四神戦隊メイデン・フォース

最終話_TRUE END


 バチッ、バチッ
「・・・」
 燃え爆ぜる護摩木の前で瑠璃は、目を閉じつつ、
 ギュッ
 胸元の勾玉を、右手で胸へ押し付ける様に握り締める。
 すると、
 ポゥッ
 彼女を励ますかの如く勾玉は、柔らかな温もりを掌越しに伝えてきた。
 それは微かにではあるが、彼女の不安を和らげる。

 翡翠との邂逅以降、瑠璃は、本家の戦力強化を図っていた。
 姉が『敵』となった以上全力で、それも戦力を集中して立ち向かうしかない-
 それが、彼女を最も知る、瑠璃の下した判断であった。
 瑠璃は龍造の力添えを得、彼女の『疑念』の対象であるメイデン・フォース本部に秘匿したうえで、『新装備』の配備まで行っている。

 しかし、対邪界戦の中核であるメイデン・フォース本部の協力を得られないとなると、『新装備』の導入には限界があった。
 実際、『新装備』は、ただ一つ−瑠璃の許にあるだけだ。
 それでも、徒手空拳で『敵』に臨むよりは、遙かにマシだろう。

 瑠璃は、
「姉様・・・」
 そう呟くと、苦渋に満ちた表情を浮かべ、
 ギュッ
 勾玉を一層強く握り締めた。
 
 神凪の当主として、この家を守る責務が自分にはある。
 しかし、彼女が立ち向かうべき『敵』は、最愛の『姉』なのだ。
 何を優先すべきかは十二分に理解している積もりだが、『情』は理性のみで消し去りうるものではない。

「姉様・・・」
 瑠璃は再びそう呟くと、今度は決意に満ちた表情で護摩壇を見つめ直す。
 『救うこと』と『倒すこと』が同義であるならば、それに全てを注力すべきなのだ。
 これはあの日、姉に守られその身を犠牲にさせた事への『贖罪』でもある。 

 その決意に呼応するかの如く、
 ゴォッ、バチバチバチィッ!
 護摩壇の炎が激しく燃え上がった。

 そして同時に、
「・・・」
 未だ微かにではあるが、確かな闇の気配を感じる。
 瑠璃は直感的に、『その時』が来た、と断じた。

 それを裏付けるように、
 ドタドタドタッ
 廊下を慌ただしい足音が響く。

 瑠璃は音源が近付くのを聞き流しながら、そっと目を閉じた。
 そして、いつしか汗ばんだ勾玉を軽く握り返す。
『姉様・・・今度は私が・・・』
 そう念じると、勾玉は淡い光を放ち始めた。

 その気配を掌の中に感じた刹那、
 ガラッ
「・・・瑠璃様っ!」
 焦燥感に満ちた声とともに、廊下側の障子が勢い良く開く。

 正に『気色を失った』摩耶−瑠璃付きの筆頭巫女−を前に瑠璃は、
「何事ですか、摩耶?」
 自分でも驚くほど冷静に、そう言葉を返した。

 主の冷静さに摩耶は、
「ふうっ・・・」
 一度息をつき、若干落ち着きを取り戻しながらも、
「叛乱です・・・外宮で叛乱が起きています」
 今度は緊張で頬を紅潮させながらそう、大事を伝える。

 しかし瑠璃はその深刻な事態にも、
「・・・わかりました」
 言葉一つのみ吐くと、ゆっくりと腰を上げ、
「・・・摩耶、まずは落ち着きましょう・・・ここからは貴女が頼りなのです。良いですね?」
 そう、微笑を浮かべながら摩耶の両肩に手を置いた。



 −数分前

「何度、同じ事を言わせたらわかるのっ!」
 藤木茜(ふじきあかね)は、正に怒髪天を衝く、といった体で眼前の少女に怒声を浴びせる。
「・・・ひっ!」
 怒声を浴びた少女、初芝鈴は、短い悲鳴をあげると、猫の様に背を丸めた。

 その様子に仲間の巫女達は、どちらへともつかぬ苦笑を浮かべる。
 些かヒステリーの気のある茜は、この様な怒声を上げることが多く、部下からは些か、敬遠され気味の人物であった。
 もし怒声の対象が鈴以外の人間であれば、同僚達から多少なりとも同情を得ることができたのであろうが、ミスが常態化している彼女では苦笑を得ることが精々である。
 敢えて言えば、彼女の監督役である出水初音には、その同情が注がれてはいたが−

 その同情に応えるかの如く、茜は、
「出水さん、貴女も貴女でしょう?初芝さんに、どういう指導をしているのかしらっ!?」
 鈴の横に直立不動で立つ、初音へ矛先を向けた。

 個人としては優秀な部類に入る初音とは言え、彼女の優秀さを上回る鈴のドジ振りは、『指導』の範疇を超えてしまっている−
 そのことは衆目の一致することではあるが、怒声の対象としても『力不足』である鈴の『不足分』は必然的に、初音へと向かってしまうのだ。

 そんな不条理な『怒り』にも、生真面目な初音は、
「申し訳ありません・・・私の指導不足です・・・」
 そう答え、頭を下げる。

 その所作は茜の激情に、冷や水を浴びせる効果を持っている。
 如何に冷静さを失っている茜とは雖も『理性』の内では、自分の行いが不条理だということは十分理解しているのだ。
 こうなれば、鈴にもう数言罵声を浴びせて終わり−
 その場に居る当事者も観衆もそう思った刹那、
 ビクンッ
 鈴と初音が、普段と異なる動きを見せた。
 そして二人は、ピクリとも動かなくなる。
 
 茜は、激情と疑問を同時に解決させるべく、
「ちょっと、初芝さん、聞いているの・・・」
 そう言って、鈴の肩に手を掛けた。

 すると、 
 ズブッ
 胸元に、焼け箸を当てられたかの如き鋭い痛覚を得る。
「え゛っ・・・?」
 茜は、反射的に、その感覚の元へ視線を滑らせ、己が胸の中心に突き刺さっているものを信じられぬ、といった表情で見つめた。

 だが、灼熱の様な熱に胸を冒されながらも鈴の衣を掴みつつ、
「・・・何を、ボサッとして、いる、の・・・早く・・・この娘を・・・」
 鈴の肩越しに鈴への対処を命じようとする。

 その間にも、
 ジワァッ
 純白の巫女衣装は見る間に袴よりも紅い、深紅へと色を変えていった。

「・・・」
 鈴はそんな茜を感情のない目で見つめると、
 ズッ
 突き立てた刃で更に茜の肉を抉る。

「ひぎぁぁっ!?」
 茜の壮絶な悲鳴に漸く、
「・・・っ!!」
 副長格の新藤小夏(しんどうこなつ)が動き出そうとした。

 しかしそれは、
 ザッ・・・ヒュンッ
 初音の鋭い剣筋に防がれる。

 辛うじて、
 ザッ
「・・・っ!・・・」
 それを避けた小夏は、
 コクリ
 胸を深紅に塗らす茜が頷くの見ると、
 ギリッ
 歯の根を噛み締めつつも絞り出す様に、
「・・・総員退避っ!・・・『内宮』まで全力で駆けなさい・・・早くっ!!」
 他の巫女へそう命じた。

 半ば恐慌をきたしていた巫女達も、その叫び声を聞き、
「・・・っ!!」
 我に返ると、
 ザザッ
 一目散に駆け出す。

 小夏は、巫女達の気配が減ってゆくのを感じながらも、茜から視線を外せずにいた。
「・・・」
 衣が不吉な色を増すのに反比例して、茜の生気は失われてゆく。
 彼女の顔色は既に、彼女へ兇刃を突き立てる女達と同じものだ。

 その最中、
 フルッ
 茜が首を小さく振った。
 そしてその顔には、『渾身』の力で浮かべたであろう、痛々しい『微笑』が浮かんでいる。
 小夏はその表情に込められた意図を察し、
「・・・くっ!・・・」
 己も他の巫女達と同様に、本宮へと駆けだした。

「・・・」
 その後ろ姿を、ぼやけ始めた視界に捕らえながら茜は、心からの笑みを浮かべたまま、永久に瞳を閉じる。



 「・・・α1、ポイント1を占拠。各隊は状況を送れ」
 琴美は不機嫌な表情を浮かべながらそう、インカム越しに指示を送る。
 指示と同時に、次々と報告が返ってくるがそれは彼女の表情と同じく、芳しいものではなかった。

 ドールズに与えられた第1の作戦目標−敵の攪乱−はそれなりの成果を収めているものの、第2の目標−巫女の捕縛−は、成果、と呼べるほどの実を得ていない。
 『傀儡』とした巫女達により、詰め所の襲撃、占拠には成功したが、大半の巫女は内宮に逃亡し、不幸にも逃げ遅れた者を辛うじて捕縛することが精々である。

「・・・」
 琴美は、小刀を突き立てられ、上半身を鮮血に染めて横たわる巫女の姿を見ながら、思慮を巡した。
 持ち場を維持できない、そう判断された場合は躊躇わず撤退し、本隊と合流する−一見、拠点を奪われるその策は、『戦闘』の素人が採ること自体、難しい。
 だが、相手の力量が上回る、と冷静に判断できるのであれば、戦力の各個撃破を避ける意味で有意な選択肢なのだ。
 恐らくこの巫女達には上層部から何かしら、戦陣訓の様なものが下されていたのだろう。

 それを愚直に守り、己の身を挺して部下を救った巫女に、『戦士』としての誇りを感じた琴美は、
 スッ
 静かに腰を折ると、
 ズッ、ズブッ
 茜の胸に突き立てられたままの小刀を抜き、彼女の腕を軽く組ませた。
 そして、その傍らに『立ち尽くす』二人の巫女に、
「・・・ご苦労」
 そう声を掛ける。

 しかし、
「・・・」
 傀儡に過ぎない彼女達から、言葉など返ってくるはずもない。
 
「・・・チッ」
 それに琴美は思わず、舌打ちする。
 作戦成功のためとはいえ、彼我の『姿勢』の差に、彼女の『戦士としてのプライド』はいたく傷つけられていた。
 だが個たる『戦士』である以前に彼女は、『指揮官』なのである。
 そのことを思い返した琴美は、
「・・・各隊は『兎』を確保しつつ前進せよ。突出しないように連携を忘れるな」
 そうインカムに告げると、己を殺す様に再び、闇の中へ姿を消した。
 


 ゴオオォッ
 外宮が見渡せる場所までやって来た瑠璃が目にしたのは、外宮の深山を照らす、紅蓮の炎だった。
 煌煌と闇夜を照らす紅の色に瞳を染めながら瑠璃は、
 ギュッ
 と己の手に力を込める。

 護摩壇を離れる時に固めた決意ではあるが、その裏打ちがこの様な形で眼前に突きつけられてはさしものの瑠璃も、緊張を禁じ得ない。
 しかし、
 ギュッ
 胸元の勾玉を右手で握り締めると、
「摩耶・・・上級巫女を2,3人連れて、外宮の指揮を建て直してください・・・一刻も早く、皆の避難を完了させるのです・・・そうですね、供は葵と楓が良いでしょう・・・私はここに残って全体の指揮を執ります」
 毅然とした表情でそう、摩耶に命じた。

 眼前で広がる光景に少なからず動揺していた摩耶は、瑠璃のその姿勢に勇気づけられ、
「わかりました・・・葉月っ!」
 傍らに控えていた幼少の巫女に声を掛ける。

 摩耶に名を呼ばれた蔵前葉月(くらまえはづき)は、
「はいっ、摩耶様!」
 年相応の快活さで答え、瑠璃達の前で片膝をついた。
 彼女は幼少ながらも才に恵まれ、瑠璃の近習として仕えている。

 そんな葉月の初々しい懸命さに、摩耶はふっと頬を緩めたが、再び表情を引き締めると、
「聞いていましたね、葉月・・・私は外宮に向かいます・・・だから貴女が私に代わって、瑠璃様のお世話をするのです・・・良いですね?」
 そう、葉月へ任を与えた。

 それに葉月は、
「はい、わかりましたっ!・・・瑠璃様のお世話は、私にお任せくださいっ!」
 体一杯の意気込みで答える。

 その余りに健気な姿に、
「「くすっ・・・」」
 瑠璃と摩耶は思わず笑みを零してしまう。
 それとともに、凄惨とも言うべき光景を前に緊張していた彼女達の心も幾ばくか、解きほぐされた。
 これも『近習』として優れた才、と言えるものかもしれない。

 摩耶は、微笑を浮かべ葉月の頭に軽く手を置くと、
「葉月、確かに頼みましたよ・・・それでは、瑠璃様・・・」
 踵を返しそのまま、外宮へ歩を向ける。

 その背中に瑠璃が、
「摩耶・・・葉月の役目を解くのは貴女しか居ないのですよ・・・解っていますね?」
 そう言の葉を投げかけると摩耶は、
「はい・・・心得ております・・・葉月には、まだまだ教える事もありますから」
 葉月の『姉』の顔でそう答えると振り返らず、戦場へと赴いた。



 外宮に辿り着いた摩耶達を迎えたのは、
「きゃぁぁっ!?」
 逃げ惑う巫女達の群れであった。

 摩耶は、
「待ちなさい!・・・貴女の所属は?・・・指揮官はどうしたのですかっ?」
 近くを走っていた巫女を捕まえると、矢継ぎ早に尋ね、肩を揺らす。

 その巫女は切れ切れになりそうな声音をどうにか纏め、
「11番詰め所です・・・所長は、残念ながら・・・」
 辛うじてそう答えた。

「そうですか・・・」
 11番詰め所の所長は、リーダー・シップのある人物だった。
 それだけに、失われてしまうと却って、組織のダメージが大きかったのだろう。

 摩耶は即座に、
「・・・桐絵、彼女達を内宮へ誘導して・・・」
 己の近習である三縄桐絵(みなわきりえ)にそう命じた後、次の指示を別に巫女に下そうとした。その時−
「・・・っ、うぅっ!?」
 針を刺す様な痛みが、彼女の頭に走る。

 そして、それと同時に、
 ギッ、ギィッ
 重く、不吉な音色が神凪の山に響き渡った。

「・・・!」
 思わず摩耶は、その音源に視線を滑らす。
 いつの間にか傍らにやって来ていた葵と楓も、摩耶と同じ方角を見つめていた。



−同時刻

 キィンッ
「・・・っ痛ぅっ!」
 護摩壇に正対していた瑠璃の肉体に、雷撃の如き痛みが走る。
 そして、
 ゴォオッ
 護摩壇の炎が、一際激しく揺らいだ。

 それらの原因は、一つしか無い。
「姉様・・・」
 瑠璃は痛む体に鞭を打ちながらも、
 ヒュッ・・・バチッ、バチッ
 護摩木を護摩壇にくべ、綻び掛けた術をどうにか支えようと、
「・・・・・」
 詞を練り、
 キインッ
 己の持つ神気を高めてゆく。

 ツゥッ
 瑠璃の背を、一筋の汗が流れ落ちていった。
 それを合図にしたかの如く、
 ブワッ
 珠のような汗が、全身に浮かび忽ちのうちに、
 ジワァッ
 巫女装束はその色を濃く染めてゆく。 

 術と術の鬩ぎ合いは、術者に大きな負担を与える。
 それも他方の術者が邪水晶となれば、その負荷は比類ない。
 その証拠に、
「くうっ!・・・・」
 詞の一つ一つが、瑠璃の精神力と体力を削ってゆく。
 
 やがて、根負けしたかの様に、
 ググゥッ
 瑠璃の霊圧が目立って、押され始めた。
 その劣勢を瑠璃は、
「うくぅっ・・・」
 歯を食いしばり、強靱な精神力のみで弾き返そうとする。

 しかし、
 ズッ、ズズッ
 既に魔王に等しき魔力を得、堕落した四神巫女の力をも利用した邪水晶の術に瑠璃独りの力で抗うことは、到底適うものではなかった。

「・・・ダメぇっ!」
 瑠璃の叫びも虚しく、
  バキィィンッ!
 護摩壇は燃え崩れ落ち、
 ズゥンンッ!
 地響きが大地を揺るがす。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」
 『激闘』に、息を切らす瑠璃の背には、
 ゾワリ
 『敗北』を身をもって感じさせる、闇の気が走るのだった。



 不気味な音源の方角を見つめていた摩耶達の足下を、
 ズゥンンッ!
「・・・!!」
 強い衝撃が襲う。
 そしてそれと同時に、
 ギッ・・・ガギィイィィッ!
 『音源』は『光源』となり、その『大きさ』を増していった。

 それとともに、
 ピカァッ
 最早、光の『扉』となった『光源』から、
 コオォォォッ
 瘴気が猛烈な勢いで溢れ出す。

 摩耶は、本能的に、
 ギュッ
 手にした長刀を握り締めると、光の扉に相対しながら振り返らず、
「・・・皆、下がるのです!!」
 そう叫んだ。

 多くの巫女達が下がる中、葵と楓は駆け寄り、
 タタッ・・・チャッ
 無言のまま摩耶の両脇を固める。

 その彼女達の眼前に、
 スゥッ
 一つの『人影』が現れた。
 その『人影』は、
「・・・思ったより抵抗されたわね・・・仕方ない、これで良しとするか・・・」
 どこか不機嫌そうな声でそう呟くと、髪をかき上げ、摩耶に向き直る。

 その姿を見た摩耶は、
「翡翠・・・様?」
 呻くようにそう、言葉を吐いた。

 邪水晶は、嘗ての従者の姿に、獣の如き虹彩を細めると、
「うふふ、摩耶、久し振りね・・・私を、出迎えに来てくれたのかしら?・・・ふふっ、嬉しいわ・・・」
 そう摩耶に微笑みかける。

 その表情は『翡翠』の面影を色濃く残すが、
「翡翠様・・・」
 フオォッ
 沸き上がる瘴気と、
「うふふ・・・」
 淫靡な衣装に身を包み、放恣な肉体を曝す存在そのものが、『翡翠』であることを雄弁に否定した。

 チャキッ
 『敵』を認識した摩耶は長刀を構え直し、
「・・・翡翠様・・・この騒乱は、貴女の所為なのですね・・・神凪の『敵』は・・・成敗せねばなりません・・・お覚悟っ!!」
 そう吠え、
 タタタッ・・・ダンッ、ヒュンッ
 駆け出すと、まるで陸上選手の如きステップを踏んで邪水晶に飛び掛かる。

 だが乾坤一擲の一撃は、
 キィィンッ!
 光の中から現れた新たな影どもに弾かれてしまった。

 ズズッ
「・・・っ!!」
 摩耶は後方に押し戻されながらも、そのしなやかな肉体のバネで、どうにか体勢を整える。
 そして左手をつき、斜に長刀を構えながら『敵』の姿を見るべく、前方を睥睨した。
 だが、彼女が視界に収めたのは、
「くっ・・・貴女達っ!!」 
 急速に高めた殺気とは相反すべき者達−

「んふぅ・・・摩耶姉ぇ、どうしたのさ、そんなに驚いて・・・みんな可愛い妹分じゃないか・・・」
 そう軽口を叩く朱美の視線は、摩耶の長刀から外れることはなく、彼女自身からは殺気と瘴気がユラリ、と陽炎の様に溢れ出していた。

 朱美の言葉通り四神の巫女達は摩耶にとって、『妹』にも等しき存在である。
 巫女としての儀礼や立ち振る舞い、そして武術の多くも、摩耶が彼女達に教え込んできた。
 だが、最も貞淑であった筈の蒼乃が、
「摩耶姉様・・・いいでしょう、この体?・・・うふふ、摩耶姉様も早く、こちら側へいらっしゃいませ・・・んふ・・・」
 そう、淫魔と化した肉体を恥ずかしげも無く曝し、醜悪な肉棒を扱き出すに至っては既に、彼女達の有り様そのものが、『敵』の側へ墜ちてしまったことを知覚せざるを得ない。
  
 摩耶は、
「おのれ・・・」
 ギッ
 強く奥歯を噛み締めると、
 ジャキッ
 長刀を『妹達』に構え直す。

 それに倣うように、
 チャキッ
 葵と楓も長刀の穂先を構え、摩耶と居並んだ。

 そんな彼女達を、
「あら、お姉様達、私達と張り合おうというのですか?・・・無駄ですよ、貴女達程度の力では・・・それよりも長刀を捨て、私達の肉奴隷になってくださいな・・・うふふっ」 
 雪は嘲り笑い、挑発する。

 摩耶は、
「抜かせ、雛鳥どもが・・・」
 そう言の葉を吐くと、
 ギリィッ
 長刀の柄を一層強く握り締め、穂先から刺す様な殺気を放ち始めた。
 
 その殺気は、朱美達に向けられながらも、その刃は更に先−彼女達を斯様な存在に貶めたもの−邪淫皇へ向いている。
 彼女達を『救う』には、ここで打ち倒し、瑠璃による『浄化』を得る必要があるのだ。
 そのためには数瞬であっても、時を稼がねばならない。

 そんな摩耶の覚悟に邪水晶は、
「うふふ、良い目ね摩耶・・・でも、私は先に行かせてもらうわ」
 そう微笑を浮かべると、
 スッ
 本殿に向かって歩みを進め始めた。

「・・・させるかっ!」
 摩耶はそう叫ぶと、
 タッ
 邪水晶に長刀を振り下ろすべく、一歩を踏み出そうとする。

 だが、
 キンッ
 短い金属音とともにその試みは、弾かれてしまった。

「・・・摩耶さん、貴女の相手は我々ですよ・・・分というものを弁えてください・・・くくっ、尤も、私達相手でも貴女に『分』があるとは思いませんが・・・」
 沙夜子はそう言いながら、
 ビクッ、ビクンッ
 醜き肉塊が脈打つ魔の小刀を交差させつつ、摩耶達との間合いを詰める。

「くそっ・・・」
 摩耶はそう悪態をつきつつも、本殿の方角に目を遣るが、既に邪水晶の姿はない。
 摩耶は猶も邪水晶の行方を追おうとするが、
 ブワッ
 猛烈な瘴気の波が、彼女の注意を淫魔達に引き戻させた。

「・・・余所見はいけないよ、摩耶姉ぇ・・・そんなに私達の奴隷になりたいというならなら別だけどねぇ・・・」
 朱美は摩耶の意識に割り込むかの様に、そう言いながら、本殿と摩耶の間に立つ。

「・・・」
 邪水晶を止めることができなかった以上、この場で果たすべき最善を尽くさねばなるまい。
 スッ
 摩耶は一つ息を吸い、覚悟を丹田に沈めると、
 ズザッ
 仁王立ちとなり、
「・・・良いでしょう・・・貴女達の『師』としてもう一度、その身に教えを授けましょう」
 そう宣言する。

 そして懐に手を伸ばすと、後ろ手に、
 ヒュンッ
 護符を光の扉へ飛ばした。

「・・・っ!!」
 それは朱美達が動き出す前に、
 キィンッ
 扉へ貼り付き、強力な神力で扉を封印する。

 そして摩耶は、
 ニッ
 不敵な笑みを浮かべ、
「・・・ふふっ、相変わらず詰めが甘いわね・・・これで邪魔者は暫く闖入できない筈・・・さあ、貴女達はどちらを守るのかしら?」
 そう朱美達を挑発するのだった。



 バサッ
「きゃぁぁっ!?」
「うふふ・・・」
 巫女どもが慌てふためく姿を眼下に収めながら邪水晶は悠然と、内宮の上空を飛翔する。
 しかし、彼女の翼と肌は、
 ジュッ
 本殿に近付く程に、焦げ臭い芳香を放った。

 だが邪水晶はそれにも表情を変えず、
「・・・ふふっ、結界を完全に破壊することはできなかったようね・・・それに少しずつ、結界の力が復活している・・・流石ね瑠璃・・・うふふ、楽しみだわ」
 それどころか笑みを浮かべ、『強敵』との闘いに心を躍らせる。

 その昂ぶりを顕すかの様に、
 ギチッ
 邪水晶の逸物は鋼の如く屹立していた。



 キィンッ、キィンッ
 甲高い金属音とともに、
「・・・ふぅっ!」
 若い命の息吹が交錯し、
 ビュッ
 それを象徴する朱の華が、互いの体に散った。

「・・・中々やるじゃないの・・・師としては・・・嬉しい限りだわっ!」
 ズザッ
 『弟子達』から間合いを取った摩耶はそう言って、不敵な笑みを浮かべる。

 だが、朱美達に多少の手傷は与えたとは言え、所々千切れた巫女装束と、
「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」
 小刻みに揺れる肩は、彼女が決して有利な立場に無いことを示していた。

 朱美は摩耶の言葉に、
「師として嬉しい?・・・ははっ、笑わせてくれるじゃないか、摩耶姉ぇ・・・私達に太刀を浴びせられたことは『褒めてあげる』けどねぇ・・・」
 そう傲笑すると、魔剣を構えながら摩耶に迫る。

「くっ・・・!!」
 摩耶は葵と楓に背を預け、更に間合いを取ろうと後退した。
 しかしそれは、葵と楓も同じこと。
 ギュッ
 押しくら饅頭の要領で直ぐに、彼女達の行き場は無くなってしまう。

 ジワリ
 互いの焦燥が汗となって、気色の悪さを背に伝えてきた。
 摩耶は、
「・・・葵、楓・・・」
 そう名のみ呼ぶと、
 グッ
 長刀を握り締め再び、
「ふぅっ・・・」
 丹田に気を込める。

 それを切欠に今度は、
 クッ
 2つの張り詰めた気が、彼女の背越しに感じられた。

 それは、
 『まだ戦える』
 そう感じるだけの余裕を、摩耶に蘇らせる。
 
 摩耶が、
「・・・摩耶姉ぇ・・・貴女のお褒めに預かるほど、私達は落ちぶれちゃいないよ・・・さあっ、いざ勝負っ!!」
 そう叫ぶと3人の巫女は、
 ダダッ
 残った力を振り絞り、嚆矢の如く面前の『敵』へと殺到した。



「・・・葉月、これを内宮正門の警備隊長に渡してください・・・それと呉々も、門外に打って出ないよう伝えてください・・・わかりましたね?」
 瑠璃はそう言いながら細かい指示を記したメモを、葉月に渡す。

 それに葉月は、
「はいっ、瑠璃様!」
 全身で肯定の意を表すと、メモを拝しながら受け取った。

 葉月は摩耶が目を掛けるだけあって、幼いながらも『役立つ』働きをしている。
「ふふっ、葉月は本当に元気が良いですね・・・」
 瑠璃はそう言うと、慈母の様に穏やかな顔で、葉月の頭を撫でた。
 殺伐とした空気の中こうして、穏やかな気持ちになれることがどれ程、瑠璃を助けているかわからない。
 それは彼女の『働き』以上の役得を瑠璃に与えていた。

 だが瑠璃の心中など与り知らぬ葉月は、
「・・・瑠理様」
 年相応にはにかみ、頬を染めながらただ、優しい愛撫に身を委ねる。

 瑠璃はそんな葉月を、
 ギュッ
 抱きしめると、彼女の顔に己の顔を寄せ、
「・・・それではお願いしますよ、葉月・・・気をつけて」
 そう、送り出すと葉月は、
「はい、瑠理様・・・行って参りますっ!」
 満面の笑みで応え、瑠璃の前を後にした。



 バチッ、バチンッ
「・・・」
 瑠璃は護摩壇に護摩木をくべながら、祝詞をあげる。
 彼女の周囲には神気が満ち、護摩壇の炎も再び、力強く燃え上がり始めていた。

 内宮の更に深部、この本殿の周囲には強固な結界が幾重にも張ってある。
 邪水晶の攻撃によって弱体化したとは言え、『魔』の化身である彼女が容易くここへ侵入できる筈も無い。
 今はただ、摩耶達の奮戦を信じ、神凪本家の結界を再生することが己の務め−
 瑠璃はそう己に課した行を愚直なまでにひたすら、繰り返していた。

 しかし、
 バチッ
 護摩木をくべた瞬間、
 ゾワリ
 彼女の背を、悪寒にも近い感覚が走る。

「・・・これはっ!?」
 その有り得べきものではない感覚に瑠璃は、護摩壇の前を離れ、
 ガラッ
 廊下へと繫がる障子を開けた。

 トンッ、トンッ・・・
 彼女の『感覚』の源は、廊下の奥から近付いてくる。
 そしてその『源』が近付くにつれ、
 フワッ
 微かに吹いた風が、
「・・・いやぁ・・・」
 掠れるような小さな声と、濃密な『臭い』を運んできた。

 やがて月明かりに照らされながら現れた『源』は、
「姉様・・・葉月っ!!」
 瑠璃を驚愕させる。

 肉の鎧の如く、触手で邪水晶に固定された葉月のアナルには、
 グチュリ
 邪水晶の剛直が深々と刺さり、
「んっ、はぁっ・・・」
 葉月の幼い口から、艶やかな音色を零させている。
 そしてその全身には簡易な呪紋が施され、妖しげな光を放っていた。

 恐らく葉月を法術の『回路』として『利用』したのだろう。
 葉月の巫女として優秀な資質が、ここでは仇になってしまったのだ。

 葉月は、
「・・・瑠理様ぁ・・・ごめんなさぁい・・・私ぃ・・・もうだめぇ・・・」
 そう謝罪の言葉を漏らすと、
 ツゥ
 一筋の涙を流す。

 それに瑠璃は、
「なんてことを・・・」
 唇を噛むと、肩を震わせながら俯いた。

 邪水晶は、
「うふふ、瑠璃・・・随分と可愛いペットを飼っているのね・・・肉奴隷として私に譲ってくれないかしら?・・・葉月も、そのほうが良いでしょう?」
 そう囁くと、
 グチュッ、グチュッ
 腰を揺り動かし、葉月の幼く狭い肉孔を責める。

「・・・いっ、はぁぁっ!!」
 それにあわせて掻き出す様に、
 ドロリ
 葉月の肛内からは濃厚な蜜が溢れ出した。

 邪水晶は葉月の耳に己の顔を寄せながら、更に下へと滑らせると、
「ふふっ、本当に可愛い娘ね・・・ここも、食べちゃいたいくらいよ・・・」
 年齢不相応に痼り、自身も『女』であることを主張する胸の頂を、
 ガプッ
 甘噛みする。

 その小さな刺激は、
「い・・・きゃぁぁあっ!!」
 未成熟な肉体の許容量を超過させるのに、十分な引き金となった。

 プシャァァッ!
 悦楽の非常弁であるかの如く吹き出した黄金水は、
 ビチャッ、ビチャッ
 強烈なアンモニア臭を撒き散らしながら、神聖な本殿の廊下を汚してゆく。

 漸く肛悦という名の責め苦から解放された葉月は、
「ひ、あぁ・・・」
 恍惚の表情で放尿の悦びに酔いしれた。

 ジョッ、ジョロッ
 最後の一滴を零した葉月は、命そのものを全て零し落としたかの様に、
 カクリ
 と意識を失う。

 その葉月に邪水晶は、
「うふふ・・・お休みなさい・・・」
 チュッ
 軽くキスをすると、
 ヌチュッ
 己の肉槍から葉月を引き抜き、その小さな体を、板張りの床へ静かに横たえた。

 瑠璃は、苦渋の表情で彼女の姿を見つめながらも、
「葉月・・・」
 その小さな胸が緩やかに上下するのを認め、僅かに安堵する。
 そして、緩んだ心を引き締める様に、
「はっ・・・」
 短く息を吐くと、凜とした表情で『姉』に向き直った。

 そんな『妹』に邪水晶は、
「・・・ふふっ、瑠璃、久し振りね・・・」
 相反する穏やかな微笑を浮かべる。

 『妹』はそれにも警戒感を緩めずに、
「姉様・・・よもや、世間話をするために、ここまでいらした訳ではありませんよね?・・・」
 『姉』へそう問い掛けるがそこには、予想され得る答に反して、微かな期待が込められていた。

 しかし邪水晶は、
「うふふ、解っているのでしょう?・・・神凪を滅ぼし、お前を手に入れるためにここへ来たことを・・・瑠璃、私に跪きなさい・・・そうすれば他の巫女も、肉奴隷にするだけで許してあげるわ・・・ふふっ、いい加減、『神凪』という悪夢から覚めてはどうかしら?」
 『妹』の胸中を見透かすように、『期待』そのものを打ち砕く。
 
 ギュッ
 瑠璃は、強く掌を握り締め、失望の念を己の意思でねじ伏せると、
「戯れ言を・・・姉様こそ、目を覚ましてください・・・神凪の血族として、『魔』を祓うは私達の使命・・・その様なお姿に成り果てたとて、その使命からは逃れられないのですよ・・・」
 そう、『姉』を諭した。

 邪水晶は、
「・・・ふふっ、お互いの『想い』は通じないようね、瑠璃・・・ならば、くだらないお喋りは止めましょう・・・」
 そう宣告すると、
 ヒュンッ・・・ピシィッ
  腰に佩く鞭を撓らせ、
「・・・さあ、始めましょうか・・・殺し合いを」
 そう微笑むのだった。



 ガキィンッ
「くぅっ・・・」
 朱美の重い斬撃で押された摩耶は、
 ズッ・・・タタッ
 蹈鞴を踏んで体勢を整え直す。
 クッ
 だが、半歩程後退したその足下には確実に、疲労の色が滲んでいた。

 それに朱美は、
「ふふっ、もう疲れたのかい、摩耶姉ぇ?・・・でも流石だねぇ・・・私達をこれだけ傷付けらるのは、邪水晶様を置いてないよ・・・尤も、致命傷ではないけどねぇ・・・くくっ!」
 そう、見下した態度で摩耶を挑発した。

「くっ・・・!」
 摩耶は侮蔑の言葉に、唇を噛む。
 しかし朱美の発言に、誤りは無い。
 摩耶達は、奴隷戦士のコスチュームの所々に刀傷を与えてはいるものの、
 シュゥゥッ
 淫魔として改造・覚醒した彼女達の肉体は文字通り、『人外』の速度で再生する。
 それに、彼女達の淫魔としての能力は摩耶達の技量をもってしても、機を数多く奪える程、低いものではない。 
 要するに、もし彼女達を倒そうとするのならば一撃で、『致命傷』を与える必要があるのだ。

「・・・摩耶、そろそろ腹を決めたらどうかしら?」
 そう不敵な笑みを浮かべながら摩耶に囁く葵の息も、
「・・・はぁっ、はぁっ・・・」
 上がり始めている。

「・・・そうよ、摩耶、いい加減まどろっこしいのには飽きたわ・・・ちゃっ、ちゃっ、と片付けて、瑠理様の元へいきましょう」
 更にそう茶化す楓の表情にも、憔悴の影が差し始めていた。

 『疲弊』の魔の手はもう、自分達の足首を掴んでいる−
 感覚が曖昧になり始めた足下を見つめながら摩耶は、決断を迫られていた。

 その時−
 ギュッ、ギュッ
 二つの暖かい感触が、摩耶の両手を覆う。
 両手伝いに、その感触に負けぬ熱い意思が、
 シュゥゥ
 摩耶の中へ、神力の奔流となって流れ込んだ。

 それに摩耶は、
 ギュッ
 言葉よりも、明確なサインで葵と楓の『想い』に返答し、
「すぅっ・・・」
 息を深く吸い込む。

 キィィンッ
 3人の巫女は、互いの手を繋いだまま、己の持つ神力を極限まで高めてゆく。
 その高まりに呼応する様に、
 コォォッ
 燐光が彼女達を包み、
 ブォッ
 破邪の『神圧』が放たれ始めた。
 
 中魔程度であれば一瞬で祓われてしまう『神圧』にも朱美は、
 ジリッ
 その浅黒い肌を灼かれながら、
「あははっ、いいよ摩耶姉ぇ、濡れる、濡れるよっ!・・・だから、『死ぬ気』でイカせてよ・・・こっちも『その気』で行くからさぁっ!!」
 狂気に満ちた表情でそう叫ぶ。

 彼女のその言葉を裏付ける様に、
 ヌルリ
 股座からは雌の、
 ブピュッ
 肉棒からは雄の、歓喜の徴が放たれていた。

 しかし朱美の挑発にも動じず摩耶達は、
「・・・」
 『敵』に視線を置きつつもただ、神気を高めていった。



 ピシィッ
 邪水晶は鞭で床板を叩くと、
「うふふ・・・」
 笑みを浮かべながら瑠璃に歩み寄る。

 だがその表情とは相反して、
 ゴォッ
 猛烈な殺気が、彼女から溢れ出していた。

 その姿に瑠璃は、憂いと悲しみを含みながらも、
「・・・わかりました、姉様・・・」
 そう言の葉を吐くと、
 スッ
 決意に満ちた表情を浮かべ、虚空に腕を翳す。

 そして、
「チェンジッ!」
 そう叫ぶと、
 パァァアッ!
 瑠璃の体を燐光が包み込んだ。

 パァァ
 瑠璃が纏っていた巫女装束は粒子化され代わりに、
 シュゥゥ・・・キュゥッ
 群青のボディー・スーツが肢体へ貼り付き、その美しい肉体を締め付ける。
 そして、
 チャッ
 ブーツ、胸当て、ヘルメットと、『戦士』の装備が装着されていった。
 
 メイデン・フォースが使用しているバトル・スーツの基礎理論は元々、皐月の恩師である稲葉教授によって立論されたものである。
 『翡翠を倒すには全力で』
 そう考えた瑠璃は邪界との対決を前にして、龍蔵を介し稲葉教授に、バトル・スーツのプロト・タイプであるこのスーツを、自分用にカスタマイズさせていたのだった。
 しかし、プロト・タイプと言ってもその出力は、四神の戦士達が着装するスーツに劣らない。
 寧ろ、『汎用品』とも言える彼女達のスーツよりも『ピーキー』であるが故に、攻撃力は勝る程である。

 斯くして、
 シュゥゥンッ
 燐光が晴れた後、邪水晶の眼前に、群青の『戦士』が現れたのだった。

 邪水晶は、妹のその姿に嬉嬉として、
「・・・うふふ、瑠璃・・・本気で戦ってくれるのね・・・嬉しいわ」
 そう嘯くと、舌舐めずりの代わりの如く、
 ペロリ
 と、鞭を嘗めた。

 瑠璃は、
 ブンッ・・・チャッ
 実体化させた電磁刀を邪水晶に向けながら、
「・・・姉様、私が打ち倒して差し上げます・・・そして、私の優しい姉様を・・・取り戻して見せるっ!!」
 そう、宣告する。
 その瞳には、強い意志が燃えるように揺らめいていた。

 邪水晶は、一転、氷の様に冷たい感情をその瞳に宿すと、左手に填められた魔具のブレスレットを翳し、
「そう・・・わかったわ・・・チェンジ・・・」
 『妹』と同じ、キー・ワードを口にする。
「・・・っ!!」
 瑠璃が驚愕の表情を浮かべる間もなく、
 パァッ
 毒々しい光が邪水晶の身を包んだ。

 シュゥゥ
 毒蛇が嘗める様に、闇の粒子が邪水晶の肌に纏わり付くと、
 ギュゥゥ
 漆黒のボンデージが彼女の身を締め上げる。
 そして瑠璃と同様に、
 チャッ
 ブーツ、胸当て、ヘルメットが次々と実体化し、装着されていった。
 
 やがて、
 ブワァ
 一陣の闇が散ったかと思うと、もう一人の『戦士』の姿がそこにはあった。
 しかしその姿は、瑠璃の清浄さを感じさせるものとは相反して、淫らさを強調する邪悪なものである。

 邪水晶は驚きを隠せない瑠璃に歩み寄りながら、
 ブンッ・・・ピシィッ
 電磁鞭を実体化させ、床を叩く。
 ジィッ
 叩かれた床は、焦げ臭い臭いのみ残して、消失していった。

 邪水晶はその鞭の感触を確かめながら更に、瑠璃に歩み寄り間合いを詰めると、
「うふふ・・・そんなに驚くことかしら?・・・貴女だけが、この装備を手に入れられる筈もないでしょう?」
 そう、挑発的に微笑む。

 邪水晶の言葉通り彼女もまた、皐月に命じ己のバトル・スーツを作成させていたのだ。
 プロト・タイプのものと異なり、ピーキーな特性はないが、邪水晶の能力を最大限に生かす調整がなされている。
 彼女もまた、瑠璃との『全力対決』を望み、備えていたのだった。

「・・・」
「うふふ・・・」
 光と闇、双方のバトル・スーツを纏った『戦士』が、それぞれの想いを胸に対峙する。
 一秒が数時間にも感じられる重い静寂の中、
 タッ
 最初に動いたのは、瑠璃であった。

「破ぁっっ!」
 ブゥンッ
 鉄柱すら紙の如く斬り倒す電磁刀を気合い一閃、低い位置から袈裟斬りに邪水晶へ振り抜く。

 しかしそれを邪水晶は、
 ヒュッ
 軽業師の様に躱すと、
 ヒュンッ
 瑠璃の背を斬り裂くべく、電磁鞭を胴払いに振る。

 だがその必殺の一撃も、
 スゥッ
 華麗な身の熟しで躱された。

 装着者の能力を嵩上げするスーツに、能力の全てを発揮させるスーツ。
 両者の『力』はそれで『互角』となる。

 一瞬の油断ですら『死』と繫がる状況下においては、
「・・・」
「・・・」
 言の葉一つですら、致命傷となり得た。

 しかしどちらからともなく動き始めると、二人は、
 ヒュッ・・・キンッ
 剣戟を交わし、
 ズザッ
 後退する。

 光と闇が交差し、甲高い金属音のみ残る−そんな状況が数えきれぬほど繰り返された。
 そんな時−
 ピー
 瑠璃のヘルメットの中に、無粋な警告音が鳴り響く。
 そして冷酷なまでに、
 『稼働限界まで5分』
 の表示が、バイザーに表示された。

 瑠璃が装着するこのスーツは、理論実証用のプロト・タイプであるが故に、多量のエネルギーを消費する。
 それに加えて、膨大な装置を必要とするバックアップ・システムを秘密裏に構築するには、物理的にも時間的にも、余裕が無かった。
 このため、稼働させるために最小限の装置は用意することができたものの、長時間の運用に耐えうるシステムは得ることはできていない。
 だが、それも承知の上−最善を尽くすために取れる手段はリスキーであっても取るべき−瑠璃はその覚悟で全ての準備を行ってきたのだ。

 その危機的状況にも瑠璃は、己の現況をおくびにも出さず、
「・・・っ!」
 キンッ
 機械的なまでの剣戟を繰り返す。
 しかしその中にも、状況を覆す『決定打』を放つタイミングを探らねばならない。

 『稼働限界まで3分』
 残された時間は無情にも、刻一刻と磨り減らされてゆく。
 そんな最中、
 ヒュンッ・・・フワッ
 邪水晶の鞭筋が僅かにずれ、数ミリの『隙』が生まれた。

『・・・っ!』
 しめた、と瑠璃は断じ、
 ガッ
 その一点のみ狙って、
 ゴォッ
 渾身の一閃を、邪水晶の横腹へと叩き込む。

 だがそれは、
 ニヤリ
「!?」
 ガキィンッ
 邪水晶の誘い水でしかない。
 普段の冷静な瑠璃であれば、容易に見破ることもできた罠の筈だが、心に潜む焦燥感が彼女にそれを許さなかった。

 『渾身』だけに、弾かれた場合の反動は大きい。
 瑠璃はどうにか刀を振り抜きながらも、
 グラッ
 上体を揺らめかせ、邪水晶の時とは比較にならぬ程の『大きな』隙を作り出してしまう。
 
 当然に、
「ふっ・・・」
 ビュンッ
 その隙を邪水晶が見逃す筈も無い。

 ガギンッ
 装甲車の突進ですらダメージを跳ね返すスーツ越しに、
 ゴッ
 沈む様な衝撃が走る。
 
 しかしそれが痛覚に変換される前に瑠璃は、
 ビュオッ
 宙に舞った。

「ぐはぁっ!?」
 遅れて訪れた激烈な痛みとともに、
 『スーツに甚大なダメージが発生しました』
 『自動修復機能が作動したため、エネルギーのロスが生じています』
 ビーッ、ビーッ
 スーツの異常を知らせるアラームが鳴り響きそして無情にも、
 『機能維持のためのエネルギー残量が足りません・・・シャットダウンを開始します・・・10秒・・・』
 終末へのカウント・ダウンを始める。

 それでも尚瑠璃は、
「くっ!・・・」
 闘志を失うことはない。

 しかし、
 ギシッ
 駆動系のシステム異常で動きが極端に重いスーツを無理に動かそうと力を込めるも、
 『シャットダウンまであと5秒、4、3・・・』
 ギシッ、ギシッ
 時だけが無為に過ぎてゆく。
 
 邪水晶はその様子に、冷たい笑みを向けると、再び、
「・・・うふふ、瑠璃・・・もうお終いのようね・・・楽しかったわっ!!」
 ドガッ
「ぐはぁっっ!!」
 瑠璃の腹に強烈な蹴りを食らわせる。

 その瞬間、
 『・・・ゼロ、システム・シャットダウン』
 パァァアッ
 眩い光とともに瑠璃のスーツが全て、解除された。

 ドンッ・・・ミシィッ
「きゃぁぁあっっ!!」
 巫女装束に戻った瑠璃を、衝撃から守るものはない。
 ズギンッ
「・・・!!」
 床に叩き付けられた背中からは、激痛を遙かに超えた痛みが襲ってくる。
 それに声すら上げることも適わず瑠璃は辛うじて、
「げほっ、げほぉっ!」
 気道に入り込もうとする唾を吐き出すばかりとなった。

 シュゥゥン
 己のスーツを解除しながら邪水晶は、瑠璃の許へ歩み寄る。
 再び邪界の淫らな奴隷戦士の装束を纏った彼女の秘所と肉棒からは、
 ヌルゥ・・・ピチャッ
 戦闘による興奮のものとも、これから己が『実妹』に為そうとする事への期待のものともつかぬ滴が零れ、神聖な空間を汚していた。

 瑠璃の傍らで膝を折ると邪水晶は、瑠璃の背に優しく手を当て、愛しい『妹』の顔を寄せると、
「うふふ、瑠璃、本当に楽しかったわ・・・でも、残念ね・・・貴女の力では、私を倒すことはできなかった・・・ふふっ、でも心配することはないわ・・・貴女が私の側に来れば良いだけ・・・私と同じ・・・卑しい肉奴隷にしてあげる・・・」
 『慈愛』に満ちた表情でそう、語り掛ける。

  瑠璃はそれに、
「姉様止めて・・・」
 苦痛とも苦渋ともつかぬ表情でそう呟くが、
「瑠璃・・・」
 『姉』にその言葉は届かない。

 邪水晶が、
 グッ・・・ビッ
 巫女装束の胸元をブラジャーごと引き裂くと、
 ブルンッ
 雪山の如く白き相丘が、たわわに揺れる。
「綺麗だわ、瑠璃・・・」
 邪水晶はその芸術的なまでの美しさに、
「ああ・・・」
 陶酔した様な表情を浮かべると、
「んふ・・・んちゅっ」
 瑠璃の左胸にむしゃぶりついた。

「んふっ、んふっ」
 興奮の度合いを映すかの如き、熱風の様な吐息を鼻から抜きながら邪水晶は、
 レロォッ
 桜色の肉珠を、舌先で転がし、その甘美な味を堪能する。

 自慰で己の乳房を触った程度の事はあるが、他者に触れさせた事などない『処女地』への侵攻に瑠璃は、
「ひゃぁっ!?・・・ああんっ!」
 抗いの言葉を吐く間もなくただ、嬌声を上げた。

 邪水晶は、瑠璃の乳房から一旦、
「ちゅぱっ・・・うふふ、可愛い声で囀るのね・・・もっと聞かせて頂戴・・・」
 口を離すと今度は、
「うふっ・・・ちゅぷっ」
 右胸に齧り付き、
 ニチュッ・・・コリッ
 唾液に塗れた左胸の乳首を押し潰す様に愛撫する。

 既に邪水晶の『淫毒』が回り始めた瑠璃にとってそれは、
「んんっ・・・ああんっ!」
 『快楽』の『火口』として十分なものであった。
  
 その反応に邪水晶は、
 『うふふ・・・』
 ほくそ笑むと、快楽の更なる『火口』を与えるべく、
 ガリッ
 瑠璃の柔らかな乳房を噛む。

「いひゃぁっ!?」
 それまでの文字通り『舐る』が如き責めの中、強制的に引き起こされた性の『発火』に瑠璃は為す術も無く、燃え上がるだけとなった。



「・・・破ぁっ!!」
 摩耶の気合いとともに、
 シュッ
 三筋の光が、淫魔どもへ襲いかかる。

 『光』はそれぞれに、
 ゴォッ
 妖魔にとって『必殺』の神気を纏い更には、圧倒的な破壊力で『敵』を『滅殺』するに足るものだ。

 その『光』が『闇』と交錯した瞬間、
 チッ、ギィンッ
 短くも重い音色が響き、イオン化された空気が独特の臭いを、辺りに充満させる。

 臭気を纏った靄が流れる中、
「・・・」
「・・・」
 攻守いずれの側も無言のまま、立ち尽くしていた。

 先に変化があったのは、
 ブシュゥゥッ!!
 淫魔達、『守』の側である。

 彼女達の四肢を刻む傷口から鮮血が吹き出し、紅色の池を周囲に巡らせた。
 しかし、
「・・・クククッ・・・あははぁぁっ!!・・・最高っ、最高だよ、摩耶姉ぇっ!・・・こんなにイったのは初めてだよ!!」
 朱美はそう叫び、
 ビュルッ、ビュルッ
 穢らわしい雄汁で血の池を、朱色に変えてゆく。

 摩耶はその哄笑にも無表情を続けていたが、急に体を折り曲げたかと思うと、
「・・・ぐっ・・・がはぁっ!?」
 ビシャァッ!!
 吹き出す様に吐血した。
 
 それを切欠に、
 ジワァッ
 純白の衣が赤く染まってゆく。

 葵と楓も同様に、
「・・・うっ、げほぉっ!」
「げほっ、げほっ!」
 生気の源を地面にぶちまけ跪き、ただ苦痛に耐えるのみとなってしまう。

 そんな彼女達の許に朱美は歩み寄ると、
「・・・ふふふっ、摩耶姉ぇ・・・昂ぶらせた責任だ・・・コレを鎮めてくれよっ!」
 喘ぐ摩耶の口内に、
 グブブッ
 そのいきり立ったモノを突き立てる。

 それに摩耶は、
「ぐぼぇぇっ!?」
 為す術も無く喉奥まで侵攻を許してしまった。
 
 摩耶は激しい嘔吐感を得ながらも喉肉は、
 ヌルゥッ
 滑る吐血を潤滑油として、
 グヌッ、グヌヌッ
 肉の凶器を、奥へ奥へと迎え入れる。

 そして葵は、
「・・・あふぅんっ、葵姉様の口マンコ、とってもいいですわぁ・・・うふふっ、それに・・・犬歯があたって、いいアクセントですよ・・・」
 蒼乃の、
「楓お姉様・・・んふふ、喉をピクピクさせちゃって可愛い・・・もっと私を愉しませてください」
 楓は雪の肉槍を咥えさせられ、
 グイッ・・・グヌッ、ヌプッ
 頭を掴まれながら、空気が抜ける音を発するのみとなった。

 更に彼女達の肢体にはいつしか、
 ビクッ、ビクッ
 異臭を放つ触手が貼り付き、
 ギュゥゥ
 均整の取れた肉体を締め上げる。

「・・・私だけあぶれてしまったか・・・まあいい・・・くくっ、私はもっと良い穴を頂くとしよう」
 沙夜子はそう言うと、
 ビリィッ
 摩耶の袴を破り去った。

「・・・っ!!」
 摩耶は朱美に口内を蹂躙されながら、恐怖に満ちた表情を浮かべる。
 妖魔との戦いに敗れた巫女の末路など、腐るほど目にしてきた彼女にとって沙夜子の仕儀は、明確過ぎる意思表示に他ならない。

 そんな摩耶を嘲笑うかの様に沙夜子は、
 スッ・・・ムニゥュッ
 背後から摩耶の衣の中に手を差し入れ、瑞々しい果実を鷲掴みにする。
「・・・ふふっ、摩耶さん、そんなに固くならなくても良いよ・・・直ぐにコレの素晴らしさがわかるさ・・・」
 そしてそう言うと、
 ニュルンッ
 摩耶の尻の割れ目に沿って己の逸物を滑らせ、
 ヌッ・・・ヌリッ、ヌリョッ
「うぐっ!?」
 その先端から溢れ出すカウパー液を塗すが如き、抽送を始めた。

 沙夜子は摩耶の胸を弄びながら、
「・・・本当に残念だよ・・・貴女の調教は、邪水晶様がなさるとの仰せなんだ・・・せめて、こっちの穴だけでも堪能したいんだがね・・・」
 囁く様にそう言うと、
 ズヌッ・・・ヌプッ、ヌプッ
 己の指を摩耶のアヌスへ差し入れ抜き差しをしつつ、肛内をねっとりと掻き回す。

 未知の感覚に摩耶は、
「うぶっ、うぶぶっ!?」
 朱美の肉棒を咥えたまま、声にならぬ喘ぎを漏らした。

 それに朱美は、
「くくっ、摩耶姉ぇ・・・その苦しそうな震えが良い刺激だよ・・・ご褒美に、特別濃いのをあげるね♪」
 そう嘯くと、
 グプッ、グプッ
 口虐の勢いを増す。

「うごっ、うごえぇっっ!?」
 摩耶は激しい嘔吐感に苛まれながらも、どうにか首を動かし朱美から逃れようとするが、
 ギュゥウゥ
 体に巻き付く触手が更に朱美を締め上げ、
 ゴリュッ、ゴリュッ
 より深い奉仕を強いた。

 気道の空気すら全て押し込まんばかりの陵虐に摩耶は、
『死んじゃう、このままじゃ死んじゃうっっ!!』
 死への恐怖と肉体的苦痛に苛まれながら、極限を迎える。

 その摩耶にとどめを刺すべく朱美は、
「・・・くくくっ、摩耶姉ぇ、たっぷり受け取ってよっ!!」
 そう叫ぶと、
 ドブッ、ドブッ、ドブンッ
 チーズの様に粘り気の強い雄液を、摩耶の食道内へ止めどなく注ぎ込んだ。

 そして、摩耶の素股を愉しんでいた沙夜子も同時に、
「・・・ふふっ、摩耶さん、最高の感触でしたよ・・・また愉しませてください、ねっ!」
 ドプッ、ドプッ
 摩耶の腹へ雄臭を振り撒いてゆく。

 既に極限にあった摩耶は、
「ふごっ!?」
 ビクッ、ビクンッ
 体を痙攣させ、白目を剥くと、
 ジョロロロォッ
 失禁しながら果てた。

 同じくして、
「ひあ゛っっ!?」
「ぐもぉっっ!?」
 葵と楓も果てる。

 その刹那、守護巫女達の敗北を象徴するかの如く、
 ボオォッ
 『扉』を封じていた護符が青白い炎を上げ、焼け落ちた。 

 すると、
 ギィッ・・・コォォッ!
 『扉』が再び開き始め、猛烈な瘴気が溢れ出す。
 その瘴気に押される様にして、
 ギッ、ギギギィッ
 『扉』が大きく動き出した。

 そして、
 ギギギッ、ギィッ!
 断末魔の如く、『扉』が一際高い音色を奏でたかと思うと、
 ゴオォォッ
 瘴気の塊とも言うべき存在が、姿を現す。

 それに淫魔達は、
 サッ
 一列に並び頭を垂れると、
「邪淫皇様・・・」
 片膝をつき、胸に腕を当てる最敬礼で、邪淫皇を迎えた。

「クククッ、大儀であったな・・・」
 邪淫皇は鷹揚に配下を見下ろしながらそう、労いの言葉を与える。
 そして、敗北し無様にも、尻を突き上げる姿勢で気を失う守護巫女どもに視線を流した。
 彼女達の姿はまるで、邪淫皇への『供物』にも見える。

 朱美は、邪淫皇の気配を感じ取り、窺うように面を上げると、
「・・・『ご賞味』なさいますか、邪淫皇様?」
 そう尋ねた。
 今の彼女にとっては嘗ての『師』ですら、『肉奴隷』の『素体』でしかない。

 邪淫皇は朱美に、
「・・・ククッ、今はよい・・・それよりも、見物の『劇』に間に合わなくなるでな・・・此奴らの始末は貴様等に任せる」
 そう答えると、
 バッ
 マントを翻し、本殿の方角へ向かう。

 朱美が、
「はっ」
 そう応じた時、邪淫皇を視界に収めることはできなかった。



「・・・じゅうぅぅっ」
「ああんっ!」
 邪水晶に胸を吸われ、
 ビクッ、ビクッ
 瑠璃が軽い絶頂を得たその時、
 シュゥッ
 これまで遠くに、しかし確かに感じていた結界の力が、霧散する様に消えていった。

 瑠璃は、快楽の波に翻弄されながらも、
『摩耶、葵、楓・・・』
 その意味する先へ、想いを馳せる。

 しかしそれは、嘗て『神凪の巫女』であった邪水晶にとって相反する意味を為す。
「・・・ちゅっ、んふっ・・・うふふ、どうやら邪魔な巫女どもは敗北したようね・・・これで神凪を守る『剣』はお前だけになったわ・・・」
 邪水晶は瑠璃の胸から顔を上げ、
 ニィッ
 邪悪な笑みを浮かべると、左手に瑠璃の顎を乗せ、
「・・・だから、お前を穢し」
 己へ向かせそう囁くと、
「・・・神凪の『剣』そのものをへし折ってやるわ」
 ビリィッ
「きゃぁぁっ!?」
 瑠璃の袴を一気に切り裂いた。

 そして邪水晶は、純白のショーツのみとなった瑠璃の股座に顔を寄せる。
「・・・うふふ、処女のイヤラシイ臭いがするわ・・・それにしてもコレは何?・・・こんなに濡らして・・・」
 そう言って、
 クチャッ
 濡れそぼり、秘部を透けさせるショーツの中心を指で、僅かに押し込んだ。
 その微かな所作にすら、
「ひぁっ!?・・・」 
 ビリッ、と電流の様な感覚を背に走らせてしまった瑠璃は、思わず甲高い声を上げてしまう。
 乳房に塗された邪水晶の唾液は、強力な媚薬として瑠璃に作用し、加えて、邪水晶の愛撫は確実に、瑠璃の中にある『女』を呼び覚ましつつあった。

 邪水晶は、
「・・・流石は我が妹ね・・・ふふっ、肉奴隷に相応しい淫乱さだわ・・・」
 そう言うと、
「んふ・・・むちゅっ」
 ショーツごと秘所を含み、
 グチュッ、グチュッ
 果実を食むかの如く咀嚼する。

 瑠璃は、
「んっ、あっ、はぁんっ!」
 邪水晶の頭を掴み、どうにか引き離そうとするが、その手に力が入ることはない。

 邪水晶は、一頻り『妹』の味を堪能した後、
「・・・んふっ・・・ぷはっ・・・うふふ、瑠璃・・・とってもイヤラシくて美味しかったわ・・・」
 ピッ
 既に『下着』としての用をなさなくなったショーツを、指先で切り落とした。
 すると、
 ムワァッ
 湯気の立つ様な熱気を持って、『雌』の徴が匂い立つ。

 その様子に邪水晶は、
「ふふっ、瑠璃・・・」
 邪な笑顔を浮かべながら、
 ビクッ、ビクンッ
 猛り狂った怒張を握り、瑠璃に覆い被さった。

 それに瑠璃は、
「・・・いいよ、姉様・・・来て・・・」
 そう応え、泣き笑いの様な表情を浮かべると両の腕を広げ、『姉』を迎え入れる。

 『遂に瑠璃を屈服させた』
 その達成感に邪水晶の肉塔は、
 ギチィッ
 痛々しいまでに屹立した。 

 邪水晶は、興奮で逸る心を抑えるように、
「殊勝な心掛けね・・・うふふ、瑠璃、行くわよ・・・」
 一際低い声でそう言うと、
 ヌッ・・・ズププッ!
 一気に肉槍を瑠璃の最奥まで突き刺す。
 メリッ、メリッ
 限界まで硬度を増した肉の凶器は、瑠璃の腹を邪水晶の形に変形させていった。

 『破瓜』など問題とせず、肉を破ってしまいそうな痛みに瑠璃は、
「ひっ、あっ!」
 短い息を漏らすだけとなる。

 だが、肉体は限界へと追い込まれる中、理性は相反して、冷静さを保っていた。
 もう神の気配を感じ取ることができない−
『ああ、もう私、巫女じゃないんだ・・・』
 瑠璃は邪水晶に犯されながら、そう、己が身を分析する。

 しかし不思議と、恐怖や悔恨の念はない。
「ね、え、様・・・」
 瑠璃はそう呟くと、
 ギュッ
 両の腕を『姉』に回し、己へと抱き寄せる。

 確かに、自分を構成する重要なアイデンティティーを失ったことに間違いはない。
 だが、狂おしい程に焦がれ求めていたものは、今己が手中にあるのだ。
 それは例えようのない充足感を、瑠璃に与えている。 

 その一方で、
 グヌッ、グヌッ
 瑠璃を責めながら邪水晶も、
「うふふ・・・」
 至福感に包まれていた。

 瑠璃を犯し、自分と同じ存在に堕としめる−
 実妹に陵辱の限りを尽くすこの刹那は、邪淫皇の肉奴隷となり、淫魔というアイデンティティーまで与えられた彼女にとっても、待ち焦がれていた瞬間なのだ。

 互いの『目的』は違えど、その『想い』は交錯する−

「姉様、好き、大好き・・・」
 瑠璃はそう囁くと、
 ギュゥッ
 一層強く、『姉』を抱きしめた。

 それに応えるように邪水晶も、
「うふふ、私もよ、瑠璃・・・」
 そう言って、
 ギュゥッ
 『妹』を強く抱きしめると、どちらからともなく、
「「・・・んふ、ちゅっ」」
 唇を互いに重ねる。

 ドクン、ドクン
 密着した胸からは、互いの鼓動と熱が伝わってきた。

『姉様・・・』
『瑠璃・・・』
 チュプッ、チュプッ
 姉妹は、重ねられた想いを確かめ合う様に、ディープ・キスで唾液を交換する。
 その溶け合う様な感覚の中、
 フワァッ
 瑠璃の記憶がその時の感情そのままに、邪水晶の中へと流れ込んできた−

 

「お父様、私は納得できません!」
「何を言う、これは決定事項なのだ・・・それに、神凪の家を継ぐのは、お前を置いておらん!」
 神凪家の当主−姉妹の父親の居室で、セーラー服姿の瑠璃が『当主』と対峙している。

 普段は父に従順な瑠璃が、気色ばみ、
「いいえ、違います・・・確かに、神力は姉様よりも私の方が高い・・・でも、当主の資質・・・人を導く資質は、遙かに姉様が上ですっ!」
 そう迫るが、
「その『神力』が問題なのだ・・・法術の根本は神力であることを、お前も解っているだろう・・・それにいつかはお前も子を産む・・・優秀な血筋を残すことも、我ら神凪の使命なのだ」
 父は頑として受け容れない。

 その頑なな態度に瑠璃は、
「それでは、『瑠璃』は必要ないではありませんか・・・お父様は、私の『肉体』だけあれば良いと仰るのですか?」
 身を乗り出し、父に噛みつくが、
「何を馬鹿な!・・・子供じゃあるまいし、いい加減にしなさい!・・・瑠璃、私が感情で物を言っていると思うのか?・・・翡翠も私の娘なんだぞ?自分の娘が可愛くない親などあるものか・・・これは『当主』としての決断なんだ・・・解ってくれ、瑠璃」
 そう言われてしまえば、
「・・・お父様」
 反駁する余地などなかった。



 スッ
 障子の開く音とともに、薄暗い部屋の中へ一条の光が差す。
「・・・瑠璃様、お夜食をお持ちいたしました・・・」
 背後の光で影となり、表情を窺うことはできないが、その声音には瑠璃を気遣う色が含まれていた。

 しかし、文机に顔を伏せている瑠璃は、
「・・・要りません・・・下げてください」
 それだけ言うと、顔を上げることすら疎ましげに、光とは反対側へと向く。

 そんな瑠璃に光−摩耶は、
「・・・瑠璃様、何も召し上がらなくてはお体に障ります・・・せめて、このおにぎりだけでもお召し上がりください」
 そう促すが、瑠璃から言葉が返ってくることはない。

 『自分の非力さ故に、翡翠が掠われた』
 己の持つ『力』故に、不条理ながらも翡翠を押しのけ神凪当主となった自分が、為す術も無く敗北したという事実は、自己の存在を否定するにも等しい。
 昼間は『当主』としての責任感と繁忙さから紛れてしまう寂寥感が、宵闇が訪れるとともに闇が飲み込むかの如く、悲嘆の底へ彼女を引き摺り込むのだった。

 摩耶は尚も、
「・・・瑠璃様・・・」
 瑠璃を気遣う言葉を掛けようとするが瑠璃は、  
「・・・お願い、独りにして・・・」
 そう、拒絶の言葉を口にする。

「・・・」
 だが摩耶は、主の命に背き居室の中へ静かに踏み入ると、
 ファサッ
 背後から瑠璃を包むように、そっと彼女を抱きしめた。
 その抱きしめた瑠璃の背は、驚くほど冷たい。

 翡翠が掠われた夜から、瑠璃が涙を見せることはなかった。
 それが虚勢だということは、翡翠に代わり姉妹の如く寄り添ってきた摩耶には、痛いほど解る。

 摩耶は、
 ギュッ
 瑠璃をより強く抱きしめると、
「瑠璃様・・・余り、御自分をお責めにならないでください・・・それに、いいのですよ・・・悲しい時は、その感情に身を委ねても」
 優しい声音でそう、囁いた。

 それに瑠璃は、
 ビクンッ
 と一瞬、身を固くしたと思うと、
「うっ・・・ううっ・・・・」
 一転して嗚咽を漏らす。
 
 それは、やがて、
「・・・姉様、姉様っ・・・!」
 奔流の様な叫びとなって、涙とともに溢れ出した。

「瑠璃様・・・」
 その瑠璃を抱き留める摩耶も、
 ツゥ
 無意識のうちに涙を零す。

 二人の巫女は、闇が彼女達を解放するのを待つかの如く、夜が白むまで、泣き明かしたのだった。



 フッ
 瑠璃の記憶の世界から現実世界へ引き戻された邪水晶は、
 ズチュッ、ズチュッ
「んっ、はぁんっ!」
 己に組み敷かれ、生々しい嬌声を上げる『妹』の姿を見つめる。 

「瑠璃・・・」
 双子の姉妹として、濃密な時を供に過ごしてきた『翡翠』が、瑠璃の気持ちを理解できぬはずなどない。
 それに、彼女へ憎しみを向けながら心の奥底では、『救済』を求めていたのだ。
 邪淫皇への隷属は、己の醜さから生じた『嫉妬』と、それから引き起こされた『孤独』を、埋めるものでしかない−

「ううっ・・・」
 『邪水晶』の心は、『翡翠』との間で激しく揺れ動く。
 その葛藤を晴らすように、
 ズクッ、ズクッ
 『邪水晶』は瑠璃を激しく犯し始めた。

 それに瑠璃は、
「ねえ、様・・・」
 微笑みを浮かべると、腕を伸ばし、
 ギュッ
 『翡翠』の両手を握る。

「・・・っ!」
 組み合った指と指の間からは、
 ホゥッ
 体の芯から全てを解すかの如き温もりが伝わってきた。

「瑠、璃・・・」
 『翡翠』は、その微熱に浮かされるかの如く、伝えるべき言葉を紡ごうと、口の端を動かそうとする。

 しかし−
 コオォォッ!
 その刹那、強大な闇の気配が彼女の眼前に現れた。
「邪淫皇様・・・」
 『邪水晶』の主の姿に再び、『翡翠』の心は揺らぎ始める。

 邪淫皇は、姉妹の姿を見下ろしながら、
「・・・クククッ、邪水晶よ、褒めてつかわす・・・これで憎き神凪も終いぞ・・・貴様の『妹』も我の性奴隷として献上せよ・・・性奴と化した当主を見れば、残党どもも戦う気を失うであろう」
 そう、『邪水晶』に命じた。

 『邪水晶』は、熱病に浮かされるかの如く、
「・・・は、い・・・」
 そう、言の葉を零すと、
 ズグッ、ズグッ
「ああっ!」
 瑠璃の女芯を抉るように腰を動かし始める。

「クククッ・・・」
 邪淫皇は邪水晶が瑠璃を責め始めるのを見て、思わず笑みを零さずにはいられなかった。
 彼からすれば長年の仇敵であった神凪家を、その家人に滅亡させたというこの事実は、愉快な事この上ない。
 それに、双子の妹も徹底的に調教・洗脳すれば、姉の邪水晶と同じく、己の強力な手駒となろう。

 己が喰らうであろう、彼女の肉体と魂の上質さを想像した邪淫皇は、
 ペロリ
 思わず舌舐めずりした。
  
「・・・んっ、はぁっ」
 『邪水晶』は、『主』の命を果たすべく『淫魔』として、
 ズクッ、ズクッ
 瑠璃の膣道をねっとりと抉り、子宮口をノックし続ける。

 そして、
 シュルッ・・・ググッ
 尻尾の先端をカリ状に膨らませると、
 ツプッ・・・ズププゥッ!
 未だ穢れを知らぬ『新たな処女地』へ侵入を果たした。

「い、ひぁあっっ!?」
 突如訪れた未知の快楽は、
 グッ
 それまで守っていた緊張すら崩す。

 ゴリュリッ・・・グボンッ!
 子宮口を突破し、女性の中心へ侵攻した肉の槍は、
 ゴリュッ、ゴリュゥッ!
 卵子ごと刮ぎ取るかの如く、『女』の最も繊細な柔肉を責め立てた。

 その苛烈な責めに、
「ぎっ、ひぎぃっ!?」
 自慰さえ経験の乏しい瑠璃が、耐えられる筈もない。

 全身の筋肉を弛緩させてしまったかの様に、
 ビュッ・・・ジョッ、ジョロロロォッ
 緩んだ尿道から、黄金水が溢れ出し、『邪水晶』の竿と内股を濡らす。

 その絶妙な温かさに『邪水晶』も、
「はぁぁっ・・・瑠璃ぃ・・・」
 陶酔した表情を浮かべ、
 ブクッ
 子種の奔流を生殖器の根に集中させた。
 
 それに瑠璃は、
 ギゥュッ
 両の脚を『翡翠』の体へ巻き付けると微笑みを浮かべ、
「・・・姉様・・・姉様の想い、全部受けとめるから・・・私の中に・・・出して・・・」
 そう囁くと、心そのものを抱き留める様に、
 ギュッ
 愛しい『姉』を抱きしめる。

 ゴリュリュゥッ
 子宮口を肉槍で完全に押し広げ、『妹』と『最奥』で繫がった『邪水晶』は、
「瑠璃・・・んくぅっ!」
 それだけ呟くと、
 ドブッ、ドブッ、ドブンッ
 『妹』の中心へ、濃密な雄の奔流を注ぎ込んだ。

 文字通り、『想い』の結晶を『全て受けとめた』瑠璃の腹は、
 ミチッ、ミチチィッ
 肉の軋む音を立てながら、風船の如く膨らんでゆく。

 瑠璃は肉の苦しみに苛まれながらも、
「・・・ひ、あ、姉様、姉様ぁっっ!!」
 そう叫ぶと、
 ギュゥゥッ・・・ギリィィッ
 縋る様に、『翡翠』の背へ爪をたてた。
 
 『邪水晶』は、
 ツゥッ
 背筋に血を滴らせつつも、
「瑠璃っ、瑠璃ぃっっ!」
 ドプッ、ドプッ
 『全て』を放つ至福感を、留めることはできない。

 その瞬間、
 フワァァァッ
 瑠璃の中へ、『翡翠』の記憶と感情が激流となって注ぎ込まれる。
 嫉妬、孤独、絶望−
 己に向けられた、負の記憶と感情を瑠璃は、
「姉様・・・心を開いてくれたのね・・・嬉しい−」
 満面の笑みを浮かべ、
 ツゥ
 涙を流しながら受け容れた。

 その健気な『妹』の姿に『翡翠』は、
「瑠璃−」
 ただ愛おしさに、
 チュッ
 唇を重ねる。

 その刹那、
 ポォッ
 瑠璃の下腹部が紋様状に燐光を放ったかと思うと、
 キィィィンッ!
 眩い閃光が『姉妹』を包みやがて、光の大波となって、
 コォォォォッ!!
 神凪の深山全体を覆ってゆく。

 その中で『邪水晶』は、
「・・・っ!!」
 ドクッ、ドクンッ
 肉体から魂を引き剥がされる様な感覚に苛まれていた。
 しかしそれは、
 ジワァッ
 不思議な温かさに包まれ決して、不快なものではない。
 
 瑠璃が巫女として最後に己自身へ施した術−『浄化の術』−は、術者の全神力を解放し、魔に侵された魂をあるべき形へ戻す術である。
 瑠璃は、『邪水晶』が自分を犯すことを予見して、己と最も深く交わり心を解放した瞬間にこの術が発動するよう、己の肉体と神凪の地全域に、術式を施していたのだ。

 やがて、
 フゥッ
 瑠璃の胸の中心に術式の紋様が浮かんだかと思うと、
 スッ・・・スゥゥッ
 その中からある物が姿を現し始める。

 それに触れるように手を添えると瑠璃は、
「姉様、受け取って・・・」
 そう言って、
 スッ
 己の手に『翡翠』の手を重ねさせた。

 コォォッ
 神気が絶え間なく溢れ出すそれは、『淫魔』である筈の『翡翠』を傷つけることはない。
 その事実は、
「・・・っ!!」
 『邪水晶』に驚きをもたらすがそれ以上に、
「・・・これは・・・」
 瑠璃の手中に現れた物の姿に、驚愕の表情を浮かべた。

 瑠璃の胸の中心から姿を現したのは、一振りの短剣−柄に勾玉が据えられたそれは、『翡翠』が愛用していた短剣−である。
 翡翠が邪淫皇に敗北し掠われた夜から瑠璃は、『姉』への想いとともにこの短剣を鍛え上げ、神器の一つ、『神刀』の格を持たせていた。
 更に、もう一つの神器である『勾玉』を付加することにより、『破邪』の力を格段に向上させたこの『神刀』は謂わば、『姉』を取り戻し全ての元凶を『討ち祓う』という、瑠璃の『想い』と『意思』の結晶とも言える。

 『翡翠』は瑠璃の掌越しに、『熱』とも言うべき温もりを感じながらただ、
「・・・」
 『妹』の澄んだ瞳を見つめ続けるのだった。

 その姉妹の許へ、
「・・・クククッ、神器まで引き出すとは見上げたものよ・・・ククッ、これで、貴様を我が奴隷妃にしても異を唱える者は居るまい・・・」
 邪淫皇はそう言いながら歩み寄る。

 更に、
「さあ、貴様の妹を我に差し出せ・・・ククッ、案ずるな・・・貴様と同じく、奴隷として最高の寵愛を呉れてやろう」
 そう嘯くと、供物を要求するが如く、右手を『邪水晶』へ突き出した。

 『邪水晶』はその姿を、
「・・・邪淫皇様・・・」
 悲痛な表情で見つめる。
 そして、
 ズッ
「・・・あっ!」
 瑠璃の胸から『神刀』を引き抜き、
 ヌプッ
 瑠璃から離れると、
 チャッ
 神刀を構え、邪淫皇へ相対した。

 その瞬間、
 キィィンッ
 神刀が再び、眩い光を取り戻し、
 コオォォッ
 猛烈な神気を放ち始める。

 『邪水晶』はその清浄なる光に包まれながら、
「・・・」
 静かに目を閉じて、虚空を仰ぐ様に両手を広げた。

 その刹那、
 バサッ・・・ファサァァッ!
 漆黒の蝙蝠様の翼が、白鳥の翼の如く、純白のものへ変じる。
 そして彼女の中から邪悪な気配が、完全に消えた。

「・・・邪淫皇様・・・」
 目を見開いた『翡翠』は呻くようにそう言の葉を漏らすと、神刀を構えたまま、『かつての主』との距離を詰める。

「ククッ、何の積もりだ邪水晶よ・・・我と戦うというのか?・・・身の程を弁えぬ愚か者よ・・・」
 邪淫皇はそう嘲りつつ頬を歪めるが、彼女に対する警戒を緩めることはない。

 それは、
 コォォッ
 四神の巫女の神力を喰らい、瑠璃の神力をも得た『邪水晶』の力は、従前のものとは比較にならぬ程、強大なものとなっているのを直感的に感じたからだ。

 それに応えるように『翡翠』は、
「・・・邪淫皇様・・・私は貴方を愛しております・・・でも・・・最愛の妹は・・・瑠璃は、貴方に差し上げることはできません・・・だから私は・・・貴方と闘うっ!!」
 そう叫ぶと、
 フッ・・・ゴォォオッ
 丹田に力を込め、気を高めてゆく。

「姉様・・・」
 その傍らにやってきた瑠璃は、腹を妊婦の如く膨らませ、
 ピチャッ、ピチャッ
 股の間から陵虐の徴を滴らせながらも、微笑み、 
 スッ
 やっと取り戻した姉の手に、己の掌を重ねた。

 浄化の術で全ての神力を放った筈の掌からは、
 ポワァァッ
 不思議な温かさと力が翡翠には伝わってくる。
「瑠璃・・・」
 翡翠は瑠璃に微笑み返すと、鋭い視線を『敵』に向けた。

 邪淫皇はその視線を受けとめながら、
「・・・クククッ、面白い・・・姉妹共々打ち破り、最底辺の肉奴隷にしてやろうぞ・・・」
 そう嘯くと、
 ニヤリ
 不敵な笑みを零す。

 そして、
 キィンッ
 帯剣した巨大な太刀を抜くと、姉妹を正眼に据えた。

 ゴゴォオォオッッ!!
 光と闇の猛烈な気が渦巻き、それが触れあう先からは互いの存在を打ち消すかの様に、
 バチッ、バチッ
 青白い火花が散る。
 それはまるでこの闘いを祝福する花火の如く−

 「・・・ククッ・・・」
 「・・・っ!!」
 二つの勢力は、
 ダッ!!
 どちらからともなく駆け出すと、
 「・・・うおぉぉぉっっ!!」
 「・・・破ぁぁぁっっっ!!」
 渾身の力を一撃を、正面の敵に放った。

 バキバキバキィッッ!!
 二つの力はその強さを競い合う様に、互いの『光』を噛み砕き飲み込もうと、獰猛な牙を剥く。
 だが単純な、極めて単純な力の鬩ぎ合いの趨勢はその力量差によって、簡単に決した。

 バキッンッ
 邪悪な『光』は清浄なる『光』によって、一直線に押し戻されてゆく。
 『闇』の化身に迫る清浄な『光』は、その破邪の力で、
 ジュッ・・・ジュゥゥッ!
 邪淫皇の肉を灼いていった。
 
 しかし、邪淫皇は太刀を構えたまま微動だにせず、
「・・・クククッ、ハハハッッ!!・・・一度は破れ、我が奴隷となった貴様が、我を討ち倒すとは・・・何と愉快な事よ!」
 そう破顔一笑する。

 翡翠は邪淫皇を、
「・・・邪淫皇様・・・」
 悲しみに満ちた表情で見つめつつも、その瞳と刃を逸らすことはない。
 それは、彼に対する愛と敬意の証でもある。

 ジリッ、ジリッ
 既に邪淫皇を包むまでに侵食した『光』は、『邪淫皇』という存在そのものを喰らってゆく。
 やがて、
 スゥッ
 輪郭すら朧気になった邪淫皇は、
「・・・ククク、また会おうぞ、我が愛した女よ・・・」
 笑みを浮かべたままそれだけ言い残すと、
 ガランッ
 太刀だけを残し、姿を消した。

 翡翠は、
「・・・邪淫皇、様・・・」
 そう呟くと、
 ガクッ
 膝を折り、床に崩れ落ちる。

 グニィッ
 腹に当たる肉棒と同じく、邪淫皇に『作られた』愛情とは言え、彼女にとってこの感情も『真実』であることは間違いないのだ。
 それを文字通り『絶って』しまった彼女に、虚無感に近い感情が生まれるのも無理は無い。

 そんな翡翠を瑠璃は、
「姉様・・・」
 フッ
 背後から優しく包み込む。

 翡翠は、斯くに大切な存在を失おうとも、自分を選んでくれた。
 その事実は嬉しくもあるが、悲嘆に暮れる姉の痛みは、彼女にとっても痛みなのである。
 瑠璃は、
「姉様・・・そんなに悲しまないで・・・私はいつまでも、姉様のお側に居ます・・・」
 そう言って翡翠の肩越しに頬を寄せた。

 そして、翡翠の手を掴むと、
「それに・・・」
 スッ
 己の膨らんだ腹に、それを当てる。

 その途端、
「・・・!!・・・瑠璃、貴女っ・・・」
 翡翠は驚愕の表情を浮かべながらそう叫ぶと、瑠璃へ振り向き、その肩を掴んだ。
 
 その驚愕を、
「ふふっ・・・」
 瑠璃は微笑みで迎える。
 更に、
 ギュッ
 翡翠の手を強く握ると、
「・・・そう、私だけではなくて、この『子』も居るわ・・・だから姉様・・・『家族』で互いを支え合いましょう・・・」
 そう言って、柔らかな笑みを『子』の『父』に向けた。

 高位の巫女は、自らが産む子に、その能力−神力を引き継がせる。
 神凪最高位の巫女である瑠璃も当然、その例外ではない。
 巫女でなくなった彼女が、子宮に強大な力を感じる要因は、ただ一つしか有り得ないのだ。

 しかも、
 ドクン
 神力以外の力−魔力も同時に、掌から感じることができる。
 この翡翠と瑠璃の『子』は、陰と陽の力双方を兼ね備えた、危うい存在であることは間違いない。

 翡翠は、瑠璃の腹から離した右手を、
 ギュッ
 と胸元で握ると、
「・・・解ったわ、瑠璃・・・」
 コツン
 決意の証の如く瑠璃の胸へ当て、左手で彼女を抱き締める。

 抱き締められた瑠璃は、
「姉様・・・」
 それだけ呟くと、多幸感に満ちた表情のまま、目を閉じた。



〜エピローグ〜

 数年後-
 
「破ぁっ!」
 気合の声とともに、
 ヒュンッ、ヒュンッ
 閃光の様な剣筋が走る度、
 ザシュゥッ!
「グェェェッ!」
 醜き妖魔は、その数を減じてゆく。

 そして幾度かそれが繰り返された後、
 ドザッ
 最後の妖魔が胴と下肢を切断され、崩れ落ちた。
 
 その妖魔を斬り伏せた人物-緋色の装束に身を包む女性が、
 ブンッ
 刀を一閃させ、血振りをすると、
 キラッ
 飛び散った妖魔の血は月光に照らされ、彼女の放つ輝きに、より鮮やかな彩りを加える。

 それから時を置かずして、
『・・・ザッ・・・皆さん、妖魔は全て掃討した様です・・・お疲れ様でした』
 ヘッド・セット内にそう、涼やかな声が流れると、彼女は漸く口許を緩め、
 ブンッ
 手にした刀を、分子化させた。
 
「はぁっ、はぁっ・・・」
 緋色の女−朱美は、上がる息を整えようと、ビルの壁に背を預ける。
 コンクリートのひんやりとした感覚が、戦闘で火照った体には心地良い。

 当然の如く、この事態の元凶である『元』四神の巫女−彼女達を処断すべきだ、という声は本家のみならず類縁の者達からも上がっていた。
 しかし、邪淫皇という重しを失い、散発的ではあるが苛烈となった妖魔の猛攻を前にして、壊滅的な打撃を受けた神凪本家やメイデン・フォースでは、効果的な抵抗すらままならない、という事態に至り、数少ない『優秀な』戦力である彼女達を処断する余裕などなくなってしまった。
 皮肉な事に、対邪界の戦力を壊滅させた事により彼女達は、自らの居場所を確保したのである。
 その後も批判を封じ込めるのに十分な戦果をあげた彼女達には今や、表立って非難する者など居ない。

 朱美は、
「んっ、ふぅっ・・・」
 そう、艶っぽい声を上げると、熱を持った『ソレ』から逃れるかの如く身を捩る。

 ミチッ
 強靭なボディー・スーツがそう音を立てる程に、臍の辺りまで膨らんだ『ソレ』は、
 ビュクッ、ビュクッ
 先端から粘液を吐き出し、
 ジワァッ
 ボディー・スーツを濡らし続けた。
 
 『浄化の法』により、妖魔化と邪気は祓われたが、人間であった頃から行われた肉体改造までは、『浄化』することができなかった。
 それに加えて、『邪水晶』によって為された『調教』も少なからず、彼女達の心身に影響を与えている。
 当然、淫魔であった頃の様に、淫欲に溺れる事などはないが、体と心の奥深くにまで染み込んでしまった『性癖』は、彼女達の日常に暗い影を落としていた。

 『戦』に性悦を感じるように『調教』された朱美は、妖魔との戦闘を行うと、自慰以上の性行為を行わないと肉体の昂ぶりを押さえられない『副作用』が生じてしまっている。
 そしてその淫靡な『性癖』を持つ己を、『回復』した理性が苛むのだ。
 それはまるで、彼女が犯した罪を贖わせるかのように-

 

邪淫皇が去った僅か後−

「ひぃあっ!!・・・止めなさい、どこを舐めて・・・くぅんっ!?」
 アナルを朱美に舐られた摩耶は、甲高い声を上げ抵抗の意を示すが、
 ギュウゥゥ
 彼女を緊縛する触手が、抵抗そのものは許さない。

 更に、
「くくく・・・」
 ギラリ
「ひぃっ!?」
 沙夜子が幼い巫女に突きつけた刃の燦めきが、摩耶に躊躇いを生じさせていた。

 その躊躇いは、
「んくぅぅっ!?」
「ひゃいぁぁっ!!」
「くひぃぃぃっ!!」
 淫魔の肛虐という結果となって、3人の巫女を襲う。
 尻を突き出す姿勢で緊縛された彼女達−摩耶、葵、楓の3人は、朱美、蒼乃、雪によってアナルを嬲られていた。

 その長い舌で葵の腸壁をじっとりと舐っていた蒼乃は、葵の尻から顔を離すと、
「んはぁっ・・・葵姉様のケツ汁、とっても臭くて美味しいですわ・・・うふふ、一体、何を食べたらこんな臭いがするのかしら?」
 恍惚の表情でそう、葵を言葉で詰る。
 
 それに葵は、
「・・・い、言うなぁっ!!」
 羞恥に顔を紅潮させそう叫ぶが、
「んふっ・・・じゅっ、じゅぷぅ」
 再びアナルを啜り始めた蒼乃に、
「い、ひぁぁっ!?」
 言葉を遮られてしまった。

 楓の尻に顔を埋めていた雪は、
「・・・ふふっ、本当に神凪の巫女は淫乱ですね・・・楓お姉様、そんなにケツマンコ穿られるのが好きですか?・・・ほら、ここからどんどんイヤラシイ汁が溢れていますよ・・・」
 そう言うと、
「ちゅっ・・・じゅるっ」
 わざと音が立つ様に、楓の秘めたる泉から湧き出る淫流を啜り取る。

 彼女の言葉の半分は嘘だ。
 雪の唾液に含まれる媚薬成分は、劇薬と言っても差し支えない程の効用を持つ。
 事実、『劇薬』により肉体改造が始まった楓の乳腺からは、
 トロォ
 粘液質な母乳が糸を引き、零れ落ちていた。

 しかし、
「んっ・・・はぁんっ!」
 雪に嬲られ感じているという『真実』は、楓に羞恥心以上のダメージを与えている。 
 
「ククク・・・」
 巫女に刃を突き立てる沙夜子も、
 ジュポッ、ジュポッ
 別に捉えた巫女に己の賜物をしゃぶらせ、
「ほら、もっと裏筋を舐めるんだ・・・ふふっ、そうだ、上手いじゃないか・・・ああ、済まない・・・お前もここが寂しそうだな・・・」
 ググッ・・・グボボッ
 拘束した巫女の肛内に、先端を男根化させた尻尾を潜り込ませた。

 強烈な異物感に巫女は、
「ひぐぅっ!?・・・くひぃぃっ!」
 ただ悲鳴を上げるが、
 ビュッ、ビュルッ
 沙夜子の『男根』から吐き出される『精液』がそれを、
「・・・いっ・・・ひゃぁんっ!!」
 嬌声に変える。

「ぴちゃっ、ぴちゃっ・・・んふふ・・・」
 アナルから密壺に標的を変えた朱美は、摩耶の尻越しに辺りを見回す。

 守護巫女の敗北により弱体化した結界からは、
 ズルゥッ
 漏れ出す瘴気と同じく、中魔以上の妖魔が次々と姿を現していた。

 朱美の視線の先では、
「・・・2番隊は、本殿方面の督戦を行え・・・」
 淫魔隊の指揮を執る涼子が、配下の淫魔に指示を下している。
 今は結界の残滓とも言うべき破邪の効果によって、下魔どもは『扉』を通ることはできないが、邪水晶と邪淫皇が参戦し神凪の敗北が決定的になった今、それも時間の問題であろう。

 朱美は『淫魔』たる邪悪な笑みを浮かべると、
「・・・くくっ、摩耶姉ぇ・・・処女のまま、娼婦でも適わない程淫乱な体にしてあげる・・・」
 そう囁き、
 ヌリョッ、ヌリョッ
 摩耶の秘豆に唾液を塗しながら押し潰す様に、
「ああっ!!」
 ざらつく舌で、執拗な愛撫を始めた。

 邪水晶によって、巫女達の純血−守護巫女どもについては『後穴の純血』も−を奪うことは禁じられているが、『調教』『肉体改造』は禁じられていない。
 『巫女』を保ったまま、肉奴隷に等しき存在に堕とす−その事に朱美は大きな悦びを感じていた。
 その時−
 
 キィィンッ!!
「!!」
 本殿の方角から、猛烈な神気が津波の如く押し寄せる。
 それは瞬く間に『光』という『実体』となって、邪悪な淫魔達を覆い尽くした。
『・・・しまった!!』
 後悔の念が全身に行き渡る間もなく朱美は、反射的に手で顔を覆う。

 ガグンッ
 肉体から魂そのものが引き剥がされるような感覚に朱美は、
「ぐくぅっ!?」
 蹌踉めきながら後ずさるが不思議な事に、
「くぅっ!?」
 己を滅する感覚はない。

「・・・どういう、ことだ・・・」
 混乱する朱美の中に、新たな感覚が走る。
 ブツンッ
 太い糸を断ち切られたかの様なそれは、
 ドクンッ
 彼女に劇的な変化をもたらした。

 シュワァァァッ
「う・・・うわぁぁぁっ!!」
 淫魔の象徴である、翼、尻尾が霧散するかの如く、消失してゆく。
 それに抗うかの様に、
 ブビュッ、ビュルルッ!
 肉棒からは多量の精が放たれるが、
 シュゥゥ
 蒼乃と雪からはその存在すら失われていった。

 そして肉体的な変化に加えて、
 ズキンッ
「うっ・・・」
 彼女達の精神も、
「私・・・私・・・」
 急速に『浄化』されてゆく。
 瑠璃が放った『浄化の法』によって肉体が浄化されるだけではなく、『主』であった邪水晶が『正気』に戻る事により四神の巫女も、『正気』を取り戻しつつあった。

 しかし、それに朱美は、
「・・・う、ううっっ!!」
 『浄化』そのものを振り払うかの如く腕を振り、彷徨い歩きやがて、
 ドサッ
 崩れる様に跪く。
 彼女は『正気』を取り戻しつつあるが故に、己が犯した『罪』の重さで潰されようとしていた。

 その刹那、
 パシィッ
 乾いた音と頬に走る痛みが、悲嘆の底から朱美の意識を引き戻した。

「・・・摩耶、姉ぇ・・・」
 朱美は眼前に立つ人物の名を、呻くように呼ぶ。
 それに摩耶は、朱美の肩を力強く掴むと、
「しっかりなさい、朱美!・・・瑠璃様が与えてくださったこの機を、無にする積もり?・・・巫女でなくなったとは言え、貴女には果たすべき責務がある筈です」
 そう言って、摩耶の顔を引き寄せ、揺れる瞳の奥を覗き込んだ。

 そして、
「あ・・・」
 ギュッ
 朱美の頭を包み込む様に、己の胸で抱き留める。

 その胸からは朱美の『罪』である肉体改造の証−母乳−の甘い香りが漂うが、母性の証でもあるそれは、朱美に安堵感を与えた。
 そして、それ以上に、『罪』を許し朱美を包む込む摩耶の確かな温もりが、彼女の心を解きほぐしてゆく。

 やがて朱美は、
「・・・うっ・・・うわぁぁっっ!!」
 まるで幼子の様に、摩耶の胸で鳴きじゃくるのだった。
   


「んっ、はぁっ・・・」
 悶え続ける朱美の許に、
 カツッ
「朱美・・・」
 群青の衣装に身を包んだ女が、姿を現す。

 朱美は、その女−蒼乃に、
「蒼乃・・・」
 悩ましげな視線を送った。
 
 蒼乃は、
 ブンッ
 武装を解除しながら、
 カツッ、カツッ
 朱美に歩み寄る。

 そして、重ねる様に身を預けると、
 サワッ
 朱美の肉棒をスーツ越しに丸く撫で、
「朱美、苦しそうね・・・いいわ、私の体を使って・・・」
 そう囁くと、
 ヌッ
 ボディー・スーツの股布をずらす。

 斯く言う蒼乃の秘所も、
 グチュ
 しとどに濡れ、言葉どおりの『献身』には程遠い。
 彼女もまた、『調教』の影響から逃れることのできぬ、『犠牲者』の一人であった。 

 朱美は、一瞬複雑な表情を浮かべたが、
「蒼乃・・・ごめん・・・んんっ・・・」
 蒼乃を抱き締め、突き上げる様に、
 ズヌッ・・・ズヌヌッ
 蒼乃の中へ、己の半身を沈めてゆく。

 ヌルゥッ・・・ミチッ、ミチッ
「んっ・・・はぁっ!!」
 最高級の肉奴隷として改造された蒼乃の膣肉は潤みつつも、朱美のモノをきつく締め上げた。

 その二人の痴態を流し見ながら雪は、
「・・・うふふ、沙夜子さんも辛そうですね・・・」
 そう言うと、
 スッ・・・ヌリュッ
 沙夜子のいきり立つ雄蕊を、蜜を押し広げるかの如く、ボディー・スーツ越しに撫で回す。

「うっ、くぅっ・・・!!」
 ブビュッ、ビュルルッ
 それだけで限界を迎えていた沙夜子の肉棒は敢えなく、暴発した。

「ふふっ、凄い臭い・・・すぅっ・・・」
 雪はうっとりとした表情で雄臭を一杯に吸い込むと、
 クチュッ・・・ヌリュゥッ
 沙夜子のボディー・スーツに手を差し入れ、朱美に劣らず猛るモノを握り出す。

 ボディー・スーツという堅固な檻に閉じ込められていたそれは、
 ブルンッ
 その健在さを誇示する様に、
 ビチャッ
 雄汁を周囲にまき散らした。

 猛き白濁液を顔一面に受けた雪はそれだけで、
「あはぁっ・・・」
 ビクンッ、ビクンッ
 軽い絶頂を迎えてしまう。

 そして雪は、
 ヌチョッ
 己の股を淫液で濡らしながら恍惚とした表情で、
「んはぁ・・・んちゅっ」
 沙夜子の分身を喉奥まで飲み込んだ。

 雪は最上の甘露を放つそれを、
「んっ、ずっ・・・じゅるぅっ」
 口をすぼめ、一滴も逃さぬかの如く啜り上げる。

 沙夜子は、
「ゆ、き・・・」
 呻く様にそう呟くと反射的に、
 グッ
 雪の後頭部を掴み、更なる奉仕を雪に求めた。

 雪はそれに躊躇わず応え、
「んぐっ・・・んぐぷっ」
 喉奥で愛しき肉塊を『咀嚼』する。

 膣にも劣らぬ最上の『性器』の愛撫に沙夜子は堪らず、
「うっ、くぅっ!」
 グィッ
 雪の頭を抱き締め、
 ブピュッ・・・ドプッ、ドプッ
 彼女の喉奥へと、生乳の様な生殖液を放った。

 雪は、
「ふぐっ!?・・・んぐっ・・・むふっ・・・」 
 一時噎せながらも、
「・・・んふっ・・・ふっ・・・」
 器用に鼻で息を抜きながら、全てを飲み干してゆく。

 その傍らで朱美は、
 ズグッ、ズグッ
 蒼乃の子宮を突き、
「蒼乃・・・もう、ダメ・・・いっぱい・・・出させて・・・」
 そう詫びながらもその表情は、種付けを望む『雄』そのものであった。

「んっ、ああっ・・・いいよ・・・朱美・・・中に、一杯出して・・・」
 蒼乃はそう言うと、
 クグッ
 子宮口をくつろげ、『雌』の表情で、『受精』を待ち受ける。
 
 それに朱美は、
「んん゜っ・・・蒼乃ぉっ!!」
 その意気に応えるかの様に友の名を叫ぶと、
 グブッ
 子宮の中へ肉楔を打ち込み、
 ドブッ、ドブッ、ドブンッ
 雄の奔流をありったけ注ぎ込む。

 かつて『淫魔だった』4人の『戦士』は、苛烈な『戦い』の対価を得るが如く暫し、『淫魔』と『見紛う』程淫蕩な、性の宴に酔いしれるのだった。

 しかし、『犠牲者』は彼女達だけではない−



 ドンッ、ドンッ、ドンッ
 数度の爆発音と共に、
 ガシャァァンッ
 派手な音を立て、防爆シャッターが砕け散る。

「クソッ、やっと開いたか・・・全隊、突入、突入っ!!」 
 防衛省と警察の『制圧部隊』がメイデン・フォース本部に突入したのは、神凪本家の防衛が成ったのとほぼ同時であった。

 作戦指揮官の藤森康平(ふじもりこうへい)は、苛立たしげに、
「・・・各隊、内部の状況を報告しろっ!」
 インカムへそう叫ぶ。

 初動が遅れた要因は、本部そのものが裏切り、神凪本家が急襲されるという想定外の事態が生じたことに他ならない。
 しかし、龍蔵から警告を受けていたのにも関わらずこの様な事態を招いたとあらば、譴責は免れないだろう。
 失地を挽回するには、ここで得点を上げる必要があるのだ。
 
 だが、彼の元に寄せられる報告は、『成果』と呼ぶには程遠いものばかりだった。



「・・・こちら、警3・・・現在、東階段より3階東端へ侵入中・・・ん?・・・誰か居るぞ」
 警察第3分隊を率いる江口照美(えぐちてるみ)は、廊下の先に人の気配を感じ、ハンド・サインで部下に静止を命じる。
 電気が落ち、真っ暗となった廊下をナイト・スコープのサーモ・センサーで覗くと、人型の赤い紋様が、壁にもたれかかる様を見て取れた。

「・・・」
 照美は再びハンド・サインを部下に送ると、ゆっくり前進を始める。
 その間も、
 ジャキッ
 銃の照準は対象から外すことはない。
 妖魔の中には人に寄生し、腹を食い破って襲ってくるものもあるのだ。

 対象との距離が縮まるにつれ、
「ん・・・はぁ・・・」
 少し鼻にかかった女の声が聞こえてくる。
 そして、
 グチュッ、グチュッ
 湿った音と、生臭い臭気が照美の五感に触れた。

 その刹那、
 ユラリ
 と立ち上がった『対象』の姿が、ナイト・スコープ越しに浮かぶ。

「・・・あはぁ、おマンコが来たぁ・・・ねぇ、チンポしようよぉ」
 ナイト・スコープ越しに見える女の体には、肉塊の様な妖魔が体中に貼り付き、股間には肉棒様の触手が鎌首を擡げていた。
 妖魔に寄生された女は、だらしのない媚びた笑みを浮かべながら、照美達へ近付いてくる。

 その姿に照美は一瞬たじろいたが、傍らに控えていた隊員の肩を叩きながら、
「・・・浄化剤発射!」
 そう命じた。

 肩を叩かれた隊員は、バズーカの様な銃の引き金を引く。
 その瞬間、銃口から、
 ブシャァァッ!!
 透明な液体が勢い良く吹き出した。

 若水をベースとしたそれは、
 ジュワァァ
「ピギィィッ!!」
 下等な妖魔どもを灼き祓うに十分な効果を持つ。
 
 しかし、本来人体に影響を及ぼさない『浄化剤』も、
「ひぎぁぁぁっっ!?」
 妖魔が既に神経と癒着し、感覚を共有していた女には、激痛をもたらす『劇薬』となった。

「ひぁぁっっ!!」
 半狂乱となった女は、
 ビチャッ、ビチャッ
 浄化剤で溶けた妖魔を撒き散らしながら、照美達に突進する。

 照美は、腰のホルダーに収めた拳銃を素早く引き抜くと、
 パスッ、パスッ
 2発、女に向けて発射した。

 2発ともそれを腹部に受けた女は、
「ぐっ!・・・」
 短い呻き声を上げると、
 ドサッ
 気を失い、崩れ落ちる。

 照美は、
「・・・ふう」
 と一息つくと、
「・・・彼女に浄化剤を・・・徹底的に洗浄しろ」
 部下にそう命じ、額に浮いた汗を手の甲で拭った。

 その後も、ビルの各所に同様の女達が潜んでおりその都度、照美達は『浄化』作業を繰り返してゆく。
 彼女達以外の隊も程度の差こそあれ、ほぼ同じ状況であった。



「・・・くそっ!」
 康平はそう毒づくと、
 ガシャンッ
 インカムを地面に投げつける。

 周囲に居た部下は、一瞬驚いた表情を浮かべたが程なく、冷ややかな表情を浮かべ、それぞれの任務へと戻っていった。

 結局、ビルの隅々まで検索したが、皐月や礼菜などの技術部や医療部の主立った面々、それに幹部級職員と警備部の隊員は見つけることができなかった。
 それに、技術部や医療部の施設は大きく破壊され、データの回収もできず、『浄化』し『回収』できたのは、本部職員の半数にも満たない。
 結果だけから言えば得るものは無い、『惨敗』とも言える。

 だが康平はその結果に猶も抗おうと、
「まだだっ、もっと探せ!」
 唾を飛ばし、依然として冷ややかな視線を送る部下に叫んだ。



「それでは、留守は頼みましたよ、摩耶」
 瑠璃はそう言うと、ハンドバッグを肩に掛ける。

「はい、心得ております・・・瑠璃様、いってらっしゃいませ」
 摩耶は微笑を浮かべるとそう応え、深々と頭を下げた。
 その背後には葵と楓も、同様の姿で控えている。

 『戦後』の神凪家において彼女達は四神の巫女に代わり、祭儀の中核を担う『守護巫女』として大役を果たしていた。
 摩耶はそれに加え、瑠璃達をサポートする『執事』としての役割をも担っている。

 バンッ
 翡翠はボックス・カーの後扉を閉じると、
「・・・ほら、珊瑚、行くわよ」
 そう、『愛娘』に声を掛けた。

 その声に、葉月とじゃれついていた少女は、
「はぁいっ!・・・じゃあね、葉月・・・いってきまぁすっ!」
 バイバイの形で手を振ると、満面の笑みで車に乗り込む。

 そして3人の『親娘』を乗せた車は、巫女達の見送りの中静かに、神凪の地を後にした。
 


「瑠璃かあさま、お花がいっぱぁい!」
「ほら珊瑚、あんまり走っちゃダメよ」
「はぁい!」
 『珊瑚』と呼ばれた少女はそう元気に答えると、向日葵が咲き乱れる花畑へ駆けてゆく。
 麦わら帽子を落としそうになりながら、白いワンピースの影はどんどん小さくなっていった。

「ふふふ、珊瑚ったらあんなにはしゃいじゃって・・・」
 バスケットを持った翡翠は、珊瑚とお揃いの麦わら帽子を押さえながら、眩しそうな眼差しでその姿を見つめていた。

 最後の戦いの後、瑠璃は女児を出産した。
 それが、この珊瑚だ。
 黒と赤の瞳を持つ彼女は、瑠璃と翡翠の力を受け継ぎ、強大な神力と魔力をその小さな体の中に秘める存在−それに加え、彼女の肉体は妖魔の特性を引き継いだのか、ドッグ・イヤーに近い速度で成長している。
 当初、斯様な忌み子は処分すべし、そういった意見も根強くあった。
 だが、本家と守護四家の有力な血筋−当主家と四神の巫女が魔に犯され、重要な祭事を行う人材が払拭される、という絶望的な状況が、それを許さなかった。

 結果として、珊瑚が神凪本家の次期当主とされ、瑠璃が暫定当主兼後見役となったが、本家を再興し、一族の指揮にも辣腕を振るう瑠璃を今や、批判できる者などいない。
 更には、祭事を執り行う珊瑚の実力も、批判を封じる大きな力となっている。
 『母達』に似て、優れた資質を持つ珊瑚は砂が水を吸うように、祭事や退魔の知識を猛烈な速度で習得していった。
 幼い身でありながら、上級退魔師をも凌駕するその力は最早、周辺の騒音を封じるには十二分なものとなっている。

「姉様、あそこの木陰で一休みしましょう」
 翡翠の傍らにいる瑠璃が、そう、丘の上の巨木を指さした。
「・・・そうね。あの子につきあっていたら、こっちの身がもたないわ」
 その翡翠の言葉に、
「ホント、そうね」
 と、瑠璃も微笑み返す。

 今は穏やかな時間を『家族』とともに過ごしてはいるが、『戦後』における翡翠の処遇も、大いに微妙なものだった。
 本家を壊滅させた元凶ではあるものの、その卓越した退魔の実力は、残存した妖魔の一群を退けつつ壊滅的打撃を受けた退魔の一族を立て直すためには、必要不可欠な存在であった。
 更に、本来は発言力を持つであろう四神の家の巫女達が揃って魔に墜ちたことも、翡翠に対する批判を弱めたのである。

 皮肉なことに、四神の巫女を魔に堕としたことが、己が身を守る、という結果をもたらしたのだ。
 紛糾の末、翡翠は本家預かりとなるとともに退魔の業を義務づけられ今では、瑠璃や珊瑚と同様に実力を他に見せつけることで、彼女に対する批判の声を封殺している。

「姉様、お茶が入りました」
「有り難う、瑠璃」
 翡翠は瑠璃から携帯ポットのカップを受け取ると、静かに口をつけた。
 木陰に広げたレジャーシートに腰を落ち着けた二人は、向日葵畑の中で嬉しそうにはしゃぎまわる『我が娘』をただ、微笑みながら見つめる。
 珊瑚を育て上げ、立派な神凪の当主にする−
 それが今の翡翠と瑠璃の唯一とも言える、生き甲斐となっていた。

 サァッ
 草原を、爽やかな一陣の風が吹き抜ける。
「・・・いい風」
 翡翠は、そう言いながら、澄み渡る空に手を翳す。
 邪界に堕ちていた時とは別種の爽快感が、心地良い。

「ただいまぁ・・・」
 遊び疲れた珊瑚が、うっすらと汗を滲ませつつ、翡翠達の元へ帰ってきた。
「うんしょ・・・」
 レジャー・シートの隅に麦わら帽子を置いた珊瑚は、翡翠と瑠璃の間をこじ開けるように座る。
 母達の温もりを感じることが出来る、珊瑚お気に入りの場所−
 定位置に陣取った珊瑚は、嬉しそうな表情を見せた後、一転し、
「・・・」
 不安げな表情を浮かべ、俯いてしまった。

 その様子に翡翠は、
「・・・どうしたの、珊瑚?」
 そう言って微笑を浮かべながら、珊瑚の頭に手を置き、軽く撫でてやる。
 普段であればこれだけで安堵した表情を浮かべるのだが、
「翡翠かあさま・・・」
 珊瑚は窺う様な視線を翡翠に寄越すだけで、押し黙ってしまった。
 それからも、彼女がどれだけ不安な気持ちにあるのか量るのは難くない。
 
 しかし翡翠は、
「・・・なぁに?」
 依然と微笑みを浮かべたままそうとだけ答え、珊瑚の言葉を待つ。
 子供とはいえ、自分で判断し、自分の言葉で意思を伝える−それがこの『親娘』のルールだ。

 その『母』の期待に応えるかの如く珊瑚は、
 ギュッ
 紅葉の様な掌を固く握り締めると、
「・・・お声がね、聞こえたの」
 そう、言の葉を吐いた。

 予想だにしない答えに翡翠の声音は、
「・・・声?どんな声なの?」
 俄に低いものとなる。

 そして、
「・・・うーんとね、知らないおじさんの声・・・何を言ってるのかわかんないけど、珊瑚のこと、呼んでるみたいなの」
 珊瑚から次いで出た言葉に、
「・・・!!」
 翡翠と瑠璃は驚愕の表情でお互いを見つめ合った。
 そして、二人は真剣な表情となり、
 コクリ
 頷きあうと、瑠璃は珊瑚を自分に向き直させる。

「いい、珊瑚?・・・そのことは誰にも言っちゃダメよ」
「・・・どーしてぇ?」
 珊瑚は母の言に、柳の如く細い首を傾け、そう尋ねる。
 だが、母を見つめるその視線の中には確かに、真意を問う色が含まれていた。

 円らな2つの瞳で、心の底を見透かされそうになる感覚に気圧されそうになりながらも瑠璃が、
「・・・どうしても。お母さん達との約束よ・・・いいわね?」
 そう言うと、
「・・・はーい」
 母の真剣な表情から、その意図を汲み取ったのか珊瑚は、不承不承にもそう返事をする。

「珊瑚・・・」
 本当に聡い子だ。
 翡翠は珊瑚の頭を優しく撫でながら、傍らにあったバスケットを珊瑚の前に置く。
「いい子ね。じゃあ、お昼にしましょう・・・今日は珊瑚の好きなタマゴサンドを一杯作ってきたわよ」
「わぁい!」
 珊瑚は嬉しそうに、バスケットを開くと、翡翠が作ったサンドウィッチを嬉しそうに頬張る。
 その姿は、年相応の可愛い女の子にしか見えない。
 だが、この子に過酷な運命が待っている事は間違いないだろう。

 この子は何があっても、守ってみせる。
 翡翠と瑠璃は、その決意を確かめ合うように、互いの手を握り締めた。

 True End

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