げられながらも激しくのたうち、飛沫を撒き散らしながら、存在を主張する。
 それを邪謀は、淫亀のイチモツ、尿道の入り口に押しつけた。
 気色の悪い肉感が、肉棒から淫亀の脳髄へと走る。

「や、やめろぉっ!」
「ひひひ、良い声で鳴くのぉ。これが潜り込んだら、もっと良い声で鳴くんじゃろうなぁ・・・それ、儂にその良い声を聞かせてくれ、ひひひっ!」
 そう言うと邪謀は器具を、その生物から離した。
 それと同時に、
 ズブズブズブッ!
 その生物は淫亀の尿道に頭を潜り込ませ、その奥へと進み始める。
「ひぎぃぃぃっ!」
 尿道に潜り込んだ虫は、尿道を広げながら肉茎の奥、精巣へと突き進んでゆく。

「ひひひ、その虫は儂の精液で培養したもんでのぉ。牡の精液で増殖し、宿主を儂の意のままに支配する・・・どうじゃ、地獄の悦楽の 味は?ん?」
「ひぃぃっ!取ってぇっ!この虫取ってぇっ!」
 肉を切り裂くような痛みと支配される恐怖に、淫亀はそう絶叫した。
 だが、その姿を邪謀は喜び、興奮で衣服の前を膨らませる。
「ひひひっ!そらっ、もっと良い声で鳴くのじゃっ!」
 邪謀は唾を撒き散らしながらそう叫ぶと、カテーテルのような妖しい器具を掴み、
 ズブゥッ
 淫亀の鈴口にそれを突き立て、強く押し込んだ。
「あがっ、嫌ぁっ、虫が、虫が入り込んでくるよぉっ!」
 虫と器具が尿道の奥へ潜り込む激痛に、淫亀は涙を浮かべながらそう悶絶する。
「うひひひっ、鳴けっ、叫べっ!もっと儂を喜ばせろっ!」
 だがそれも、邪謀を喜ばせるスパイスにしかならないのだった。

 ズブズブズブッ・・・ズルッ
「ひぃっ!?」 
 やがて虫は精巣へと辿り着き、
 ニュ゛ルニュ゛ルニュ゛ル
 淫亀の精液を糧に、増殖を始めた。 
「い、嫌ぁっ、私の中を掻き回さないでぇっ!」
 だが、触手に拘束された淫亀は何もすることができず、ただ悶え苦しむことしかできない。
「ぐぎぃっ!?」
 虫が精巣の中で容積を増す度、淫亀はビクビクと体を震わせる。
 そしてそれに比例して、
『我に従え』
 そう囁く声が、彼女の思考を占領し始めるのだった。
「ち、ちがっ、・・・私は、邪水晶様の奴隷っ、奴隷、どれい・・・どれい?」
 淫亀は必死に抗うが急速に、邪水晶の奴隷としての自己認識が薄らいでゆく。

「・・・どれい、だれのどれい?」
『我に従え』
「ひひひ、お前は儂の、この邪謀様の奴隷じゃ」
 淫亀の頭の中に響く声と重なるように、邪謀の声が淫亀の思考を上書きしてゆく。
「じゃぼう、さま、の、どれい・・・ちがう・・・」
 だが、淫亀の邪水晶に対する思慕の念と忠誠心が、邪謀の奴隷に墜ちることをすんでの所で拒ませ続ける。
「ひひひ、まだ抗うか。流石じゃのぉ・・・じゃが、いつまで耐えられるかの。淫梢、少々相手をしてやれ」
「・・・はい、ご主人様」
 邪謀に命じられた淫梢は、悶える淫亀の前に跪くと、
 ちゅっ、じゅぅっ
 淫亀のモノを含み、激しく啜り上げる。
「あひぃっ!?」
 その突如訪れた強烈な刺激のために、淫亀の心に僅かな隙間ができてしまう。

『我に従え』
「ひひひ、どうじゃ、堪らんじゃろう?この虫は性感を高める作用もあるでな・・・さあ、早く儂に忠誠を誓え。儂の奴隷になれば、もっと気持ちよくしてやる ぞ」
 その隙間に、邪謀は甘い言葉を潜り込ませる。
「あふっ、じゃぼうさまのどれい・・・だめ・・・でも、ちんぽきもちいい・・・」
 その言葉に、淫亀の心は徐々に浸食されてゆく。

『我に従え』
「ひひひ、もう少しのようじゃの。淫梢、もっと激しく責め立てるのじゃ」
 じゅっ、じゅるぅっっ!
「ひぃぃっ!」
 淫梢は邪謀の命に従い、淫亀への責めをより激しいものへと変えた。
 細長い舌は尿道深くに突き刺さり、その頬は執拗に淫亀の淫液を吸引する。
「あ、だめ・・・じゃぼうさま・・・どれい・・・わたし、は、じゃぼうさまの、どれい・・・」
 淫悦が高まるにつれ、偽りの主への忠誠心が、淫亀の中で産声をあげた。
 やがてそれは、
「わたしは、邪謀様のどれい・・・私は邪謀様の奴隷・・・」
 明確な形を取り、
「・・・私は邪謀様の性奴隷」
 遂に淫亀の自己認識と同一化される。

「よし、よう言うた・・・淫梢、思う存分イカせてやれ」
 じゅっ、じゅっ、じゅるぅっっ!
 邪謀にそう命じられた淫梢は、責めのピッチを上げ、淫亀をフィニッシュに追い込むべく手管を尽くす。
『わたしが、わたしが消えてゆく・・・』
 淫梢が手管を尽くす程、淫亀の邪水晶への忠誠心が刮ぎ取られてゆく。
 その最後の一片が刮ぎ取られるのと、彼女の絶頂は、同時だった。
「・・・イ、イクゥッ・・・邪水晶様ぁっ!」
 ビュッビュッ!
 淫亀は、射精と同時に断末魔にも等しき声で愛しい主の名を叫ぶと、力なく頭を垂れる。
 その目元には、一筋の涙が流れていた。



 ちゅぅぅっ、じゅるっ
 淫亀が果てた後も淫梢は、淫亀の全てを吸い取るかの如く執拗に、彼女の肉棒を責め続けていた。
「もう良い、淫梢・・・さて、そろそろ定着したかのぉ・・・起きるのじゃ、淫亀」
 邪謀はその淫梢を制し、そう淫亀に声を掛ける。
 ちゅるんっ
 淫梢が脇に退くのと時を同じくして、死んだように動かなかった淫亀が、のそりと上半身を起こした。
 淫亀の顔は生気が失われ、能面のように青白い。

「どうじゃ、淫亀、儂の言うておることが解るかの?」
「・・・はい、邪謀様。全て、理解しております」
 一瞬の間を置き、淫亀は邪謀の問いにそう答えた。
 だが、紡がれた言葉は機械的で、表情は未だ生気を失ったままである。
 邪謀は淫亀のその反応を見て、ふむ、と頷き、
「良いじゃろう・・・では、儂のモノをしゃぶれ」
 そう言って、己のモノを淫亀に突きつけた。
 その矮小なモノは既に硬度を持ち、先走りの液を僅かに滴らせている。

「はい、仰せのままに・・・」
 虚ろな瞳のまま淫亀はそう答えると、舌を突きだし、邪謀のイチモツをねっとりと包んでゆく。
「れろっ、はむっ、ちゅぅっ」
 そして唾液をまぶしながら、口内へと納めてゆき、緩いストロークで亀頭と竿を刺激し始めた。
「くひひひ、そうじゃ、中々良いぞ。もっと丹念に舌を這わすのじゃ」
 きゅっ、にゅるっ、にゅるぅっ
 淫亀は命じられるまま、悪臭に満ちた醜い肉棒のカリ首に舌を絡め、男の弱い部分を責めてゆく。
「・・・」
 その脇に侍る淫梢は、二人の姿を無表情に見つめる。
 そのガラスのような瞳には、喜悦に満ちた主の顔が、ただ映っていた。

 じゅぶっ、じゅぶっ、じゅぶっ
 秘所に突き込んだかの如く、激しい水音をたてながら、淫亀は新たな主への奉仕に没頭する。
「ぐひひひ、良いぞ、良いぞぉっ!」
 邪水晶に調教され、邪淫皇への奉仕で磨きをかけたその技は、邪謀を確実に追い詰めていった。
 淫亀の性技に興奮した邪謀は、淫亀の後頭部を掴み、引き寄せると、
「ひひひっ、そろそろ出すぞ・・・全部飲み干すのじゃっ!」
 ドピュッドピュッ
 ありったけの精液を淫亀の喉奥へと流し込んだ。
 ゴクッゴクッ
 淫亀は邪謀に命じられた通り、それを溢すまいと、懸命に嚥下してゆく。
「ひひひっ、どうじゃ、これがお前の『主』の味じゃ・・・しっかり、体で覚えるのじゃぞ」
 邪謀はそう言いながら、
 グチュッグチュッ
 イチモツを淫亀の舌に押しつけるように、口内を掻き回す。
 その邪謀の精液を受け止める淫亀の表情は、いつしか淫蕩な牝のものへと変じ、腿には愛液が一筋、流れ落ちていた。

 れろっ、ちゅっ、れろんっ
 邪謀のイチモツにこびり付いた汚液を、淫亀は一心不乱に舐め清めてゆく。
 それにあわせて、形の整った胸が揺れる。
「ひひひ、イヤラシイ胸じゃのぉ」
 邪謀はその胸を掴み、
 ムニッ、ムニッ、
「・・・お前の中にある虫は、射精と共に流れ出、女の子宮に寄生する」
 手の中のマシュマロのような感触を楽しみながら、そう含むように語りかける。
「あんっ、はい、邪謀様ぁ・・・」
 今では、嫌悪感を抱かなくなった『主』の愛撫に、淫亀の性感は強く刺激されながらも、
 れろっ、ちゅっ
 奉仕を止めることはない。
 それは邪謀による洗脳が深いことを、如実に示していた。
 その様子を満足気に見つめながら、邪謀は更に言葉を継ぐ。
「・・・お前のモノで邪水晶を犯し、儂の下僕にするのじゃ。もし犯すことができぬ場合は・・・殺せ」
 
 真の『主』を裏切り、偽りの『主』に差し出せとの命に、
 ブルッ
 淫亀はその体を震わせた。 
「はい、邪謀様の仰せのままに・・・」
 だが、潤んだ瞳で淫亀はそう答えると再び、新たな主への奉仕に没頭するのだった。



「・・・ふぅっ・・・」
 軍議から私室に戻った邪水晶は、大きな溜息をつきながらソファーに身を沈めた。
 慣れたとは言え、明確な敵意を向け続けられることは、さしものの邪水晶とは雖も、精神的な疲労を伴う。
 それ故に、敵意を遮断できるこの自室が邪界で唯一、邪水晶が安寧を得られる場所となっていた。

 コンコン
 やや控えめなノックが、彼女の部屋のドアを叩いた。
「・・・入れ」
 その音に、やっと得られた安寧を遮られた邪水晶は、やや不機嫌な声でそう応じる。
 キィ
 ドアが開く音と共に、何者かの気配が部屋の中に侵入してくる。
「・・・」
 邪水晶は一瞬身構えたが、訪問者に敵意がないことを感じ取り、緊張を解いた。

「邪水晶様・・・」
「淫亀?」
 調度品の陰から姿を現したのは、彼女の奴隷である淫亀であった。
 彼女は頬を紅潮させ、潤んだ視線を邪水晶に向けている。
 恥ずかしそうに言葉を詰まらせる彼女ではあったが、はち切れんばかりにいきり立ち、その肉竿を粘液で濡れそぼらせたイチモツが、来室の意図を雄弁に物 語っていた。

「ふふふ、そう言えばホワイトの褒美をまだやっていなかったわね・・・いいわ、こちらへいらっしゃい、『沙夜ちゃん』」
「『翡翠姉ちゃん』・・・」
 邪水晶と淫亀は睦み合う時、かつての『姉』と『妹』の関係に戻る。
 かつて『神凪翡翠』を『姉』と慕っていた『北山沙夜子』にとってその『姉』を犯すことは、思慕の情を満たすだけではなく、背徳感を得られる行為でもあ り、ただ交わるだけでは得られない愉悦を、彼女に与えるのだった。 

 邪水晶は淫亀の瞳を見つめた後、
「・・・」
 一瞬の間を置いてから、
 ぎゅっ
 淫亀をその豊満な胸にかい抱く。
 そして淫亀の艶やかな黒髪を、手櫛でそっと梳き込んだ。
 淫亀は頬を紅潮させながら、それを嬉しそうに受け止め、甘えるように邪水晶の胸に頬を擦りつける。 
「ふふふ、可愛い娘ね」
 邪水晶は淫亀の顎に手を当て、くっと引くと
「さあ、その可愛い顔を見せて頂戴」
 自分へと向き直させ、
「はむっ、ちゅっ、ちゅっ」
 淫亀の唇を奪うと、小鳥が啄むように軽いキスを繰り返した。
「ちゅっ、ぢゅっ、じゅるっ」
 直ぐにそのキスはいつしか舌を絡め合い、唾液を交換する濃厚なものへと変じる。
 淫亀の桜色だった頬は、林檎のように赤みを増した。

 ギュッ
 興奮した淫亀は無意識のうちに邪水晶に強く抱きつき、
 ビタンビタン
 待ちきれぬとばかりに、滾りきった肉棒を邪水晶の腹に当てた。
「ぷはっ・・・ふふふ、慌てなくてもいいのよ。もっと愉しみましょう」
 邪水晶は唇を離し、そう微笑みかけると、淫亀の膝元にしゃがみこむ。
 ビクン、ビクン
 既に欲望を抑えきれない淫亀の肉棒は、その苦しみを表すかのように痙攣し、鈴口から涙の如き透明な液を溢している。
「ふふふ、こんなに濡らして・・・可愛いわ、沙夜ちゃん」
 チュッ
 邪水晶は淫亀の亀頭にキスすると、軽く鈴口から淫液を吸い取る。
「・・・」
 邪水晶は再び一瞬の間を置いてから、裏筋の部分に舌を当てると、ツゥと下から上まで舐め上げた。
「はぁんっ、翡翠姉ちゃん・・・」
 そして左手を一度己の下腹に当てると、その手で淫亀の肉棒を握り締め、
 シュッ、シュッ
 上下に擦り始めた。
 さらに、
「あひぃっ!?」
 ツプッ
 右手の中指を淫亀のアナルに突き立て、
 クッチュッ、クッチュッ
 肛内を掻き回す。
「はっ、あっ、翡翠姉ちゃん、気持ち良い、気持ち良いよぉ!」
 その前後から襲い来る刺激に淫亀は、そう譫言のように呟きながら下半身を振るわせるのだった。

 シュッ、シュッ
 クッチュッ、クッチュッ
 邪水晶は執拗に、淫亀の最も敏感な性感帯を責めてゆく。
「・・・はぁんっ、もうダメェ!」
 ドンッ
 そう叫ぶと淫亀は、邪水晶を突き飛ばし組敷くと、
「早く・・・早く翡翠姉ちゃんの中に入れたいの・・・」
 そう言って、亀頭を邪水晶の秘所に宛がおうとする。
 だが、邪水晶は淫亀の肉棒から手を離すことはない。
 そればかりか、
 シュッシュッ、シュッ
「ひゃぁんっ!?」 
 擦る速度を一層速め、 
「ふふふ、まだよ。もっと焦らしてあげる」
 そう言って、更に淫亀を嬲り始るのだった。

「・・・くぅっ!」
 その責めに、ビクン、と体を仰け反らせた淫亀は、
 ガッ
「!?」
 突如両手で喉輪の如く、『主』の首を締め上げる。
 それを振り解こうとした邪水晶の手が一瞬、淫亀の肉棒を離れた。
 その機を逃さず、
「ふーっ、ふーっ」
 淫亀は荒い息をつきながら、盛りのついた犬のように腰を振り上げると、
 ズブズブッ!
 一気に邪水晶の中へと挿入した。

「かはぁっ・・・翡翠姉ちゃんの中、いつもより・・・キツイっ!」
 邪水晶は淫亀に首を絞められたことにより、意識せず膣肉を引き締めている。 
 グチュッグチュッグチュッ
 淫亀は普段よりも強い締め付けと刺激に、 
「キツイ、キツイよほぉっ!・・・ダメぇっ、翡翠姉ちゃん、チンコもっていかれそうだよぉっ!」
 淫亀の首を締める力を弱めた。
 その力の弱まった手を、邪水晶は振り払う。
「げほっ、けほっ!・・・沙夜ちゃんも、いつもより激しい・・・いいわ、もっと激しく犯して」
 そう言いながら淫亀の下腹を優しく撫でると、
 ぎゅっ
 強く彼女を抱き締めた。

「・・・翡翠姉ちゃん、翡翠姉ちゃん、翡翠姉ちゃんっ!」
 淫亀は『翡翠』の名を叫びながら、激しく腰を振り続けた。
 ゴリュッゴリュッゴリュッ
 虫に寄生され、容積を増した怒張が邪水晶の膣肉を激しく抉る。
「はっ、あんっ、沙夜ちゃん、いいわっ!もっと奥を、奥を突いてぇっ!」
 その責めに邪水晶も我を忘れ、淫亀のイチモツへ子宮を押しつけるように腰を動かすのだった。 
 
「はっ、はっ、ひぃっ・・・ダ、ダメェッ!・・・翡翠姉ちゃんのなが、ぎもぢよずぎるぅっ!・・・イ、イク゛ゥッ!」
 淫亀は限界を超えた快楽に、鼻水と涎を垂らしながら、
 ビュッ、ビュッ、ビュッ!
 邪水晶の中へ勢い良く射精した。
 それと併せて、
 ゴプッ・・・ビュルッビュルッ!
「ひぎぃぃぃっ!?」
 淫亀の精巣に巣くった虫が尿道を通り、邪水晶の子宮へ多量に放たれる。
 その時、まばゆい光が二人を包んだ。



「ようやったのぉ、淫亀」
「有り難う御座います、邪謀様・・・」
 邪謀から褒めの言葉を貰った淫亀はそう言いながら、恭しく頭を垂れた。 

 邪謀の居室には淫亀の他に邪水晶の姿もあるが、
「・・・」
 彼女は淫亀の横で、無表情に立ち尽くすばかりだ。
 そんな彼女に、
「ひひひ、これでこの女は儂のもんじゃ・・・」
 邪謀はまるでおもちゃを手に入れた子供のように小走りに駆け寄ると、上から下まで、舐めるような視線を邪水晶に浴びせる。
 そして徐に手を伸ばすと、
 ムニュッムニュッ
「・・・あんっ」
 邪水晶の豊満な胸を揉みしだき始めた。
「ひひひ、矢張りお前さんが儂の最高傑作じゃのう・・・この乳の揉み心地、たまらんわい」
 手に吸い付くような感触を愉しみながら、邪水晶の胸をゴム鞠のように変形させる。

「・・・ひひひ、これからたっぷりと可愛がってやるからのぉ・・・そしてお前さんを使い、邪界を裏から操ってやるわい」
 邪水晶の肉体を弄びながら、邪謀は上機嫌にそう言葉を漏らした。
 だがその瞬間、邪水晶の体が硬くなる。
 そしてそれと同時に、虚ろだった邪水晶の表情に、意志の光が灯った。
「ふふふ・・・矢張り、その積もりだったのね」
「何?・・・貴様、まさか!」
 邪水晶の豹変に気付いた邪謀は、ばっと彼女から離れる。
 そんな邪謀を邪水晶は、先程までとは異なり、余裕の視線で見つめるのだった。

「何故じゃ!何故解ったのじゃ!」
 己の策は完璧だった、邪謀は今もそう信じて疑わない。
 事実、淫亀の洗脳は万全であり、邪水晶と雖も見破ることは不可能だった、はずなのだ。
 だがその自信を打ち砕くかのように邪水晶は、
「奴隷の異変を、私が解らないと思って?・・・私と淫亀の、主従の契りを軽く見ないで欲しいわ・・・ねえ、淫亀?」
 そう言って淫亀を傍らに呼び寄せる。
 邪水晶の横で侍る淫亀は、
「はい、邪水晶様」
 『主』のその言葉に、喜びに満ちた笑顔でそう応えると、邪水晶に甘えるようにしなだれかかるのだった。

「く、糞っ、淫亀まで正気に返すとは・・・」
 邪謀は、彼女達の姿から、己の策が完全に潰えたことを悟り、
「この女狐め・・・」
 ブルブルブル
 悔しさと怨嗟で、手を震わせながら、呪詛のようにそう言葉を吐いた。

「観念なさい。大人しくしていれば、苦しまず殺してあげるわ」
「か、幹部の儂を、お前より序列上位の儂を、討つことができると思うて・・・」
 だがその言葉は邪水晶の言葉に遮られた。
「邪淫皇様、お聞きになられましたか?」
 邪水晶はいつの間にか掌の中に現れた式神に、そう問い掛ける。
「しかと聞いた・・・邪謀よ、貴様の叛意、万死に値する・・・邪水晶よ、その逆臣を討て」
 そしてその式神からは、邪謀の一縷の望みを絶つように、邪淫皇の冷徹な勅令が下されたのだった。

「ひぃっ、邪淫皇様っ!?申し訳御座いませぬ、これは、これは・・・!」
 邪謀は額を擦りつけ、見えぬ主君にそう土下座するが、彼の主君はその声すら不快とばかりに、
「見苦しいぞ、邪謀。貴様の戯れ言をこれ以上聞く積もりはない・・・邪水晶、勅命、しかと果たせ」
 再びそう、邪水晶に命じると通信を一方的に終えた。
「はっ、仰せのままに・・・覚悟、『逆臣』邪謀」
 邪水晶はその命にそう答え、式神を消すと、邪謀に向き直る。
 その顔は、邪な笑みに彩られていた。

「た、謀ったな、邪水晶!」
 そう言いながら、じりじりと邪謀は後ずさる。
「それはお互い様でしょう?小人が策を弄するからよ・・・大人しく死になさい」
 ジャキン
 邪水晶はそう冷たく言い放ちながら、腿のホルダーに差した小太刀を引き抜き、邪謀に迫る。
「ひ、ひぃぃっ、待て、待つのじゃ、邪水晶!・・・お前さんを、妖魔にしてやったのはこの儂じゃ・・・お前は恩人に手をかけるのか!?」
 邪謀は尻餅をつき、邪水晶にそう命乞いをしながらも、芋虫のように後ずさりを続けた。
「・・・」
 そこには先程までの余裕など微塵も見られず、見苦しさだけが募る。
 その姿を、汚い物を見るような目で見つめながら邪水晶は、
「恩人?・・・確かに、妖魔にしてくれたことは感謝しているわ。だけどそれはあくまで結果の話・・・お前は私の体を、嬲りたかっただけではないの?」
 一歩一歩、邪謀との間合いを詰める。

 カツン
 やがて、邪謀の背が部屋の壁にあたった。
「ひぃっ!?」
 惨めに震える邪謀を冷たく見下ろしながら邪水晶は、
「もうお終い?最後までつまらない男ね・・・まあ、いいわ。貴方の遺産は、私が全て引き取ってあげる。安心して死になさい」
 そう言い放つと、両手の小太刀を振り上げる。
「ひ、ひぃぃっ・・・や、やめろぉっ!」
 まさにその刃が邪謀を切り裂こうとした時、
 ヒュンッ
 一陣の風とともに、黒い影が飛び込んできた。
 キィンッ
「何っ!?」
 間一髪のところで、邪水晶の剣は火花をあげながら、その影に跳ね返される。

 ザッ
「い、淫梢!?」
 邪謀を守るように、太刀を構えた淫梢が邪水晶の眼前に立ちはだかる。
 その淫梢はチラリ、と後方を僅かに見、
「・・・ご主人様、お逃げください」
 そう言うと、
 ダッ
 邪水晶に突進する。
 ガキィンッ
「・・・くぅっ!」
 その必殺の太刀を、邪水晶は身を捩りながら受け流した。

「邪水晶様っ!」
 淫亀が邪水晶に助勢するため駆け寄ろうとするが、
「加勢はいらないわ・・・彼女の相手なら、私一人で十分よ」
 邪水晶は小太刀を構え直しながら、淫亀をそう制した。

「・・・たぁっっっ!」
 再び淫梢は邪水晶へと斬り掛かる。
 キィンッキィンッ
 だが、その剣戟は悉く邪水晶の小太刀に受け流され、傷一つ付けることができない。
 逆に、
 ビュッ
「・・・っ!」
 邪水晶の小太刀によって、淫梢の肌に血の筋が刻まれてゆく。
 −二人の力量差は明らかだった。

 キィンッ
「!!」
 邪水晶の小太刀によって淫梢の太刀がその手から弾かれ、
 カランッカランッ
 乾いた音をたてて床に転がった。
 そしてその機を逃さず、
 ヒュンッ・・・ドガッ!
 剣のように鋭い回し蹴りを、淫梢の脇腹に入れる。
「ぐはぁっ!」
 その衝撃に堪らず、淫梢は床に転がされた。
 ダメージに蹲る淫梢を横目に見ながら邪水晶は、邪謀の元へゆっくりと歩みを進める。

「ひぃぃぃっ!」
 淫梢から時間を与えられたのにも拘わらず邪謀は腰を抜かし、壁際にもたれ掛かるのが精一杯であった。
 ジョオォッ・・・
 あまつさえ、恐怖から失禁すらしている。
『醜い』
 かつて己を改造した者の惨めな姿に、邪水晶は却って冷徹な気持ちになった。
 もうこの男の姿など見ていたくはない。

「・・・死になさい」
 そう小太刀を邪謀に振り下ろした時、
 ザクッ
 目測の距離とは異なる場所に、肉を切り裂く手応えを感じた。
 反射的に邪水晶は突き刺した小太刀を、
 ザシュッ
 より深くへと突き込む。
「ぐぶっ!」
「ギェェッッ!」
 それとともにくぐもった声と、甲高い断末魔があがる。
 見れば、邪水晶の小太刀は、淫梢の背を貫き、邪謀の急所を捉えていた。
「ご主人、様・・・」
 淫梢は最後の力を振り絞り、主の骸を優しく包み込んだかと思うとそのまま静かに、目を閉じたのだった。



 ズッ
 邪水晶は淫梢の背に刺さった小太刀を、ゆっくりと引き抜く。
 そして、邪謀とそれに折り重なるように倒れる淫梢を、じっと見下ろした。
 淫梢の表情はどことなく、安らかなものに見える。
「・・・」
 バッ
 邪水晶は、床に落ちた邪謀のマントを掴むと、二人の骸にそれを被せた。

 邪水晶は、その場から立ち上がると、ゆっくりと周囲を見回した。
 拷問具に手術器具、そして得体の知れない数多のサンプル・・・
 かつてはこの身を切り裂き、人外へと変えたこれらに、邪水晶はある種の感傷を抱く。
 −壮絶な拷問とも言うべき、調教の日々。
 遠い過去、と言うには鮮やか過ぎる、その日々の記憶がフラッシュ・バックするが、
「・・・もう、過去のことよ・・・」
 邪水晶はそう自分に言い聞かせるように呟くと、僅かに頭を振り、その感傷を振り払った。
 そして『淫魔』の顔に戻ると、この邪謀の遺産の使途を思案し始めたのだった。
 だが彼女の思索は、
「邪水晶様、誠に申し訳ありませんっ!邪謀に操られていたとは言え、主に手をかけるなど・・・」
 淫亀のその声に遮られた。 
 見れば淫亀は、額を床に擦りつけ、平伏している。
 彼女には悪いが、その姿に滑稽さを感じ、邪水晶は思わず、
「ふふふっ・・・」
 そう、吹き出してしまった。

「邪水晶様?」
 予想外の反応に、淫亀は平伏しながらも頭のみ上げ、訝しげな顔で主の顔を伺い見る。
「ふふふ、ごめんなさい、貴女が余りに必死なものだから・・・いいのよ。結果として邪謀を排除できたし、この設備も手に入れることができた・・・寧ろお手 柄、と言っても良い程だわ」
 邪水晶はそう言いながら平伏する淫亀の前にしゃがみこむと、優しく彼女の頬を撫でた。
「邪水晶様・・・」
 淫亀はそれを頬を赤らめながら受け容れる。
 その姿を見ていた邪水晶に、一つの考えが浮かんだ。

「・・・ふふふ、貴女の顔を見ていたら、良い策を思いついたわ」
 そう言いながら邪水晶は立ち上がり、再び室内を見回す。
 どこか楽しげなその表情は、悪戯を思いついた、その様にも見える。
「良い策、で御座いますか?」
「ええ、この設備を維持・管理し、研究を発展させるためには、優秀な人材が要るわね?」
「はい、確かに・・・しかし、そのような人材となると・・・」
 淫亀は主の言葉を反芻し考えるが、ここで骸となった邪謀以外に、邪界でそのような人材は思いつくことができない。
 無骨者か、力ばかりの思慮の無い者であれば、いくらでも挙げることができるのだが・・・
 淫亀は困惑した表情を主に向ける。

 その淫亀の反応を、楽しそうに見つめながら邪水晶は、
「ふふふ、優秀な人材なら、貴女の手近なところに居る、ということよ・・・ふふふ」
 そう言うと、邪謀の居室を後にした。

第8話 逆臣 おわり

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